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戦闘

でかい鹿に隠密で接近した。最初は罠で何とかしようとか考えたのだが、今は持ち合わせの材料が無い。


魔法のバックパックの事をを考えると、素材収集して物理クラフト消費というスタイルが基本なのだろう。


今は直接戦闘するしかない。問題は戦い方だな...。


隠密で近接した俺は、掌打を使う事にした。実は今も現役で古武術マニアをやっている。研究も戦うのも好きなのだ。


だから中国と日本の古武術を融合させた、「崩術」と言う格闘術の道場を開いていた。一応、開祖という事になる。


気功術と古流柔術を統合した総合格闘技で、相手の営気(内臓を動かす生命エネルギー)を自在に「通す」事で、内部よりダメージを与える。


それに柔術の体捌きや、投げとめ(関節技)を加えたものだ。


基本は後のカウンターになり、相手の攻撃を誘い体捌きで逸し、隙を見て掌打で気を体内に通す。または投げや関節技を極めるのだ。


幸い鹿の身長は俺より高い。内臓の位置は、物理クラフトの構造解析で調べ終わっている。


丁度鹿のアバラの辺、真下に潜り込んで真上へ掌打を通せば倒せるかも。


ちなみにドラゴンブレスは任意で機能停止出来る。生物などに使ったら、一瞬で吹き飛んでしまうだろう。


鹿の真下に潜り込み、真上に向かってジャンプしながら掌打を通した。狙いは肋骨の右寄りだ。


「ドシッ!!!」


重い打音と手応えが伝わって来た。俺の体内の気が、督脈と任脈伝いに良い感じに動いてる。これは上手く通った!


鹿は一瞬「グッ!」と唸ったきり、ゆっくり横倒しに倒れた。


不意打ちで肝臓へ掌打を通されたら、大概の生物はたまったものではないだろう。脚をガクガク痙攣させて、鹿はのびてしまった。


すかさず胸元(心臓)に刺し止めを入れた。サバイバルも趣味だったし、実は狩猟免許も持っている。


内臓の配置等は前の世界の鹿と構造があまり変わらないようなので、血抜きが終わった後に通常の解体方法で捌いた。


「おおー、流石にサイズが大きいから、毛皮もでかいなあ。」


皮が厚くて苦労したが、獲物を仕留めた高揚感で俺は楽しくなっていた。深層位筋と気を動かしたので、発汗して寒さも忘れている。


心なしか体が火照る感覚が強いのは、多分若返ったからだろうか?実年齢は30過ぎのおっさんだったのだが。何て言うか、肌のツヤが前と違うし。


「ううむ、体がたぎるな。こう、活力が久々に湧いてくる感じだな。」


解体が終わり、ひと休憩で近くの岩の上に座りながら、俺は空を見上げた。


今は薄桃の月が地平線手前まで沈んでいる。ダンジョンから出て2時間と言うところだろうか。


ふと近くの太い幹の樹木に視線が止まった。ムカゴの葉が生い茂っている。あれって確か蔓状だったよな?


視界に緑の表示があった。やはり素材に使える様だ。


俺は立ち上がると、木の幹からムカゴの蔓を引き剥がそうとした。しかし案外丈夫だ。結構全力で引っ張って、やっと千切れる位だ。


ついでにムカゴも採集した。両手一杯くらいの量が採れた。こいつは炒って塩をふると、美味いんだ。


異世界の鹿肉や植物が食べられるかは不明だが...と思っていたら、食用可能という表示が出たので、両方バックパックに収納した。


「マジックブレインと物理クラフトかあ、本当に使えるなあ。」


鹿の皮と蔓を揃えたからか、物理クラフトに毛皮の寝袋が表示された。それと蔓の余りで、丈夫なロープも作れるらしい。


早速物理クラフトを実行した。すると完成度の高い寝袋が出来上がった。


全然ケモノ臭くないし、手を中に入れるとメチャクチャ温かい!次にロープを制作できた。それを入手したら、新しいレシピが増えた様だ。


「ほうほう、毛皮のテント、強弓、クロスボウ、吊り下げ式寝袋、ワイヤートラップ、etc...。」


ロープでこんなに幅が広がるんだなあ。俺は商品カタログを楽しむように、レシピのリストを色々調べた。


「うーん、案外この吊り下げ式寝袋とか言うので、充分休息が取れるんじゃないかなあ。後は朝食かな...ああ、焚き火をしないとな。それと調理器具も欲しいな。」


取り敢えず吊り下げ式というのをクラフトしてみたら、吊り下げというよりハンモック式だった。


ロープは長さが50m程あるので、充分足りそうだ。


そして近くを探して、2本の高さ10mくらいの木が3m間隔で近接して生えている場所を見つけた。


さっきの鹿みたいに、危険生物のサイズが大きいのを想定して、出来るだけ高い位置に寝袋をセッティングするべきだろう。


俺は不要になった指輪を外し、木をよじ登り太い枝の上から下を見た。恐らく6m程あるだろうか。流石にこれだけ高ければ、目立たないだろう。


寒いので葉は落ちているものの、鬱蒼と木の枝が入り組んでいるので、遠方からは視認し辛いはずだ。


幹にロープをしっかり括り付け、近くの木の枝に飛び移り、もう一方のロープも括り付けた。寝袋の内側は鹿の起毛で温度保護される仕組みだ。


ハンモック状の寝袋の上に寝そべり、バックパックは足下へ。左右を毛皮にくるまる様に閉じ、足元の方から内側に付いている紐を結んで閉じた。


「わあ、暖かくてホッとするな。おや...?」


表示で隠密可能という文字が出た。どうやら寝袋ごと隠蔽できるようなので、早速試してみると全体が消えて宙に浮いているのが見えた。


どういう原理か不明だが、この魔法スキルは接触している対象物も透明にする様だ。


「体も寝袋も消えるんだな。本当に凄いな!」


やがて体温で暖まって来て、すっかりリラックスしてしまった俺は眠ってしまったらしい。


目が覚めて寝袋の紐を解くと、すでに太陽が高い位置に昇っているのが見えた。


と、何か会話するような声が聞こえる。丘の方から近付いて来るようだ。今は隠密状態なので、発見はされないと思うが...。


やがて、見覚えのある連中がやって来た。ダンジョンにいたコボルドだろう、数体が接近して来る。


俺はバックパックを背負い、寝袋の上で警戒した。


連中は鹿を解体していた場所で何かを調べているようだ。ああそうか、臭いを嗅ぎつけて来たんだな。流石ワンコ、鼻が利くのな。


周囲を見回したりしていたが、すぐに解体した臓物や骨を担いで行ってしまった。どうやら食料調達の様だ。


「ヤバイな。いくら俺でも複数に囲まれたら殺られる。」


最初に覚えた完全隠密の意味を今更ありがたく思った。これからは人の生活圏に辿り着くまで、使用し続ける事にしよう。


寝袋を片付けて、バックパックに収納した。喉が渇き、腹が減っているので朝食にしたいのだが...。


さっきの連中に絡まれるのが面倒なので遠くへ移動することにした。とは言え、どちらへ行くべきか見当がつかない。


途方に暮れていると、視界の左上表示に方位磁針が表示され、青色の矢印が南西向きへマーキングされている事に気付いた。


「...多分これ、指示だよな?例の女性かな。」


召喚主だか何だか知らないが、文句の一つでも言ってやりたい気分ではあった。


しかし、そうは言っても良いアイディアは無さそうなので、矢印の方向へ向かう事にした。


乾燥している上に寒いので、中々きつい。森の中を方位磁針のみを頼りに歩き続ける。


緩やかな斜面を約2時間ほど降って行くと、やがて動物が複数居る場所に出た。


やはりこの世界の動物のサイズはでかい。全体的に前世界の1.5倍だ。


熊やピューマみたいなのも目撃したが、サイズが大きいと迫力があって凶暴そうだ。


そして、何故こんなに多くの動物が居るのかと言う理由が、水場だとすぐに気付いた。


さっきから遠巻きに見える大樹へ向かって歩くと、その根元に泉が湧いていた。かなり広い水場で、見渡す限り色々な動物達が水を飲んでいる。


視界の表示に飲用可能と書いてある。その水を、動物達に気付かれない程度の離れた位置で、少量飲んでみた。


新鮮で冷たい湧水の柔らかい口当りが心地良かった。単純に喉が渇いていたので、美味しく感じただけかもしれないが。


こうなると水筒が欲しくなる。物理クラフトを確認してみると、鹿の皮の余りとロープでウォーターバッグが作れる。


早速隠密状態で作業してみたが、やはり動物達には気付かれなかった。


出来上がったバッグは、約4リットルの容量だ。それを静かに泉に浸し、満杯にしてからバックパックへ収納した。


相変わらず重量感に変化がないのが凄い。そして冷水を飲んだからか、急に空腹感が倍増した。


だがここも落ち着いて休憩出来そうにない。美しい場所で休憩できないのは残念だが、立ち去ることにした。


「...しかし、この自然の豊かさは素晴らしいな。熊とか虎とかいるし。人間の立ち入ってない感がハンパない。」


空腹ながらも周囲の景色を堪能しつつ、俺は歩き続けた。そしてふと気づいた。


「...あれ?何か違和感を感じる。何だこれ?」


何と言うか、この直感が俺の一番の武器だと自負している。以前からそう言う修行を武術の一環で鍛錬してきたのもあるのだろうが。


周囲を注意深く見渡す...あれ?何かに見られている?視線を感じていたのか。だが正体が見えない。


気になる方向に向かって歩くが、何と言うか距離が縮まらない感じだ。


「...ま、去るもの追わず、だな。」


今の所、対処のしようが無いので放置する事にした。気にはなるが敵対的な気配は皆無だし、害は無いだろう。


俺は再び南西へ歩いた。太陽は頭上高く位置し、恐らく昼時になったあたりで、とうとう人の手の加わった道を発見した。


「うん、足跡もあるし、やっと人間の居住エリアかな?」


俺はホッとして、改めて後ろを振り返った。よく見ると木々が伐採されている様で、明らかに人間の痕跡だと思えた。


この世界で初めて出会う人間なので、どんな感じなのか少々不安ではあるが。


そして更に少し歩いた所で、道沿いの左脇に小さい広場があった。伐採された丸太が、屋根付きの木材置き場に積み上げられている。


近くに焚き火をした跡があり、風除けの石垣が竈みたいに、上手い具合に積まれていた。


俺は隠密を解いて、周囲を見渡した。多分ここなら安全だろう。


「ああ、腹が減った。ここで飯にしよう。」


火を起こす準備をした。その辺から木の枝等を集めて円錐状に並べた。


周囲を探すと石垣の上に火打ち石が置いてあったので、短剣の刃とは逆側の金属部を使って種火を起こした。それでやっと焚き火が出来た。


バッグから出した鹿肉をナイフで切り分けて木の枝に刺し、火で炙った。美味そうな匂いが辺りに漂い、やがて鹿肉の串焼きが完成した。


調味料が無かったが、メチャクチャ空腹だったので美味かった。


「ふう、最高の調味料は空腹だな。それに何か出汁みたいな味がついていて、意外とウマい。」


だがやはり塩が欲しい。岩塩とかがあれば良かったのだが、道中では発見できなかった。まあこれから人里に行けば、売っているかもしれない。


物理クラフトには、原料が未入手で塩の表示があった。やはり原料ありきだ。


食後に眠くなり、俺は火を消して隠密状態になり、木材置き場の屋根の上で寝転んだ。


冬の陽光が弱々しく若干寒かったが、そのまま俺はまどろんだ。


寝ていたのは短時間だと思うが、ふと目が覚めた。視界におかっぱ黒髪の小さい少女の顔が覗き込んでいる...あれ?やけに遠くに見えるんだが。


「あの...聞こえてますよね?起きてくださいよう。」


頭を揺すられて、俺は更に混乱した。あれれ?遠近がおかしい?いやいや、遠近じゃなくて顔が小さすぎるだけだな...。


飛び起きると、屋根の上で身構えた...が、殺ろうと思えばそう出来たわけか。俺は構えを解くと、改めて小さいのを観察した。


身長は30cmくらいだろうか。可愛らしい下膨れの童顔に、尖った耳が印象的だ。背中に羽根が生えている。


体型も比較的幼児体型っぽくて、羽根を一生懸命に動かしながら俺の顔の高さに浮遊している。


「な、何だ君は。妖精...なのか?」


そう尋ねると、ふよふよと飛びながら接近して来た。あれ?今は隠密状態なのだが、こいつには見えるらしい。俺は隠密を解除した。


「ううん、私は人間です。訳あってこんな姿だけど。」


「...説得力が無いんですがそれは。」


少女?は焦った様に、両腕を広げて一生懸命に説明を始めた。


「信じて!!私は呪いでこんな姿にされているの!私が見えたり言葉が通じる人が誰も居なかったのよ!話だけでも聞いてください!」


空中でピョコピョコ動きながら、必死に説得しようとする姿がシュールだ。そして俺の直感は、嘘はついてないと言っている。


「...ふうん、それで話って?ああ、こんな所で立ち話も何だから。」


俺と少女?は、取り敢えず屋根を降りた。昼過ぎの陽光は、釣瓶落としのごとく山間に沈みかかっていた。


「あのさあ、さっきから俺の事を監視してなかった?」


「うん、してた。実は森の泉の大樹からずうっと。」


「ああ、やっぱそうだったのな。それで、話ってなんだい?」


「私も一緒に着いて行っても良いですか?もう一人は嫌なんです!」


少女?は、泣きべそだ。黒い瞳から涙がこぼれ落ちた。嘘はついてないと、俺は直感的に感じた。


「え?仲間とか居ないの?さっきの場所は賑やかだったじゃない?」


「動物が知的会話なんて出来るわけ無いでしょう?こうやって話が通じたのは、こうなってから初めてなのよ。500年よ、500!」


「ええ...何で人里まで飛んで行かなかったのさ?」


「行ったわよ!でも誰も私の事が見えてないし、声も聞こえないみたいなの。動物達なら見えている様だから、人間よりマシだったわ。」


今度はプンスカ怒っている。感情の起伏が激しいのか?まあ500年ぶりの会話なら、色々複雑な想いがあるんだろうが。


「ふうん、そうすると何か?話が通じるのが今の所は俺だけだから、くっついて来ると?何か一方的だな。」


「...じ、じゃあ、言う事を何でも聞くから。ね?お願い。もう一人は寂しくて御免なの!ああっ、何よその目は!」


俺のジト目を指さして、少女?は叫んだ。メッチャ五月蠅いんだが、本当に誰も聞こえてないのかこれ?


「いや君さあ...等価交換とかにしないと、関係を続けるの無理だろそれ。それに困らなくなったら、何処かに逃げるって事だよね?」


「そ、それはアナタ次第よ...。」


口を尖らせて、少女?は視線を泳がせた。あっこいつ、図星だったな!?


「うーん、そうだな...俺は同行する事に関しては別に構わないんだけどさ、無駄に人間関係を増やす趣味は無いんだよな。」


「それじゃあどうすれば良いのよ?」


「そうだな...じゃあこうしよう。俺達は今から旅の仲間って事で。お互い自由で、別れたくなったら後を追わない、困ったら協力し合う、って事でどうだい?」


少女?はキョトンとして、ちょっと考えてからコクリと頷いた。すると、視界の表示に少女のステイタスが表示された。


「ああ、そう言えば名前を教えてよ。色々困るだろう?俺は...マヒトっていうんだ。」


「あたしはアム。ね、ねえ、本当に一緒に行っていいの?あたし気持ち悪くない?」


何か懇願するような目で、アムは俺を見つめた。まあ必死なのは伝わっているしなあ。


「いや、気持ち悪くはないな。むしろシュールって言うか、可愛いって言うか。」


アムの顔が上気して真っ赤になった。


「かっ可愛いなんて...もう!からかわないで!!」


何かモジモジしてるんだがそれは。案外可愛いのは性格だった件。


「じゃ、そう言う事でこれからヨロシク!ほれ、握手。」


握手しようとして、俺は人差し指を差し出した。アムもほっぺを赤くしながら、それを両手で握った。


「...うん、よろしくね、マヒト。」


材木置き場の前で、俺達は取りあえず仲間になった。まあ、この世界の知識とか、地理とかを知っている奴がいる方が助かるしな。


アムの真の目的が何なのかは不明だけど、俺の直感は悪人ではないと言っている。


それに万が一騙されたとしても、それは俺の見る目が無かったって事で。そんな風に思うことにした。


そこから近くの村までの道をアムに教えて貰いながら、お互いの身の上話なんかをしつつ移動した。こいつ案外気の毒な人生だったらしい。


「...そうなのよ、実家の庭で薬草を天日干ししてたら、背中から大きな鳥に掴まれたまま連れて行かれてさあ。」


「へえ、そんな奴が居るんだな。」


「...ちょっとアンタ、いくら何でも知らなさ過ぎよ?ロック鳥の事なんて、この大陸じゃ常識じゃない。」


「俺、この大陸の人じゃない。」


「ああ、そうなのね...そう言えばアンタ、森の奥の方から来たわよね?という事は帝国方面からかな?」


「うーん、判らないんだよ。何て言うか、気付いたら小高い丘のダンジョン内で寝ていたんだ。何でも誰かに召喚?されたとかで、元は多分遠い国なんだよな。」


「へえ...何て言う国?」


「ニッポンって言うのさ。島国なんだけどね。」


「聞いたことないわね。ふうん、それじゃあ本当に遠くから来たんだねえ。」


「ま、俺も良く分かってないんだよ...ああそれで、君の話はその後どうなったの?」


「あ、そうそう。それで、私も鳥の餌で人生終わるんだあって思ってたら、何か綺麗な城のバルコニーに連れて来られて、魔女みたいな風貌の女に呪いをかけられたって訳。」


「おいおい、横暴だなあ。って言うか、そういう事って茶飯事なの?」


「うーん、ロックは珍しくもないわ。話には聞いていたけど、まさか私がね。ああ、呪いは普通ありえないと思うわ。」


「よく話が見えないんだけど、そもそも何でその女が呪いをかけたって判るの?それに君をこんな風にした理由とかは?」


「ああ、それね。呪いは、私も使うから。アンタは違う国だから知らないかもだけど、魔女って言ってもざっくり3通りあるのよ。呪術師、魔術師、法術師ね。」


「ああ、呪い、魔術、神聖の違いかな?」


「なんだ、知っているじゃない。そうそう、それで同業者はお互い判るのよ。あれは多分呪術師系ね。」


「ふうん。そう言えばさ、拐われたんだろう?帰りたくないのかな?」


「500年以上も経っているのに、両親や知り合いなんて死んでいるに決まっているじゃない...まあ、でも故郷にはいつか行ってみたいけど。」


「うん、そうだろうね。でもまずは呪いを解かないとかな。」


「うーん、これ解呪するのは手間だわよ?今まで私が何もしてないと思う?」


「あ、それもそうか。ああでも、そう言うって事は目星くらいはついているんでしょ?」


「まあね。でも今は無理かな。何を核にして呪詛したかが不明なのよね。」


「核って...ああ、もしかして髪の毛みたいな肉体の一部とか?」


「へえ、知っているじゃない。まあそれだけでは無いのだけど。でも、ロックから開放されて、男達に両腕を抱えられて、バルコニーに女が現れて、いきなり術を...あんな事出来る訳無いのにね。」


「アム、君が知らない知識かもよ。もしくは魔術や法術かもしれない。」


アムはキョトンとして、吹き出した。


「あはは、まさかあ。まあアンタは専門じゃないだろうし、意見として聞いておくわね。」


そうこう言っている内に、村の入り口が見えて来た。周囲を木の塀で囲まれ、門番が2人立っている。


長い槍を持っていて、案の定入り口で足止めされてしまった。


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