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おひとり様はカロリーオフ  作者: 石枝隆美
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第一章

おひとり様はカロリーオフ   石枝隆美


 一


 二キロオーバー、また太ってしまった。安西舞子は体重計の前でまた落胆した。ダイエットを頑張ってるつもりだが、仕事のストレスが重なると、どうしてもお菓子をやめられない。20代までは食べすぎても、基礎代謝が高いから、次の日食事をセーブすればすぐに痩せれた。だが、30代になるとそうはいかない。ちょっとでもお腹いっぱい食べようものなら、痩せるのは一苦労だ。私には密かに好きな人がいる。でもこんなに太ってる自分のことなんか好きになってくれるわけがない。自分の体型もコントロールできない人間が恋をするなんて野暮じゃないだろうか。


 派遣社員をしている私は大手機械メーカーの事務をしている。私の部署の社員は派遣を馬鹿にしている。派遣は定時で帰り、飲み会にも誘われない。私と派遣仲間の河野菜々子は二人で飲みに行く。いつもお決まりのバーで愚痴の言い合いだ。

「舞子、うちら派遣に、正社員のやつら面倒な仕事押し付けすぎじゃない⁉︎給料安いんだから、それなりの仕事にして欲しいよね。派遣は派遣同士でよろしくやってろって扱いなんだからさ〜。」

「うん、そうだね。うちらに最近頼りすぎかも。もっと給料上げてくれたら、頑張ってもいいけど…。」

「でも舞子、正社員の畑山さんの事好きなんでしょ?」

「えっなんでわかったの?」

「バレバレだよ〜、舞子ハートの目で畑山さんのこといっつも見てるもん。書類渡す時なんて、手震えちゃってるしさ。向こうも気づいてると思うよ〜。」

「本当ー?恥ずかしい…」

「でも舞子、チャンスよチャンス。畑山さん今フリーなんだって。」

「なんで知ってるの?」

「私の情報網舐めてもらっちゃ困るよ。畑山さんと同期の工藤千佳子がこの前、派遣の私に情報くれたのよ。」

「どうやって聞き出したの?」

「今度良い男紹介してあげるから、同じ部署の彼女いない人教えてくれない?って。」

「…やるね。」


 二


 私は昔から男性に対して奥手だ。学生時代から女子とは上手く話せるのに、男子と話すと口が回らなくなって、変な汗をかいてしまう。男友達はもちろんいないし、彼氏がいたこともない。良いなと思う人がいても、自分からは絶対アプローチできない。そんな私が初めて、痩せて綺麗になって告白したいと思ったのが、畑山さんだった。

 就職して間もない頃、私は職場でいじめに遭っていた。回覧で回す書類を私だけ回されなかったり、コピー機に忘れてしまった紙を取りに行ったらゴミ箱に捨てられていたりした。そんな職場の空気に皆んな気づいていたが、見ぬふりをしていた。でも畑山さんは違った。私をいじめている職員達に注意したり、上司に報告していじめを鎮静化してくれた。私はそんな畑山さんに憧れて、畑山さんに気に入られたいと思って仕事を頑張ってきた。


 三


「ただいま〜。」

「おかえり、舞子。」

私はお兄ちゃんと一緒に暮らしていて、お兄ちゃんは一流企業のエリートサラリーマンだ。お兄ちゃんは私と違ってすらっとした長身に筋肉質ないい体をしている。顔もイケてる方で、長いまつ毛がかかった大きい瞳に、高い鼻、大きな口と日本人離れしている。自慢のお兄ちゃんだが、私が隣を歩くと、その落差に周りからどう思われるのか気になるので、外では一緒に歩かないようにしている。

「お兄ちゃん、今日ご飯何?」

「今日は舞子の好きなマカロニサラダにハンバーグだよ。」

「やった〜、お兄ちゃんすぐお嫁に行けるわ。」

「ほんと、俺みたいなの嫁にもらったら、旦那は幸せだな。」

「でもお兄ちゃんの手料理まだ食べていたいから、お嫁に行くのはもうちょっと先にしてね。」

「そうだな、今は舞子の専属シェフだからな。」

夕食は先に帰った方が作ることになっていている。だが、たまに私の方が早く帰れそうで、仕事で疲れている時は、惣菜を一品買ってきて、あとはお兄ちゃんに他のおかずを作ってもらう。お兄ちゃんは料理が趣味なのだ。

「今日ね、仕事でちょっとミスしちゃって、上司に怒られちゃったさ。」

「そうか、仕事のミスは誰にでもあるから気にすんな、俺だってもう今の仕事について10年は経つのに、今だに小さなミスはよくやるよ。」

「お兄ちゃん、仕事楽しい?」

「うーん、働き始めた頃は怒られてばっかだったから、楽しくなかったけど、今はやりがいのある仕事をさせてもらってるし、毎日充実してるよ。」

「そうなんだ、私はまだやりがい見つけれてないな。正社員になったら、やりがいあるのかな。」

「今のところは派遣だもんな。でも派遣でも、一つ一つの仕事を心を込めて、やってたら、きっと周りから認められると思うよ。認められたら、嬉しくなって、やりがい出てくると思うけどな。」

「そっかぁ、私も頑張んなきゃな。」

 私はご飯を食べ終わると、お風呂に最近ハマってるひのきの入浴剤を入れ、湯船に浸かった。入浴剤はひのきの香りがして、疲れた心を癒してくれた。


 四


 通勤途中に、ダイエットのために地下鉄のエレベーターを乗らずに階段を使った。お腹のお肉がぶよぶよで、足もむくんだように太ってる。私は太った体を小さく丸めて、満員電車に乗る。車内は暑く、人の熱気で体は汗ばむ。車の免許が取れればいいのだが、派遣の仕事ではなかなかお金が貯まらない。ジムに行くお金もないので、最近は地下鉄を二駅早く降り、歩いて帰る。畑山さんに恋愛対象としてみてほしい、その一心だ。

 畑山さんは私より3歳年上で、もう身を固めてもいい年だ。私は結婚して、子供は二人は欲しい。急いでダイエットしなければ、畑山さんは別の人と付き合ってしまうかもしれない。結婚が全てではないが、やはり周りの友達が結婚するのを見て、羨ましい気持ちになるのは否めない。結婚する人生としない人生では、する人生のほうが人生が豊かになるような気がする。でも、して後悔するかもしれない。一人の方が楽かもしれない。そんな迷いの中、私はとにもかくにもまずはダイエットだと思った。


 五


私が休憩室で職員が飲むコーヒーを作っていると、菜々子が話しかけてきた。

「舞子、明日予定ある?畑山さんと中田さん誘って、仕事帰りに飲みに行かない?」

「えっ畑山さんも来るの⁉︎」

「うん、もう誘ったよ。でも畑山さん明日締切の仕事抱えてるから、それが終わってからだから遅くなるかもしれないって。」

「そうなんだ、私、畑山さんと何話したらいいんだろう。緊張して話せないかも。」

「大丈夫だって。イジりがいのある中田さんもいるから、中田さんに話ふれば、嬉しくって一人でも喋ってるって。」

「確かに、中田さんはムードメーカーだもんね。いっぱい喋ってくれそう。場が盛り上がればいいな。」


 私は仕事中、チラッと畑山さんを盗み見ると、畑山さんはいつも通りテキパキと仕事をしているようだった。明日までに一番お気に入りのずっと前に買ったスカート履けるかな、今日はデザートは抜きで、夕食も少し減らすか。そんなことを考え、危うく伝票に打ち込む文字をミスしそうになりながら、定時で帰った。


 六


 今日はぽっこりお腹もちょっとはマシになった気がしたし、スカートが一応締まった。飲み会に行く準備万端で、優雅に朝からスムージーを作って、トーストとサラダを食べた。お気に入りのテンションの上がる洋楽をかけ、くるくるっと回りながら踊った。歯磨きも丁寧に磨き、口の中がさっぱりした。口の臭いが気になったら困るので、ミントガムをカバンの中に仕込み、買ったばかりのハンカチと濡れティッシュと小腹が空いた時に食べるチョコを入れた。

 会社に着くと、いつものように席に座り、パソコンでメールをチェックした。社内メールで菜々子から連絡が来ていて、今日の飲み会の場所と時間が書いてあった。私は優先順位の高い仕事から手をつけ、プライベートは仕事とは関係ないので、淡々と仕事に向かった。


飲み会までは菜々子と待ち合わせして行くことにした。

「お待たせー。」菜々子が走りながら手を上げて来た。

「舞子、スカート可愛いじゃん。」

「本当?ちょっと張り切っちゃった。」私は照れ笑いした。

「畑山さんね、さっき連絡くれたんだけど、お得意様の商談が長引きそうだから、先に飲み会始めててくれって。中田さんは定時で帰れるみたいだから、時間通りに来るってさ。」

「そうなんだ、菜々子、幹事やってくれてありがとうね。」

「なんもなんも、気にしないで。私は舞子が幸せになってくれたらそれでいいんだから。」

「菜々子は好きな人いないの?」

「今はいないよ。おひとり様もいいかなーって。ほら、恋愛って楽しいけど、面倒臭いじゃない。結婚前提ってなんか重いし、結婚したら家事だ子育てだって、自分の時間なくなるし、そう思うと、結婚なんて焦ってするもんじゃないかなーって思うんだよね。」

「うん、私もなんとなくわかる。やっぱ自分の時間は大切にしたいよね。結婚しても、相手が家事手伝ってくれなかったり、私ばっかりに負担がくるような家庭は嫌だな。お互い思いやり持って、接しないと離婚することになったりして、関係が長く維持できないと思う。」


 待ち合わせの飲み屋に着くと、中田さんがすでに来ていた。

「河野さんと安西さん、仲良いよね。」

「中田さんは誰とでも分け隔てなく仲良いですよね。社交的で羨ましいな。」

「僕は広く浅くがコミュニケーションの基本だと思ってるからね。関係が深くなると、厄介なことも多いし、僕にはちょうどいいんだよ。」

中田さんは魚の盛り合わせや、野菜スティックのバーニャカウダソース付きに、ローストビーフなどを頼んでくれた。お酒は私と菜々子はカクテルを飲み、中田さんはビールを飲んでいた。一時間くらい遅れて、畑山さんが来た。

「遅れてごめんねー。商談がなかなか終わらなくってさー。」

「大丈夫ですよ。畑山さん何飲みますか?」

「じゃあ、ハイボールにしようかな。」

「すいませーん。」

菜々子が店員さんを呼び止め、注文した。

「畑山さんってできる男って感じですよね。」

「そんなことないよ。いつも皆んなに助けてもらってできてるように見えてるだけだよ。」

「そんなまた〜、謙虚ですね。」

「でも畑山が安西さんのこと助けた時はすげぇ奴だなと思ったよ。俺も見習わなきゃなって。」

「ですよね〜。舞子も良かったよね。畑山さんが同じ部署で。」

「うん、あの時はありがとうございます。」

「改めて言われると照れるな。僕は当たり前の事しただけなのに…。だって、あまりにもひどかったじゃない。黙ってみてられなかったよ。」

私はその言葉に胸がキュンとした。

「畑山さんって彼女いないんですよね?」

「…一応いるよ。」

「えっだって…噂ではいないって聞いたんですけど。」

「あー、いつもは聞かれたら、いないって答えてる。だって、いるって言ったら、飲み会にも誘われなくなるし、いろいろ聞かれたりするのが嫌なんだ。」

 私はショックだった。なんだ、やっぱりいるんだ。どす黒い感情が私の中に流れ込んできた。菜々子が心配そうな目で私をチラッと見た。

「俺も彼女欲しいなー。河野さんと安西さん、どっちか俺の彼女にならない?」

「ちょっと、中田さん軽すぎますよ。お酒飲み過ぎじゃないですか。」

「ごめんごめん。俺もてないからさ〜飲み会の場にはよく呼ばれるんだけど、なんでかいつも盛り上げ役になって、後から一緒に飲んでたやつと女の子が、くっついてたりするんだよね。」

「中田さん、良い人だからなー。」

「良い人で終わりたくないんだけどね。」

「安西さん、爪綺麗だね。」畑山さんが私のグラスを持つ手を見て言った。

「ありがとうございます。友達がサロン開いてて、そこで安くやってもらってるんです。」

「そうなんだ。女性は化粧したり、ネイルしたり、オシャレのレパートリーがたくさんあっていいよね。」

「畑山さんもスーツ、ピシッと決まってるし、髪も短く整えられてて素敵ですよ。」

「ありがとう。清潔感は会社員にとって大事だからね。そこは気をつけてるよ。」

「河野さんと安西さんはどうして仲良くなったの?」中田さんがローストビーフを切りながら、聞いてきた。

「同じ派遣社員ですし、行きつけのお店が一緒だったんですよ。そこで意気投合しちゃって。」

「そうなんだ。このお店は河野さんが選んだの?」

「はい、ネットサーフィン好きなんで。」

「菜々子はリサーチがすごいんですよ。菜々子に聞けば、大抵のことはわかりますよ。」

「へぇー、俺、物知りの女の子は好きだよ。知らないこと沢山教えて欲しいし。」

「なんか二人いい感じですね。連絡先交換したらどうですか?」私は中田さんは菜々子に気がありそうだと思い、言ってみた。

「俺はいいよ。河野さんが良いなら。」

「じゃあ、交換しますか。」

 飲み会が終わり、私は菜々子と一緒に帰った。

「畑山さん彼女いたんだね、ごめんね、舞子。」

「大丈夫だよ。畑山さん良い人だもん、彼女いない方がおかしいよ。それより、菜々子と中田さん、うまくいけばいいな。」

「舞子から交換したらって言われるとは思わなかったよ。ちょっと焦ったけど、でも中田さんなら悪い人じゃないし、友達から始めてみるのもいいかも。」

「うん、友達からなら気楽だね。」


 帰ると、テーブルにお兄ちゃんからの置き手紙があった。「舞子、飲み会は楽しかったかい?俺は明日早いから先に寝てるけど、朝ごはんは作るから食べていけよ。」

 お兄ちゃんの言葉がズキズキしている心に沁みた。畑山さんの彼女ってどんな人だろう、結婚前提かな。それとももう婚約してるとか?色々想像しながら、顔を洗ったり、歯を磨いたりしていると、今の自分にはどうしようもできないことなのだという事実だけが浮かんできた。それより、切り替えてもっと

良い人に出会うために自分磨きだ。飲み会のためにダイエット頑張って来て、成果が出て来たんだから、続けなきゃっと自分を奮い立たせた。


それから三ヶ月後、私は畑山さんのことはすっかり吹っ切れて、ダイエットも成功した。体重は今までで一番ベストな体重になったし、二重顎はすっかり姿を消し、三段腹も無くなった。私は体が軽くなり、心も軽くなった。毎日がキラキラしていて、自信に満ちていた。そんな時、菜々子から畑山さんが彼女と別れたという噂を持って来た。


「舞子、畑山さん別れたみたいだけど、どうする?」

「どうするって何もないよ。私はもう、畑山さんの事は終わったことだし、男なんかいなくても今幸せだもん。」

「そうだよね、舞子はおひとり様の方が合ってるのかもね。」

「うん、菜々子、来週中田さんと結婚式だね。お祝いのスピーチは任せて。」

「ありがとう。」

菜々子は中田さんと付き合い始めてから、トントン拍子に結婚が決まった。結婚って案外そういうもんなのかな。気づかないうちに縁ができてて、なんとなく時間が経って、結婚の流れになって、結ばれていく。私は結婚するのは諦めたわけではないけれど、おひとり様も悪くないと思っている。無理して相手に合わせる必要がないし、余計な労力を使わなくていい。自分の自由に事が進んでいく。何よりストレスがない。寂しさはあるが、不思議なもので長い時間寂しいとそれにも慣れて順応していく。


 菜々子と中田さんが結婚するお祝いも兼ねてまた四人で飲み会をすることになった。菜々子と中田さんは二人で来るので、私は一人で居酒屋の前で待っていた。すると、5分後に畑山さんがやって来て、私に気づくと笑顔で手を上げた。

「安西さん早いね。僕が一番かと思ってた。」

「待ち合わせに遅れたら二人のお祝いなのに悪いなって思って。」

「そうだね。二人結婚することになったんだもんね。安西さんキューピットだね。」

「菜々子が幸せになって本当に良かったです。1番の友達なんで。」

「友達思いだね。二人は仲が良くていいな。」

「畑山さんはそういう人、いないんですか?」

「僕の年齢にもなると、同世代は家庭持ちが多くてね、飲みにも誘いづらいんだ。」

「畑山さん気遣う人ですもんね。」

「そうかな。」

「いつも周りに気遣って、リーダーシップとってくれて、すごいなと思ってました。」

「照れるな。安西さんは最近、仕事にも意欲的だし、なんだか輝いてるよね。」

「あはは、ちょっとダイエットが成功して、一人で浮かれてます。笑っちゃいますよね。」

「そんなことないよ。素敵だなって思うよ。」

「…あの」

その時、菜々子と中田さんが現れた。

「お待たせ、あっもしかしていい感じだった?お邪魔だったかな。」

「えっ!そんなことないわよー…。」私は焦って赤面してしまった。

4人は居酒屋に入り、お酒やおつまみを頼んだ。

「中田さんは菜々子のどんなところが良かったんですか?」

「こらこら」菜々子が笑いながら制止した。

「私の良いところなんてあり過ぎて選べないっての。」

「菜々子料理作るのうまいから、胃袋掴まれたんじゃないですか?」

「そうだね、ほんと料理がうまくて、リクエストしたらパパパっと作っちゃうから、そこは尊敬してるよ。」

「一応いい年の女なんだから、それくらいのことはできてないとね。」

「畑山さんはどんな女性が理想なんですか?」菜々子が聞いたあと、私を見てニヤニヤしている。

「そうだな、僕は相手に合わせるタイプだけど、強いて言うなら面白くて、気楽に話せる人が好きだよ。」

「面白い人ですか。友達みたいに楽しく会話できたら良いってことですね?」

「そうそう。僕が口下手だから、黙ってても喋ってくれて、会話が途切れない人が理想かな。」

「だいぶハードル高いですね。」

「そうかな?それ以外は顔も性格もそんなにこだわらないけどね。」

「でも、畑山さんが旦那さんだったら、きっと嫌なことあっても守ってくれそう、ね、舞子。」

「うん、辛い時とか話聞いてくれて、解決策とか一緒に考えてくれるんだろうな〜。」

「買い被りすぎだよ。僕だってわがままなところとか、趣味に没頭してて、付き合えない時だってあるよ?冷たいって言われたこともあるし。」

「そうなんですか?畑山さんの趣味って何ですか?」

「僕は根っからのゲーマーオタクなんだ。会社から帰ったらご飯食べながら、真っ先にコントローラーいじって画面に齧り付いてるよ。」

「へぇー意外。舞子も携帯のアプリで色んなゲームやってるよね。」

「うん、ゲームいいですよね。ガチャでいいもの当たった時はよっしゃって思うし、その日一日頑張れる気がします。」

「わかる。ゲームがあると暇な時間がなくなるし、時間を有意義に使った気分になるよね。実際は何か達成したわけじゃなくても。」

「はい。私もゲーム始めてから毎日が楽しくなりました。」

「今度オンラインでゲーム一緒にやらない?僕がやってるゲーム紹介するからさ。」

「いいですね。やりたいです。」

「良かったね、舞子。ゲーム仲間できて。」

「うん。」

ふと菜々子の横の中田さんを見ると、お酒に酔ってぐったり寝てしまっていた。中田さんは畑山さんが肩を持ちあげて、タクシーで自宅まで送ることになった。菜々子も同乗し、三人は夜の街の中、舞子を残し、颯爽と消えていった。私は畑山さんと今度ゲームをやる約束ができたことに満足感を覚えていた。


















 


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