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第7話 影斗、日向にさらわれる

「ねぇ、ちょっと。大丈夫? しっかりしてよ影斗。探したんだよ? なにこれ、ひどい傷。大神たちがやったの?」


 なんとか意識を集中させると誰がいるのかわかった。声も聞こえる。


 これは。


「……日向……」


 いつもののほほんとした雰囲気をどこに置いてきたのか、真剣な表情をしている。


「え、ど、どうしたの影斗、こんなところで。ってそんな場合じゃないか」


 学校にいるにも関わらず、僕のことをペタペタと触ってくる。


 時折、傷口に触れられ苦しむ僕を心配そうに顔を寄せてくる。


 ち、近い。


 なんだか目線がおかしい気がする。後頭部も砂利のはずなのに柔らかいし。


 まずいな。これはまずいな。日向が目の前にいる。そう思ったからか、途端に体から力が抜けていく。気が緩んで、緊張が解けたのかもしれない。


「……ッ!」


 日向は叫んでいる。


 ああ。ヤバい。なんだか。すごく眠い。




「ん?」


 生きてる。だけど、なんだかやけに体が重い。


 じゃっかん耳鳴りがするし、頭もクラクラする。


 確か……そうだ。大神くんたちからボッコボコに殴られまくってたんだ。


 ならこうなってるのも多少納得がいく。


 でも、それでどうなったんだっけ。


「……あれ」


 記憶がぐちゃぐちゃに混ざってるせいでよく思い出せない。なんだか今と過去がいつだかわからないような。


 それでも、これまでは殴られすぎて体が重くても、起き上がれないほどじゃなかったはず。


 それにこの部屋なんだか甘い匂いがする。よく見ると、僕の部屋じゃないし。


 まさか、大神くんたちに拉致監禁された?


 いやいや、いかに大神くんたちとはいえそこまではしないはず……。


「じゃあここどこだ!」


 ヤバい。天井が落ちてくるのかもしれない。


 なら、拘束されて動けないのも納得だ。


 全身からブワッと汗が吹き出してきた。


 少し見覚えがあるから、僕の知っている場所なのかもしれないけど、今はそんなことを分析している場合じゃない。


「どうしようどうしよう」


「んんー。あっ。影斗起きたー?」


 僕の上から起き上がり、伸びをしながらのんびりとした声を漏らす少女の姿。


「え、日向……?」


「いやー。眠くなっちゃって寝ちゃった。自分の部屋だとつい、ね」


 てへへーなんて声を漏らしながら目の前ではにかんでいるのは、日向だ。大神くんじゃない。日向だ。


 どう見ても幼なじみの女の子だ。


 日向が起き上がったら僕の体も軽くなった。


 乗っかっていたのは日向だったらしい。僕におおいかぶさるように日向が寝ていたらしい。


 状況が理解でき、汗が引いていくのがわかる。いや、今度は冷や汗が出てくる。


「ひ、日向。不用心が過ぎるんじゃないか? 僕だって男だぞ? そいつを部屋に連れて上に乗っかって寝るなんて。なに考えてるんだよ」


 そりゃ、今だって人目がなければ昔のように遊ぶこともある。だが、それとこれとは別の話だ。


 いくら幼なじみとの関係と言ったって限度ってものがあるだろう。


 これは親しいと言うより油断しすぎだろう。まあ、好かれていると考えるなら嬉しいが。


「……影斗ならいいんだけど」


「なに?」


 日向のぼそっと言った言葉を聞き漏らしてしまった。


 そのせいでぽかぽかと僕のことを叩いてくる。


 耳まで赤くして怒っているようだ。


「お、恩人に対する態度がなってないんじゃないかなー?」


 絶対さっきと言ってることが違うが、確かに日向の言うとおりだ。


「心配かけてごめん」


「別に、謝らなくていいよ。好きだからやっただけだし」


「ありがとう」


 僕が感謝すると、また顔を赤くして日向は僕を叩き出した。


「え、え?」


「い、今のなし。聞かなかったことにして」


「う、うん?」


 なにかあったか? 本当は僕なんて助けたくなかったとか?


 それならちょっとショックだ。


「でも、日向って力強いんだな」


「もしかして痛かった?」


「いや、僕をここまで運んでくれたんだろ?」


「自分で歩いてたじゃん。覚えてないの?」


「マジか」


 全く覚えていない。こりゃ、相当やられてるな。


 会話ができてるのがすごいくらいだ。


「これは」


「わたしがやっておいたんだよ。まあ、不器用だけど、やらないよりいいかなと思ってさ。許して」


 ケガの手当てまでしてくれたのか。


「いや、そんなことないよ。ありがとう」


「よかった」


「日向はいいやつだよな。僕なんかに優しくしてくれてさ。僕でもいいうわさが聞こえてくるし。見た目がいいなんて話は特にな。いつもありがとう」


 ぽかんと日向は口を開けたまま返事をしないで僕を見ている。


「ど、どうした? なにか変なこと言ったか?」


「べ、別にー?」


 少し嬉しそうに口元をひくつかせながら日向は言った。


 わかりやすいやつめ。


 日向の寝癖まみれの頭をかき回し、僕は立ち上がった。


「これ以上長居しちゃ悪いし帰るよ」


「そっか……」


「また明日」


「明日は一緒にね」


「いつものことだろ?」


「うん!」


 僕は笑顔の日向を見てから部屋を出た。


 日向の部屋に入ったのはいつぶりだろうか。めちゃくちゃかわいい感じになってた。


 日向も色々あるんだろうな。


 さて、帰って今日も配信しないとな。


 明日もあるしさっさとやっちゃおう。

いつも読んでくださりありがとうございます。


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