第3話 幼なじみを認められないのはかわいそう:影斗視点
〜影斗視点〜
「動画配信もやってるんだ。よかったら見てみてよ」
と、帰り際に教えてもらったので、見てみようと思う。
しかし、連絡先がいつの間にか交換され、風香さんのチャンネルへのリンクが送られてきている。
調べる手間が省けた。
ありがたい。
「本当にやってる。いや、嘘はつかないか」
しかし、疑っていたわけではないが、風香さんは本当にプロだったらしい。
自己紹介動画や、フーカというハンドルネームをもとに、さらにネットで調べてみると、色々と経歴が出てきた。
動画では、本人の姿が映っていることから、まず間違いない。
いや、嘘はつかないか。
「すげぇなぁ」
プロゲーマーについてはよくわからないけど、多分すごいのだろう。
見た目もかわいいからそっちでも人気らしいし、僕なんかよりよっぽどすごいんだろう。多分。
「おっと、無能がこんなところで何を見てるんだ? 貸せっ!」
「あっ」
スマホを取られた。
パクられた!
見た目がよくても、必ずしも心までいいとは限らないという証明をされてしまった!
こいつはっ……! 誰だっけ? 確か、よし、よし……。なんとかさん。
よし、よし……。
「ヨシゾウ! くん。僕のスマホを返してくれないかな?」
「ヨシミネだっ! 坂元ヨシミネ! お前、なめてるのか? この学校にいて俺を知らないなんて、焼きそばパンに焼きそばを入れないようなものだぞ!」
「知らないよ」
「じゃあ認識しろ! そもそもだ。そもそもこの俺が、そんなジジくさい名前なわけがないだろう。少し考えたらわかるはずだ。お望みなら、このスマホをバッキバキにしてやってもいいんだぞ?」
「いや、そんな要望出してないから。返してって言ってるんだけど」
やっぱり、反応があると、嬉しそうに見えるんだよな。
こいつの行動原理って、そういうことかな?
というか、ヨシミネも充分ジジくさくないか?
それに、いつまで経ってもスマホを返してくれないし。
「さーて、そんなこたいいんだよ。なに見てたんだ? 言いふらしてやるよ。って、風香!?」
なんでこんなに小学生みたいなやつが厄介なんだろうか。
いや、力だけ強い小学生は、相手するのも大変か。
いやむしろ、小学生に例える方が失礼だ。今の小学生の方がこいつより賢いまである。
「おい。なんだよこれ! さっきからニヤニヤしてないでなんか言えよ!」
こいつ、幼なじみのくせに、風香さんがやってること知らないのか?
まあ、なんというか、話を聞く限り、決めつけてばかりで情報収集しない世間知らずみたいだからな。
きっと、無知を認められないタイプなんだろう。せっかくだし教えといてやるか。
「そうだよ。僕が見ていたのは風香さん。いや、フーカさんだ。フーカさんは、登録者数百万人越えの、動画配信者兼プロゲーマーだよ。その道の人じゃなくても知ってるような、有名人だよ」
まあ、僕も知らなかったんだけどね。
不勉強が恥ずかしい。
僕と同じ気持ちなのか、なんとかくんはプルプルと震え出した。
「はっ! たかだか百万人ぽっちに知られてるじゃないか。日本の人口で考えたら、百万なんて、大した数字じゃないだろ? テレビの方が多くの人に知られるんだ。ネットで有名だからって、なにを偉そうに言ってるんだか」
ここまで見せられたら、さすがに認めた方が気がラクになると思うんだけどな。
どうしても大したことないってことにしたいんだろう。
素直に認めてあげればいいのに。そうしたら、風香さんも、優しくしてくれたかもしれないのに。
僕に対する日向みたいに。
「どうした。図星か? なにも言えないんだろ?」
「だから」
「ほれみろ!」
「いや、反論させようとしな」
「喋れないか?」
こいつまじで会話する気ないな。
「ぼっちはこうして、画面越しに妄想するしかないんだろ? かっわいそーだ」
「あー! 影斗! こんなところにいた。今日は離さないからね!」
「よく見つかったわね」
「わたしには影斗の居場所がわかるんですー」
「さっきまで見つかってなかったけど?」
「むー!」
「「……」」
どうやら日向たちに見つかってしまったらしい。
だが、これはちょうどいい。
「僕のことをぼっちだなんだと言ってたけど、誰がぼっちだって?」
「しらけることすんなよ。くそっ!」
「おっとっとっと。あっぶな。人のもの投げるなよな、まったく」
「お前ら。あんなぼっちと関わってると、後で後悔するぞ」
日向と怜をにらみつけるように、なんとかくんは言った。
だが、二人は、なんとかくんをスルーすると、僕の背後に隠れた。
どうやら、僕はさらっと盾にされてしまったようだ。
「ねえ、影斗。あれ、誰?」
「あれはえっと……。坂元ヨシ……。ヨシロウさん」
「ヨシミネだ! いい加減にしろ!」
「だそうだ」
「ふーん。あの人から逃げてたの? そうだよね?」
「まあ、そんなところ」
ここ一日くらいだけど。
「坂元ヨシミネ……。聞き覚えがあるわね。どうしてかしら」
「そうなのか?」
「ん? ふーん。……庄司怜か。お前ら、今に見てろよ……。バカ!」
もっといい捨て台詞吐けないのかな……。
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