第2話 完璧パーフェクト:ヨシミネ視点
俺こそが坂元ヨシミネ。この世の絶対的パーフェクト。理にしてルール。
何をやらせても優秀すぎるほど優秀で、出来すぎるほど出来てしまう。特にスポーツに関しては右に出る者はナッシング。
そんな俺には不出来な幼なじみがいる。名前を浪川風香という。
こいつはダメだ。
「チッ」
思わず舌打ちしたくなるほどダメだ。
キレッキレの俺に対し、ダメッダメといったところか。
何がダメか? そんなものは決まっている。やることなすこと全部ダメだ。
特にダメなのは、女のくせしてゲームに熱を入れていることだろう。
「はあ」
思わずため息をつきたくなってしまうほどダメだ。
最近俺は、そのことをありがたく説いてやった。そしたら、
「あたし、プロだから。アンタのいろんなお遊びと一緒にしないでくれる?」
とか真剣な顔で言われて驚いてしまった。
風香が言うにはそっち系では有名な大会に出たり、賞金を得たりしているとかいう話だった。それが本当なら、俺よりも世間に認知されているのだろう。
そして、その言葉を信用するなら、ゲームに関しては、俺以上に実力を認められ評価されているということなのだろう。
衝撃的なカミングアウト以外は何を言っていたのか覚えていない。が、さすがの俺も正直絶句してしまった。
だから言ってやった。
「いつまでも夢見てないで現実を生きろ」
と。
だってそうだろう? ゲームなんか見せたところで人からお金をもらえるはずがないじゃないか。
そっち系には興味がなく詳しくないからこそ、俺をだまそうと色々でっちあげたに違いない。
事実、俺は風香の言っていることを、今まで何一つとして認識していなかったからな。存在するのかどうかさえ怪しい。
なにより、俺がルールだ。
まあ、にも関わらず、
「現実を見てないのはアンタでしょ」
と逃げられた。が、これも今まで正しいことを言われて悔しかったに違いない。
なぜって? とうとう風香に春が来たからだ。これは、俺の言ってることが正しかったと思い直したという証拠だ。
風が香るなんて名前のくせに男っ気がなかったからな。まあ、そのことに関しては俺だって喜んださ。
だが、やっぱりダメなやつは群れるだけだったんだよな。
才能のない男を引っかけてしまうなんて、これはもう呆れを通り越して同情したくなるな。
まさか、あの俺より上と思い上がっていた、力しか能のなかった大神。そいつにいじめられていたようなやつを選ぶなんてな。
釘を刺しておいたし、びびってもう関わらないだろうが。こんなことするのも、風香はあれでも幼なじみだからな。
まあ、風香にとっては正直どうしようもない出来事だが、俺にとってはいい出会いだ。
「新しいオモチャを見つけた。大神みたいな出来損ないより俺がいいだろ? そうだろ? いじめられっ子」
ダメなやつはとことん才能のあるやつの引き立て役になるのがちょうどいい。
なにやら俺に対して気取った態度をとってきたが、あれだって風香と同じくその場限りの踏ん張りに過ぎないだろう。長く続くもんじゃあない。
俺よりこの学校でいい顔してた大神がどういうわけか来なくなったからな。調子に乗っているんだろう。
まあ、俺と人気を二分していた大神がいなくなった今、この学校は俺のものになったと言っても過言ではない。
そもそも俺はあれと違って、教師に目をつけられるような間違ったことはしていない。
話をするため顔を近づけることはあっても殴るようなことはないし、正論しか言っていないからな。となれば、俺がこの座を得ることは偶然というよりも必然だったということ!
「クククッ!」
人生まだまだ楽しくなるな。
さーて、幼なじみがせっかく引き合わせてくれたんだ。どう楽しませてやろうか。
「さ、坂元さん!」
「なんだ。柳原」
ったく。今いいところだったんだがな。
俺に次ぐ実力だかなんだか知らないが、やはり才能がないやつは間が悪くてダメだな。
「すみません。顧問がお呼びです。どうか顔を出してくれないかと。そうしてくれないと士気が下がって困るとのことで」
「ふっ。仕方ないな。そういうことなら出て行ってやる」
求められる男は困るね。この学校で一番テニスが上手いとなると、呼ばれることも無理はない。
いじめられっ子をどうしてやるかは別に今すぐに決めないといけないことじゃあない。
あとでじーっくりと考えてやろう。
「すぐに行くと伝えておけ」
「はい! そう伝えます」
「さっさと行け」
「はい! 失礼します」
柳原は頭を下げて走り去っていく。
まったく。最近言葉遣いが少しはマシになったと思ったが、あれじゃまだまだだな。
俺と関わるには品性がまるで鍛えられていない。
「まあいい。才能のある人間は無能と違って忙しいからな。ゲームなんかをしている暇はないのさ」
さて、来いと言われてあんまり遅れるのも悪いからな。さっさと支度を済ませて出向いてやるとするか。
「ああ。やることが多くて大変だな。こんなのアイツらにはわからないんだろうな!」
新作を書きました。
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