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寝たふりして机に突っ伏していると近くから僕の配信について感想を言い合う美少女たちの声が聞こえてくるんだが!?〜あれ、僕をいじめてた彼はどうなったんだろう〜  作者: マグローK
第一章 VTuber雲母坂キララはじまり編

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エピローグ 新しい門出

「ここは……?」


「日向。よかった。目が覚めたか」


 気絶していた日向だったが、ようやく目を覚ました。


「影斗っ!」


「うおっ」


 目を覚ましたかと思うと勢いよく起き上がり、日向が抱きついてきた。


 ふわりといい匂いが鼻腔をくすぐる。ここまで接近されるのはいつぶりだろう。


 心臓がドキドキする。柔らかい。


 じゃない。僕のことより日向のことだ。


 すぐに起き上がるのは体に悪そうだが、元気みたいでよかった。


「影斗の匂い。影斗のベッド。影斗がここまで連れてきてくれたの?」


「まあな。学校のがラクだろうけど、起きたら家のほうがいいかと思って」


「ありがと。それじゃあここは影斗の部屋? なんだか懐かしいね」


「そうだな。日向を入れるのは久しぶりうっ」


 話してる途中で、急に僕を抱く日向の力が強くなった。


 どうして……。


「怜ちゃん……」


「とらないわよ。大丈夫だから」


「……怜ちゃん。わたしに内緒にしてたでしょ」


「それは、影斗もでしょ?」


「影斗はいいもーん。わたしの彼氏だから」


「なっ!」


 なんだかご機嫌に笑う日向と低い声でうめく怜。


 すでに女性同士の静かな戦いが始まっている気がする。


 僕ここにいて生きて帰れるのだろうか。


 ちょっと振り向きたくない。


「ねー。影斗」


「はは。なんだか照れるな」


「へへへー」


 やっぱりご機嫌に笑う日向と、なんだか背後でうめいている怜。


 この二人前からこんな感じだったか? もう少し仲良しだった気がするんだけど。


「まあでも? 気絶していた時ほど熱くないし、熱じゃないみたいでよかった」


「影斗が介抱してくれたおかげだよー」


「いや、えっと。それは、違くて……」


 僕は恐る恐る後ろを振り返った。


 そして、仁王立ちの姿で見下ろしている怜を見上げ、手で示した。


「えー」


「なによ。悪かったわね影斗じゃなくて」


「僕だけじゃ日向みたく手当てとかできないからさ」


「それじゃー仕方ないなー」


「なに? この温度差は……」


 それは僕も感じている。


 なんというか、日向が小動物のようになっている。


 とにかく距離が近い。


 ずっと抱きついたままだし、ことあるごとに頭をこすりつけてくる。


 これが日向の恋人像!?


「影斗ー」


「あ、はは」


 声もいつもより高い気がする。


「……」


 それに対して、怜からは負のオーラが出ている気がする。


 オーラなんて目に見えないから気のせいだよな。というかそろそろ座ってほしいんだけど。


「なあ、なんか二人とも仲悪くなってない? 元からこんなだったか? 違うよな? 僕のせいか?」


 僕の言葉を聞いて、二人してちらと目線を合わせた。


 そして、なんの了解があったのか、二人ともニヤリと笑ってみせた。それはそれは楽しそうに。


「いつも通りだよー」


「いつも通りよ」


 二人は息ぴったり言ってきた。


 そのことに僕は思わず笑ってしまった。


 少し緊張していたが、気にするほどではなかったみたいだ。


「どうかしたー?」


「なんだか気になる反応なんだけど?」


 こらえきれず笑っている僕に日向からはのほほんとした、怜からは冷ややかな視線が飛んでくる。


 僕は首を横に振りながらも息を漏らしてしまう。


「はは。ふ。笑ってるけど、別にバカにしてるとかじゃないんだ。ただ、心配して損したと思ってさ。ケンカとかじゃなさそうだし」


 不思議そうに顔を見合わせる二人。


 またしても息ぴったり。


 そんな様子を見ていると、きっと大丈夫なんだろう思えてくる。


 女同士の関係は僕にはわからない。でも、難しいかもしれないけど、僕は二人には仲良くしていてほしいのだ。


「でもよかった。一生顔も合わせたくないとかってことにならないで」


「わたしはそこまで子どもじゃないよー」


「そうよ。わたしだってそこまで子どもじゃないわ」


 それもそうか。


 いやいやいや。結構深刻だったと思うんだが!?


「さ、影斗。日向さんも起きたし」


「そうだな。大丈夫そうだし、本題に入るか」


「あっ……」


 僕と怜の言葉になにを思ったのか、日向はさみしそうにしながらも、僕から離れ、しきりになにかを探し始めた。


「それじゃ、わたしは帰るね……」


 目を合わせないでそんなことを言う。


 そして、見つかったみたいな顔をして、日向はベッドから立ち上がるとカバンに向かって歩き出そうとした。


「え」


 僕はその手を引いた。


「なに言ってるんだよ」


「そうよ」


「どうして? 二人はこれからキララちゃんについて作戦会議なんでしょ? わたしはただの切り抜きの人。いくら彼女でも邪魔しちゃ悪いよ」


「僕だって二人と同じようにとはいかないが、覚悟を決めたんだ」


 僕は立ち上がり、一つ、深呼吸を挟んでから日向を真っ直ぐ見つめた。


「切り抜き職人入間日向さんに僕、いいや、雲母坂キララの配信について意見してほしい」


「でも……」


 それでも迷うように僕を見てくれない日向に、僕は改めて。


「日向は僕のマネジメントしてくれるんだろ?」


 日向はハッとしたように目を開け僕を見てくれた。


 そして、うかがうように怜を見た。


 不安そうな日向は、怜がうなずくことでパアッと花が咲いたみたいに顔をかがやかせて、


「うん!!」


 いつものように元気よく返事をすると僕の肩にギュッと抱きついてきた。

いつも読んでくださりありがとうございます。


これにて一章完結です。


「面白い!」


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よろしくお願いします。

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