第50話 日向のことどうしよう!?:影斗視点
「なあ、怜。僕の勘違いならいいんだけどさ」
「なにかしら? 最近の配信で、結果が振るわなかったわけではないでしょう? ゲームの勝敗は影斗の練習次第よ。どうかしたのかしら? もしかして普段の困りごと?」
僕が話を切り出すと怜の顔が少しひきつり出した。それにやたらと早口だ。
なんとなく話すことを理解しているのだろう。
それでもあくまでも平静を装っているところは、さすがは参謀役と言ったところか。
しかし、僕に思い当たる節がないことを考えると、今回の出来事は怜のせいなんじゃないかと疑っている。
「ああ。多分その困りごとのほうなんだが、怜、日向になにか言ったか?」
ピクリと体を震わせる怜。
「い、言ってないわ」
どうやらなにかあったらしい。
「もしかしてなんだが、今やってることをバラしたとかか? 怜に限ってそんなことはしないと思うが、情にほだされてやったか? そうでもないとどうにも日向の様子のおかしさを説明できないと思うんだが」
「それは違うわ! それだけは絶対に違うわ!」
「それだけは?」
「あっ」
なんだろう。ここまで怜の詰めが甘いということはキララの関係していることなのだろう。
日向の様子が変わるなら、日常の中のことで、そのうえキララの関係していること。
てっきりここにきてバラしたのだと思ったが、バラしたわけではないのか?
「まあ、とりあえず状況の伝達なんだが、どうも日向の視線が変なんだよ。いやそんな気がするだけかもしれないんだけど、朝も置いてかれたしさ。そこそこショックなんだよ。どうしてだと思う?」
「ああ。気づいてしまったのね。いや、そこまでされれば普通気づくわね」
まあ、どうも日向から避けられてるんだもんな。
バラしたのなら、僕がキララやってるのは嫌だー! みたいなことかと思ったが、どうやらそうじゃないらしい。
でも、そうでもないのに声をかけても応えてくれないのは結構傷つくんだが。
それに、一体どうして?
「なあ、怜は知ってるんだろ? どうしてなんだよ?」
「でも、これは影斗のせいでもあるのよ?」
「僕の? どうして?」
「……」
言いにくそうに視線をさまよわせながら、怜はじっと目線を下げた。
「僕のせいでもあるんなら僕も知る必要がある。別に怒らないし参謀やめろとか言わないから言ってくれないか? 問題がわからないと対処できないって怜なら言うはずだろ?」
怜はコクリとうなずいた。
「そうね。そのための参謀役。いや、今回のことは違うわね。これは私がいなければ起きなかった問題だもの」
「どういうことだ?」
「私と影斗がこの家から出てくるところを日向さんが写真にとってたのよ」
「……それは、母さんのせいだ。怜を送ってけって言ったのは母さんだからな」
「責任転嫁ね」
「お、お互い様だろ? それで、気づいてないよな? バラしてないだけでバレてたら一緒だぞ」
「ええ。そこは大丈夫。私たちの関係に気づいてる様子はなかったわ。それに気づいていたら、日向さんの性格からして、影斗に直接言うんじゃないかしら」
「まあ、そんな気がするな。確証はないが……」
うん。
みんなには内緒にしとくからさ。みたいな感じで気づいてることを伝えてきそうだ。
まかり間違っても怜みたいに情報を掴んで脅してきたりはしない、はずだ。切り抜きをやってるから、もっと優遇しろみたいなことはあるかもしれないけど。
しかしうかつだった。
完全に気が緩んでいた。指摘されていたが、まさか現実のことになるとは……。
「なにか別の理由で納得してもらえないかな? 僕たちが一緒にいてもおかしくないような話を作ってさ」
「そ、それは無理ねー」
え、声が震えている。
今度は確実になにかしたな。
「おい。なにした?」
「……。こ、こんな時は影斗の声を」
「それはやめてほしいが、なにした? 正直に言ってくれ」
「写真を見て、か、影斗の親戚だってウソつきました」
怜は涙目になっている。
「マジか。そんな見えすいたウソついたら日向にバレるわな。対処法は?」
「対処法は考えてません」
めずらしい。しかし、母の無茶振りが原因だ。仕方もない。自分のまいた種ならまだしも、怜が発端じゃないしな。
まあ、僕も勉強じゃないって言っちゃってるし、部活もしないって言っちゃってるし。日向のマネージメントもいらないって…………これ、ヤバくね?
確実に怜と会って話すために二人で家にいるし、一緒に外に出てるし、どこまで見られたかわからないけど……。え、これもしかして参謀とバレるよりも日向に対してまずいのでは?
この間日向と出かけちゃってるし。僕、クズ野郎みたいじゃないか。本当に日向に関係を勘違いされてるんじゃないか?
「だから二股みたいになるって」
「わ、わからないでしょこんなことになるとは……」
「ど、どうしよう。怜。ここは参謀役としてなにかないか? いや、ここは俺がもう」
怜は立ち上がると胸を叩いた。テンションがおかしい。
「え、ええ! ここは私に任せておいて! 私がなんとかしてみせるわ! だから影斗は私に任せておいてほしいの」
自信たっぷりに胸に手を当てて言ってみせる怜。
今回はもうミスってるのに、どこからそんな自信が出てくるのかわからない。
「いやでも」
「いいから。参謀としてどうにか挽回してみせるから」
不安だ。
「わかった。難しそうなら言ってくれよ?」
「ええ」
「……影斗に任せたら、つき合っちゃう。私が好きなのは、キララちゃんだけど、影斗も。いえ、ここまでは私の思惑通り。そのはず……」
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