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寝たふりして机に突っ伏していると近くから僕の配信について感想を言い合う美少女たちの声が聞こえてくるんだが!?〜あれ、僕をいじめてた彼はどうなったんだろう〜  作者: マグローK
第一章 VTuber雲母坂キララはじまり編

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第46話 怜とデート

 公園。


 ハトにエサをやるおじいさんを見ながら僕はぼーっとしていた。


 来ないな。


「お待たせ」


 怜が僕の顔をのぞき込むように見てきた。


 時計を見ると時間ぴったり。僕が早く来すぎていたみたいだ。


「時間通りじゃん」


「こういうときは待ってないよっていうものじゃないのかしら? 寸劇で言ってたわよね」


「悪かったな。気が利かなくて」


「にしても早くから来てたのね。前もそうだったけど」


「僕は心配性なんだよ。早く行きがちなの。ごめんよ」


 くっそ。ダメだ。平静でいられない。混乱してる。なんだアレ。見慣れた制服姿じゃなくて、今日は私服で来てる。いつもと違ってなんかかわいい。女の子っぽい。ダメだ。思考がまとまらない。


 そういや制服以外の怜を見るのは初めてだ。


 今までは土日でも制服だった。どうしてと聞いたら遊びじゃないと言われた。


 僕は私服か寝巻きだったんだけど遊びだと思われてたのだろうか。あれ、ってことは今日は遊びなのか。


 しかし、謝ったのになぜかジロジロと見られている。上から下までなめ回すように。そういうのは男が女に対してやる視線じゃないの?


「な、なにかな?」


 声がうわずってしまう。


 普段見慣れた姿じゃない、おしゃれしている怜を前に緊張してしまう。


 だいぶ慣れてきたと思っていたのに……。


「前々から思っていたんだけど、影斗ってダサいわよね」


「だ、ダサっ……!」


 ダサい。ダサい。ダサい。


 僕はベンチからすべり落ちた。


 いや、それなりにそうだとうっすらと気づいてはいたけれども、直球をぶつけられるとどうにも堪える。


「その格好じゃきっとおしゃれしてくる日向さんに失礼よ」


「そ、そこまで!?」


「そこまでよ」


「そ、そんなに言わなくてもいいじゃないか!」


「失礼よ」


「二回も言わなくても……」


 はあ。そうかダサいのか。


 センスが中二で止まってるのかもしれない。


 まあそうだろうな。ヨレヨレになっても着てる服しか持ってないし、母さんに新しいの買いなさいって言われたのいつが最後だっただろう。


「今日は予定を考えてたけれど、全部取っ払って服を買うことにするわよ。お金は持ってるでしょう?」


「え、買うの?」


「これは必要経費よ」


「ゼッテー落ちない。はあ。僕の軍資金。有り金。お小遣い……」


 ほうけている僕は怜に無理矢理立ち上がらされ、腕を引っ張られて歩かされた。


 いつの間にかサイフを怜にすられていることに気づいたが、そんな時には近くのショッピングモールまで連れてこられていた。


「な、なあ。持ってるのでなんとかならない? 服って、その、高いじゃん?」


「なら聞くけど、持ってる中で今まで私に一度も見せてない服はある?」


 射抜くような視線。


 くそう。怜もファッションにうるさかったとは……。


 女子ってみんなこうなの?


 しかし、怜に見せてない服か。


「……ない、ですね」


「決まりね。支払う準備は充分かしら?」


「……ハイ…………僕に拒否権ないし」


 準備はいいかって財布取られてるんですけど。


 これを理由に声をばら撒かれたら最悪だしな。


「はあ」


「影斗」


 怜は僕の肩に手を乗せてきた。


 なんだか、嫌がる子どもを病院へ連れて行こうとする母親みたいな優しい顔をしている。


「そう気を落とさないで。私はそこまで気にしないけど、日向さんはできればかっこいい影斗を見たいはずよ」


「そうかなー? いつもどおりでいいんじゃ?」


「それはいつもどおりがかっこいい人に限るの。私もキララちゃんの中の人がこれじゃ、居ても立っても居られないわ……変な文字がなければそれだけでマシだと思うのに」


「なんて?」


「い、いいえ。これも参謀としての役割よ」


「うーん……ここは任せておくか」


「ええ。ドーンと任せておいてちょうだい」


 こんなに自信満々な怜は見たことがないほど、怜は胸を張って言った。


「……私、日向さんのために? なにやってるんだろう。いいえ、影斗をキララちゃんの中の人として恥ずかしくないようにするため。そうよ……」


「なにか言ったか?」


「ううん。それじゃ、見に行きましょうか」


 僕は正直、服屋がどこにあるのかすら知らなかった。


 だが、怜は場所を把握しているようでスイスイと連れて行かれた。


 僕はそうして、怜に服屋を連れ回された。


 確かに、周りにヨレヨレの服を着ている人はいなかった。流行とかはよくわからないままだが、これがおそらく怜の言っていた女の子の気持ちというやつであり、僕の身につけるべきスキルなのだろうと思った。


「こっちの方が似合うんじゃない?」


「どっちも同じじゃないか?」


 服をぺしぺし体にあてがわれながら、僕はどうしても周りに注意が散ってしまう。


 差がわからないし、ヨレヨレじゃないだけで結局大差ないような気がしてしまう。


 女の子の服ならイラストの資料になりそうなものだが、僕の服はそこまでこだわる必要もないような気がする。


「……学生かなー」


「そうじゃない?」


「ほほえましいね」


「青春って感じだね」


 そんな折、大人っぽいカップルが僕たちを見てニヤニヤ笑っているのが見えた。


「……お、おい。笑われてるぞ」


「いいじゃない」


「いや、ダサいことを気にしてるなら笑われちゃまずいだろ」


 怜がにらむような視線になって僕の目をジッと見つめてきた。


「私の判断がダメだって言うの?」


「そうじゃないけど」


「ならいいじゃない。今度はこれ着てみて」


「もういいだ」


「なにかしら?」


「ワカリマシタ」


 なんだか、怜は僕を着せ替え人形にするのが楽しくなってきている気がする。いつもより柔らかな笑顔で僕に服を渡してきた。


 まるで、周りのカップルと同じように。


 カップルと同じように……?


 僕は黙って歩き出した。


「頑張れ彼氏くん」


 通りすがりに、見知らぬお姉さんに言われ、僕は頭が真っ白になった。


 そのまま フィッティングルームに入りカーテンを閉める。


「……やられたっ!」


 そうだ。僕は怜のことをキララと疑似デートだと疑っていたんだ。いや、元はデート。間違っていない。でもこれは出かけてるだけ! そう約束したはずだ。


 なんだかいつもと違う雰囲気に惑わされ、色々と理由をつけられ納得していたが、違う! デートではない!


 しかし、ここまですべて怜の計画だったんだ。


 シャッ! と僕は勢いよくカーテンを開けた。


 そこには満足げに笑う怜が立っていた。


「いいじゃない。似合ってるわよ。これで大丈夫ね。さあ、会計よ」




「はっ」


 僕は金額を見て真っ青になった。


「あ、有り金で足りてよかった……」


 日向はこんな計算尽くじゃないといいな……。

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