星座が繋ぐ心と心
『第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品です。
キーワードは『星座』。
何か現代恋愛ものばかり書いている気がします。
疲れてる時には甘いものが欲しくなるってやつですかね……?
どうぞお楽しみください。
「ね! 先輩! 言った通りでしょ!? 冬の大学の屋上は絶好の天体観察ポイントなんですよ!」
「寒い」
「あの三つ連なってる星から斜めに四つの星が見えますか? あれが冬の星座の中でも見つけやすいオリオン座で」
「見えた。寒い」
「その左上の赤い星がベテルギウスで」
「見えた。寒い」
うーん、反応が悪いなぁ……。
理系女子でクールな先輩も、この星空ならちょっとは感動してくれるかと思ったのに……。
「お、オリオン座はギリシャ神話から生まれた星座で」
「乱暴者で女癖の悪いオリオンが、恋人に射殺されたんだろ。寒い」
正しいけど身も蓋もないまとめ方……。
「す、すごいですよね! こんな星の繋がりから、神話の英雄を創造するなんて!」
「星座は繋がっていない。寒い。オリオンベルトも、ミンタカが約690光年、アルニラムが約1980光年、アルニタクが約740光年先にある。寒い」
「え、あ、はい……」
「三次元的に捉えるべき宇宙を平面化して、自由気ままなお絵描き遊び。寒い。想像力は認めるが、星座など今の時代に必要とは思えない。寒い」
「そ、そんな事はないです」
「何?」
気温よりも冷たい先輩の目が僕に向けられる!
でも僕はこれを言わなくちゃ!
「全然遠い星でも、決して辿り着けないような場所にあっても、想像するだけで、目に見えない繋がりを作れるのは、人間にとって大事な事だと思います!」
「……」
「ぼ、僕は今日、先輩とそんな繋がりが持ちたくてお誘いしました! ぼ、僕とお付き合いしてください!」
「……」
……黙っちゃった……。
どうしよう、ここから……。
「何で私なんだ?」
「え、えっと、レポートのテーマが他の人と重なった時、諦めようとした僕に先輩は『君の書くレポートも読んでみたい』って言ってくれました!」
「あぁ、そんな事もあったな」
「あれからずっと先輩の言葉が僕の支えなんです! 北極星みたいに僕を導いてくれているんです! だから……!」
「星だなんて言うな」
……!
やっぱり僕なんかに想われても迷惑なのかな……。
「目に見えない繋がりも悪くはないが、私は今とても寒いんだ。触れ合える存在でいたいじゃないか」
「え?」
それってオッケーって事!?
「そんなに驚くな。年頃の女が二人きりに応じた以上、期待はしていたのだろう?」
「え、まぁ……」
「冷えてきたな。君の家に連れて行ってもらおうかな」
「えぇ!?」
慌てる僕の手を先輩が握る。
冷たくて、細くて、でも確かな繋がりを僕は感じた。
読了ありがとうございます。
当初はもう少し先輩を難攻不落にするつもりでしたが、夜に二人で会うなら結構確率あるよな、と思い、素直クールにしてみました。
サバサバ系理系女子とか良いと思います。
次回のキーワードは『夏祭り』……、夏祭り!?
頑張りますのでよろしくお願いいたします。