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2つの結婚式

ノルラとイーシスの結婚式は、ドルノとディアンの結婚式の半年後にしようという事になった。


ノルラの希望通りだ。

姉ドルノからディアン、ディアンからイーシスに上手く伝えてくれたに違いない。


全てが完璧だ。さすがイーシスくん。


『完璧なのよ』

時間が経ってから、ふと、母ケーテルの言葉が蘇った。

『えぇ、でも、もう、十分幸せなの。持ち切れないぐらい幸せで一杯なの。完璧なのよ』


今、一緒に観賞魚を眺めているイーシスの横顔を、ノルラは見上げた。

そして思った。


今日はイーシスくんが私のために計画してくれた日なんだもの。

お母様の事は、今は止めよう。


だから二人の時間を満喫だけして、仲良く空の船で家に戻った。


***


帰宅後、家族にも報告し、祝ってもらった。

そして急に父が涙をぬぐった。

母が優しく寄り添う。

どうやら、娘二人が結婚するので感極まったらしい。そういうものらしい。


なぜか、イーシスの父ノアがつられたように涙ぐんでいる。イーシスの母アリアが少し驚きながら笑って慰めている。

こちらは、ついわが身に置き換えてしまったらしい。


***


そして、夜。


ノルラは姉ドルノの部屋を訪れていた。


「それじゃ、相談を始めましょ」

「えぇ。ルルドお兄様はどうだったの?」

「『分かった』って。ただ、『まだ当分色々見て回る予定だから、具体的にどう手伝えば良いのか』とも言っていたわ」

「そうよね」

「ノルラの結婚も決まりそうだってことも先に伝えておいたわ。私の時もノルラの時も、一時的に戻ってきてくれるって」

「そうよね。どうせ、ルルドお兄様、船の仕事の関係でドルド国には戻ってこないといけないのだし」

「えぇ。どちらにしてもルルドお兄様には、困った時に相談することにして、先に私たちで考えを決めていきたいの」

「えぇ。まず、私は、お母様とお父様の結婚パーティもして良いと思ったの」

とノルラは言った。

姉ドルノも頷いた。

「えぇ。ただ、お母様の性格を考えると、『もう年だから恥ずかしい』なんて言うと思うの。だから・・・パーティの名称は考えた方が良いかも。でも、お母様とお父様の結婚記念のパーティをして差し上げるべきだと、私も思ったの」

姉妹で頷き合う。

ちなみに母ケーテルは自分の事は後回しに考える性格だ。


「それから、誰を仲間にするべきかも考えたの」

と姉ドルノは言った。

ノルラは尋ねた。

「ルルドお兄様と、ドルノお姉様だけじゃなくて?」

ちなみに兄ルルドの上に、もう一人兄、クロルがいるが、あまり交流が無い状態で駆け落ち結婚で家を出て行ってしまったので、他の兄弟ほどの親しみがノルラにはない。


「えぇ。アリア様も仲間になってくださると思うの。アリア様とノアおじさまは、周りの人にパーティをしてもらった側でしょう? きっと良いアドバイスを下さると思うの」

「確かに、そうね」


「あと、私はディアンくんには話すつもりよ。ノルラは、イーシスくんに話す?」

「そうね、話すことにするわ。実は今日、お母様たちの話をしようかなって思った時があったのだけど、今日はプロポーズしてくれた日だから、今日は止めたの」

「それは賢明な判断だと思うわ、ノルラ」

姉ドルノが顔をほころばせて褒めた。

ノルラも得意げに笑った。

「そうでしょう? だって記念日だもの。一生忘れないわ」

「そうね。ふふ」


姉妹で笑み合う。


そしてふと真顔に戻り、話を戻す。

「仲間のことだけど。お父様とお母様以外には皆に共有して良いと思うのよ。どう?」

との姉ドルノの意見に、ノルラも相槌を打つ。

「そうね。お父様とお母様だけには秘密ね」

「えぇ」

「パーティだけど、お母様にドレスを着てもらいたいの。お母様ってとてもスタイルが良いもの」

ノルラは母ケーテルを思い浮かべながら言った。母ケーテルは細身で姿勢が良い。


姉ドルノがノルラに言った。

「そうね。・・・ねぇ、ノルラ。ドレスの手配を、イツィエンカのお祖母様に頼めないかしら? ノルラが頼めば、お祖母様も手配してくださると思うのだけど」

「お祖母様に頼むの? 私たちで選ぶのが良いと思う」

ノルラは少し考えてみる。

「お祖母様って、私たちの事はとても可愛がってくださるけど、平民出身のお母様の事は好きでは無いご様子だもの」

「やっぱり、ノルラから頼んでも難しいかしら。イツェンカのドレスの方が思い出になるかしらと思ったのだけど。だとしたら、国には拘らず、クロルお兄様にドレスを頼むべきかしら。リュイスちゃんもいるから、良い品物を見つけてくれると思うの」


「うーん、そうね。でもドルノお姉様、私のドレスをこれから探す事になるもの。一緒にお母様とお父様の分も探せば良いと思うの」

「その方が良いかしら」

「私たちが選んだ方が喜んでくれると思うわ! ねぇ、ドルノお姉様、ドレス選びって楽しいのよ! ドルノお姉様は、全部ディアンくんにお任せにしただけでしょ」

「えぇ。全部してくれるって言うのだもの」

姉ドルノは結婚式のあれこれを、全面的にディアンに任せているのだ。

ノルラは理想を叶えるため、自分で色々決めたいので信じられない事だ。


「私のドレス選びの時にドルノお姉様もついてきて! そうしたら、私は私のを、ドルノお姉様はお母様のを選べるわ」

「そうね。そうしようかしら」

「どうせドルノお姉様、自分の結婚式の準備はほぼ終わっているんでしょう?」

「えぇ。だって、私は特に何もしなくて良いって言うのだもの」

姉ドルノが肩をすくめてみせた。


「ドルノお姉様には結婚式への理想とか憧れとか無かったの?」

とノルラは呆れる想いで聞いた。

姉ドルノが真顔で言った。

「あるわよ。とってもたくさん。言ったのよ。そうしたら、大丈夫、私に合う最高のものを用意する、任せて、って言ってくれたのだもの」


真顔の惚気だった。

ノルラも真顔になった。


姉ドルノとは仲良しだが、いろいろと違う。選んだ相手もだ。


***


あっというまに月日は流れた。

姉ドルノとディアンとの結婚式の日がやってきた。


ディアンの相棒、トラのぬいぐるみトピィが空の船を運転してくれて、関係者全員をディアンが選んだ教会に運んでくれた。

姉ドルノとディアンは船の中で着替えた。姉自身どんなドレスか初めて見るらしい。ディアンと勇者仲間からのプレゼントだそうだ。

ドレスや靴は、見たことも無い、光を放つような美しい布で出来ていた。それがまたドルノにとても似合っていた。

宝飾品はディアンが勇者の仕事の結果、譲り受ける事になったという美しい宝石のついたネックレスだった。


登場した時には、姉ドルノはもう泣きそうだった。用意されたものに感激しているのだ。

口々に皆で褒めたのであっという間に涙を落とした。

それをみんなが暖かく声をかけたり見守ったり。


そんな中でついた教会も、幻想的な場所にあった。

細かな水滴が宙にただよっている中に現れた、思いがけず優美な建物。

聖地と呼ばれる場所の一つらしい。お伽話、妖精の住まいのような世界だ。姉ドルノが憧れそうな場所。間違いなく喜ぶ、とディアンが考えた場所。


教会に入ると、ディアンの仲間、教会関係者が待っていて、祝福をくれた。

小鳥が舞い降りてきて、光がキラキラ差し込んだ。祝福をくれた人が凄くて、魔法でそうなるのだそうだ。

皆で祝いの声をかける。

姉ドルノがうれし泣きしたが美しく見えた。その隣で支えるディアンも嬉しそうで、頼もしくも見える。ディアンは見たことも無い柔らかく優しい表情を姉ドルノに見せていた。恋しているというのが良く分かる。


ノルラも感激してボロボロ泣いた。化粧が崩れちゃう、と思うのにもう止められなかった。

父も母も泣いていた。

周遊から一時帰国している兄ルルドも号泣している。アドミリード家で泣いていないのは兄クロルだけである。兄クロルは能天気に「ルルドまで泣くなよ」と笑っている。


だけど、ずっと片思いしていたのを皆知っているから、思った以上に感激してしまったのだ。


***


家に戻って、イーシスとノルラが中心になって作った料理を皆で食べた。

姉ドルノと交流のある、祖国イツィエンカの人たちが祝いに魔法を贈ってくれた。日時を連絡してあったので、その時間にこちらで展開するように時間をかけて準備してくれたものらしい。

夕暮れの空を、炎の鳥が生き物のように踊ってみせた。輝きを見え始めた星星を背景に、空を舞う。

最後に『おめでとうございます!』という向こうの国の言葉になって消えていった。


とても思い出深い日になった。


***


その半年後。

イーシスとノルラは結婚した。


イーシスとノルラは、町での結婚を選んだ。自分たちが主役なので、今回は自分たちで料理を準備するのが難しいからだ。

舌の肥えたお客様たちに聞いてオススメされた店でパーティだ。


パーティの中で、結婚の届け出を書く。

それを教会の人が取りに来てくれる。そしてみんなでその人についていく。町にある教会につく。

そこで届けが受理される。


町で結婚する人は多い。この教会には祝福に歌ってくれる合唱隊が常駐していて、イーシスとノルラのために大合唱してくれる。

そして、イーシスとノルラが、それを見てから、徐々に皆が。その歌に合わせて踊る。


楽しいお祝いだ。

店にくるお客さんも大勢来てくれていた。

大きな会場で着飾ったたくさんの人が笑顔で口々に祝福をくれる。


皆がノルラを素敵だと褒めてくれた。イーシスを素敵だと褒めてくれた。この日に合わせて精一杯着飾ったのだ。

実際、この日の主役だとノルラは思った。

間違いなく、輝かしい時間だと確信した。


最後に合唱隊の指揮者に誘導されて、壇上に。

ノルラとイーシスとで手を握り、皆に向かって一礼を。


終わりの時間だ。

とはいえこれでおしまいにはならない。


口々に誘われて他の店に移動する。

こっちにも寄って、と店からも声がかがる。

皆が特別扱いしてくれる。


いつの間にかノルラの頭には花のかんむりと綺麗なガラスの冠とが載っていて、イーシスの方もいつの間にかマントも装着されて、多くの宝飾品がつけられていた。

互いのありさまに思わず顔を見合わせ笑ってしまう。

話には聞いていたけれど実際体験するのはもちろん初めてで、愉快になる。


楽しく町中で過ごして、皆でやっと家に戻ったのは深夜になった頃だった。

もう笑い疲れてクタクタで、互いの顔を見合わせるだけでまた楽しかった。

ノルラ15歳、イーシス18歳のことだった。

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