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孤独な旅路  作者: alc
9/12

5話

俺達は北へと向かう。ジルさんいわく近いうちに王都で建国記念のパレードがあるので、その為に王都へと向かうそうだ。道中、いくつかの村を経由し、この森を抜ければいよいよ王都という時に盗賊に襲われた。


『動くんじゃねぇ!動けば殺す!』


10人程に荷馬車を囲まれた。男が叫ぶと数人が俺達に向かって弓をつがえる。どう見ても友好的じゃなさそうだ。


「倒しますか?」


「やれるのか……?」


俺はジルさんに黙って頷く。ムンブさんは荷台でいつでも飛び出せるように準備していた。

俺は伏せるようにジルさんに言い。御者台から飛び出した。


『抵抗する気か?やっちまえ!』


リーダー格の男が何か言うと、全員が俺にむかって攻撃してきた。弓を避け、弾き、切りかかってきた敵は剣ごと胴を切り裂いた。そうして残るはリーダー格の男だけになる。


『くそっ、こんなに強いなんて聞いてないぞ……!?』


男が逃げ出そうとしたので、左足を切り落とす。


『ぎゃぁぁ!クソっクソっ……許さねぇ!いつか絶対殺してやる!』


男は何事かわめき散らしているが無視して腕を縛り、最低限の治療をしてやる。こいつは王都の憲兵に突き出す。賞金が掛かっていれば儲かるし、そうでなくとも盗賊を容易く撃退出来る商人として評価が上がる。


ジルさんがやり手の商人なのがうかがえる。

そうして森を抜け、いよいよ王都が見えて来た。


「おぉっ!凄い……!」


とてつもなく高い外壁に、ゾウが10頭並んでも通れるんじゃないかと言う程に大きな門。しかも、外壁の向こうには更に高い城が見える。

その圧巻の光景に思わず声が出る。


「凄いだろう。俺も、初めて見た時は驚いた」


そう言うとジルさんは荷馬車を門へと向ける。建国記念日が近いせいか街に入る人の列が凄いことになっていた。時計が無いので正確な時間は分からないが3時間は待たされただろう。やっと街に入れた。


盗賊は街に入る時に引き渡した。残念ながら賞金首ではなかったようだ。街に入る時、仮面を着けた俺も怪しまれたが、仮面を外して見せると多少驚いていたが許可が出た。



○○○



「隊長、今の奴ら通しちゃって良かったんですか?かなり怪しい風貌でしたけど……」


「まぁな。だがあいつを連れてたあの商人はこの国でも1、2を争う豪商なんだよ。大方、現地で雇った新しい護衛ってとこだろう」


「……まぁ隊長がそう言うならいいんですけど。でももしあいつが問題を起こしても私は一切関係ないですからね!」


「おまっ、一緒に検査しただろうが!全く、可愛げのない部下だなぁ」



○○○



ジルさんの家は大きく、庭付きの屋敷だった。王都にこんな大きな屋敷を持てるなんてジルさんはかなり凄い人なんじゃないだろうか。屋敷では、ジルさんの家族と使用人達が出迎えてくれた。


「さぁ、今日はゆっくり、休んでくれ」


まだ昼なので街を少し見て回りたいと言うと、日が暮れるまでに戻ってくるなら構わないと許可が出た。屋敷を出てブラブラ街を歩いていると肉の焼けるいい匂いが漂ってきた。匂いに釣られて歩いていくと商店街の出店にたどり着いた。そこで焼いた肉の串刺しを買い、それを食べながら商店街をふらつく。


「あれは……、冒険者ギルドか」


証明書を発行してもらった時に見た冒険者ギルドの看板を見つけた。よし、入ってみよう。中は前に入った冒険者ギルドよりも広く、人も昼間にしては多かった。


俺がギルドに入った途端、視線が俺に集中するのが分かる。ダンジョンで幾度も感じた感覚だ。ここでも俺の格好について囁かれているのを感じる。

そんな視線や囁き声を無視して酒場やクエストボードを見て回る。


クエストボードは文字が読めない人にも分かるようにする為に絵も描かれていた。ゴブリンや薬草、スケルトンなんかのクエストもあった。でもあまり面白そうなのは無いな。


『よぉ、僕?仮面なんか着けて何してんだ〜?』


ガタイのいい男達5人が絡んできた。


「何言ってるかわからん」


そう言って男達から離れようとすると、1人の男がアース語で返してきた。


「そんな格好してお前、初心者だろう?俺達が冒険者ギルドの流儀ってやつを教えてやるよ」


「いや、遠慮しておく」


「あぁ?先輩の言う事はおとなしく聞いとこうや。おい、取り敢えず訓練場に行くぞ」


馴れ馴れしく俺の肩に腕を掛け諭すように男が言う。男の腕をぶった斬ってやりたくなったが、こんなところで問題を起こすのは良くない。それに訓練場はまだ見ていなかったので丁度良い。


そうして、ギルド内にある訓練場へと向かう事になった。何故かギルドの職員と他の冒険者まで一緒についてくる。


「俺達は訓練用の刃を潰した奴を使ってやるから、お前はその剣でいいぜ。訓練用とはいえ当たり所が悪ければ死ぬかも知れねぇけどな」


「じゃあ俺も素手でいい。この剣も当たり所が悪ければ死ぬかも知れないからね。それと目隠しもしようか?」


アイテムポーチから適当な布を取り出し目隠しをする。


「てめぇ……!」


俺が目隠しをすると男は躊躇なく襲い掛かってきた。頭を狙った横振りの攻撃だ。俺はそれをしゃがんで避け、その状態から飛び上がるように腹を殴った。男は腹を抑えて地面をのたうち回っている。


『嘘、だろ……?本当に目隠ししたまま勝っちまった……!』


『どうせ薄い布だったんだろ、くだらない』


『ちくしょう!リーダーをやられて黙ってられるか!やるぞ!』


『ちょっと!もう見てられません!これ以上するならギルドで処罰しますよ!』


『知るか!やっちまえ!』


一緒に付いて来ていたギルド職員が止めようとしてくれているようだが、男の仲間達が止まる様子はない。それどころか、腰に下げていた剣を抜く始末だ。勿論、刃は潰されていないやつだ。


俺は逆上して襲って来た奴らの攻撃を避け、同じように床から立てなくしてやった。目隠ししたままで。


「くそっ、なんで見えるんだ……!?」


「さぁね。さて、思いの外時間食ったし、帰るかな」


目隠しを外し、そのままギルドを出ようとすると、ギルドの職員に何か言われたが、言葉が分からないのでスルーして外へ出る。


全く、面倒なのに絡まれたもんだ。

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