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【第3話】伏竜の洞穴

フレンド? &はじめてのダンジョン回。

「どうして!? どうしてなの《夜王(ナイト)カイザー》様!!」

「ごめん……隣寝(リンネ)ちゃん。君に回復して貰うと、体の傷は癒えるけど……心に深い傷を負う」

「んだとコラ。騎士なのか王なのか皇帝なのかハッキリしろよ!! それとも帝王か!? 夜王帝王(やおうていおう)で韻踏んだつもりか!! 据え膳食わないとかお前は夜王童貞王(チェリー)で十分だ!!」


 うっす。《隣の寝取り男》あらため《隣寝(リンネ)》、ヒーラー頑張ってます。

 《ロリ未》が杖だけで頑張るには装備が辛く、ここ数日は資金と装備稼ぎのため初心者ダンジョンPTに潜っている所♪ この1stダンジョン【伏竜の洞穴ブライン・ドラグロット】ではドロップする指輪の価値は最低ランクだけど、持ってて損はありませんから♪


(しまった。ギーアの口癖が移って来た)


 自分自身の心の声に、吐き気を覚えている場合ではない! まずは心から可愛くなるんだ!! 心の底までキュートを極めろ!! ネカマ技術を上げなければ男も女も落とせねぇ。俺は何方のキャラの外見でも、逆性別のハンデを背負っているんだ。


「治療のどさくさに紛れてこの巨乳を押しつけられて喜ばないとか終わってるだろ!!」

「嬉しくないんだよ!! なんか堅いし!! 明らかにモンスター側の外見をしているよ君は! 君にターゲティング出来ないのはバグだと思う!」

「それじゃあ折衷案で、私の心をターゲティングしてみよう♪」


 煽りじゃないんだ。口説いているんだ。それなのに何故ウィンク一つで、格闘家は逃げ出した。そもそもナイトで格闘家ってどういうことだ。何一つ掠っていないにも程がある。


「くそっ……! 逃げられた!! 煽りゲーの癖になんだあのメンタルクソ雑魚へたれ共!」


 一人はログアウト。一人は集合地点で逃げ出した。嗚呼、またパーティ解散か。レベル的にはボスまで到達できるはずなのに、必ず途中でPTを解散されてしまう。俺は忘れていないぞ。俺の顔を見た途端、「チェンジ」とだけ言って消えた男の数を!! それはキャラチェンジじゃないですよね? この《隣寝(リンネ)》ちゃんに言ってますよね!?


「困りましたね」


 困ってるのは俺の方だよ。っていうかお前誰だよ。とうとう俺も病んでイマジナリーフレンドでも作ってしまったのか? 苛つきながら声の方を見やれば――……苦笑しているイケメンが!? そうだ、このダンジョンは四人が入場可能。パーティにはもう一人が存在していた。


「帰りましょうか? 僕は魔法職ですし、前衛なしではクリアは難しいかと」


 長髪で中性的な美青年。イケボだが中の人は女声優と見た。賛否両論あるが俺は好きだぞ。男と女……ダンジョンで二人きり――……!? これは仲を深める大チャンス!!


「ま、待ってください! 私近接の装備もあるから!!」


 やってて良かった女騎士!! 初期のジョブ装備だから防御力は心許ない。それでも前衛スキルはいくつか習得している。俺が慌てて装備を切り替えると、このイケメン……着替えを見ないよう自然な素振りで横を向く。


(し、紳士!! 隣寝を、女扱いしてくれている……だと!? 落ち着け、落ち着け。男にときめいてどうする!! 俺がときめかせないと結婚なんか出来ないんだぞ!?)


 ……でもこの技は使えるな。心のメモ帳に残しておこう。最悪の場合、俺はロリ未で妖怪攻略しに行きこのゲームをクリアしてやる。


「す、すみません! 着替え終わりました」

「良いんですよ。それじゃあ行ける所まで行ってみましょうか? ヒーラー程ではありませんが、少しなら僕も回復できますし」

「ありがとうございます」

「良いんですよ、僕は装備も間に合ってますし、ボスから出る魔術素材集めに来ただけなので」

「そ、それじゃあ素材の方はジルエットさんがどうぞ!」

「後から使うかもしれませんから、其方は山分けにしましょう?」


 ……優しい。まともなプレイヤーに出会い、俺の心はグラついた。


「隣寝さん、最近始めたんですか? お正月なのに頑張ってますね。冬休みだからかな、結構新規さん多くって嬉しいですよね」

「え、えっと……《ジルエット》さん?」


 プレイヤーネームを確認。魔道士の《ジルエット》。プレイヤーレベルは30。俺は15……彼に迷惑がかかってしまうが、クリア推奨レベル15の1stダンジョンならば二人で攻略可能だろう。魔導書を武器にしている彼は……雲のような白髪と夕焼けのように赤い瞳。外見色の明るさに黒の装束がよく目立つ。全体的な外見は、根暗な呪術師のようジメジメしているのに話してみると暗くない。そんなギャップが印象的だ。


「このゲーム、強い装備を手に入れてもあんまり意味がないんですよ。誕生日に入手できる装備が最強装備ですからね」


 王と魔王の無双理由はそれか。世間話をするように……雑魚敵を片付けながら、ジルエットは装備について丁寧に教えてくれた。


「その装備は一日で壊れてしまうんですけど、幾ら強い敵からドロップした装備でも絶対に勝てないんです。このゲーム、去年の四月からベータ版スタートしていて……また四月一日になったら誕生日装備が新装備に更新されるんですって」

「“嘘”みたいな強さ、ってことですか?」

「あはは! そうですね」


 優しい……こんな詰まらない話にも乗ってくれるなんて嫁に来い。多分、彼の中身は可愛い女の子だと思う。


「でもほら、王様以外の煽り勢と出会った時! 非誕生日プレイヤーが戦うことになったら強い方が良いじゃないですか? ダンジョン巡りをしている人の大半は、そういった方々ですよ」

「なるほど……真面目な方ばかりなんですね」


 そんな所に俺のようなネタキャラが乱入すれば、警戒されて当然か。名前とキャラクリについては身から出た錆……俺が悪いと解っていても腑に落ちない。あの大根農家め!

 歯軋りの止まない俺をジルエットはくすくす笑い、そんなことないですよと返してくれる。


「隣寝さんも真面目じゃないですか。ちゃんとみんなのこと回復してくれてましたよね、ありがとうございます」


 何この男!? 俺今別のゲームやってる? ジャンル変わった!? それとも外見バグ直った!? 思わず己の手を見るが、両手はごついままだった。


「隣寝さんと違って、生粋のダンジョン煽り勢もいますからね。装備見せびらかして煽って来たり――……日常茶飯事です」

「……そういうのを誕生日にぶっ潰せるってことですよね?」

「はい。面白いですよね!」

「はぁ……一年後か。私……キャラクリ時間掛かりすぎて、設定した誕生日の翌日から始めちゃったんです」

「それじゃあ……来年はとっても楽しめますね。我慢した分、楽しいですよきっと!」


 落ち込む俺に、ふわりと笑うジルエット。彼の笑顔を見ていると……心の傷が癒えるようだ。


「ジルエットさん……」

「僕で良ければいつでもダンジョン巡り付き合いますし、頑張りましょう!」

「ありがとうございます! ふ、フレンド送っても大丈夫ですか?」

「いいですね、その方が便利ですよー!」


 天使がこの地に舞い降りた。俺の誕生日には必ずこいつを女キャラにしてみせる! 感涙する俺に笑顔を絶やさないジルエット。きっと女キャラも可愛い!! 可愛くなくとも中身が同じなら天使に決まっている。結婚しよう。


「そうだ隣寝さん、他にキャラクターお持ちですか? 複数キャラを持っていれば、違う誕生日のキャラも持てますし、違う陣営にも行けますよ」


 単純に誕生日気分を味わいたいなら、そういう手段もある。悩ましい提案だが、そこで思い切り誕生日プレイを楽しんでしまえば、俺は今の苦行に耐えられるか解らない。


「クリスマスとかバレンタイン用キャラを持っている人も多いんですよー! 本当にその日が誕生日で……正直に登録した方が可哀想ですけどね」

「あ、あはは。確かに。ジルエットさんは複数キャラでプレイされてるんですか?」

「僕は1キャラですよ、その方が誕生日の実感がありますし」

「私と同じですね! 私必ずジルエットさんのお祝いに行きますから!! 今日のお礼に!!」

「僕は何もしてませんよ。でも……嬉しいです」


 雑談している間に俺のレベルも上がっていた。ドロップした装備で硬さも増したし、ボスまでもう目と鼻の先!


「ジルエットさん、ここのボスって今ならいけますよね!?」

「心が強く有れば、必ず」

「では行きましょう!」


 ダンジョン内で入手した薬草で、HPも回復出来た。MPもまだ残っている。二人分のステータスを確認し、問題なし。俺は剣を手に……ダンジョンの最奥へと踏み入れた! その先は……なんと、湖?


『……来たか、愚かな人間共よ』


 奴が言葉を発すると、水面が震えた。水底よりももっと下……地より這い出でるよう、低く耳障りな声がする。聞き取りにくいが聞き取れる。人にとって不快と感じさせる音。嗚呼、こいつは人ではないのだ。姿を見せる前から俺達にそう印象づける声。

 VRで見るボスは、本当に迫力がある。恐竜が生きていたらこんな感じなんだろう。

 ゲームだとは知っているのに、体中に汗が浮かんだ。まともにやり合ったら殺される。そんな恐怖を与える金色の目。黄金色の鱗に覆われたそいつは、背に大きな羽もある。ダンジョンの最終エリアは高さもあり、そこで待ち構えている竜が飛び回るには優に足る広さ。洞窟内を旋回し始めたドラゴンに、俺が目を奪われている内にも……ジルエットは詠唱を始めていた。


「氷の魔法で足場を作ります! 飛び移って!!」

「は、はい!!」


 弓でもあれば話は別だが、泳ぎながら戦うのは酷だ。攻略には魔法職必須だったのか。初期ダンジョンだからと甘く見た。次からは事前に攻略情報見て来ないと。俺は深く俺は反省をする。しかし、これがいけなかった。少し凹んだ表情の俺を見て、ドラゴンはターゲティングを俺に定めてしまう。


『そこの女騎士』

「な、なんだよ!」

『……お前、継続ログイン時間もう18時間越えてるな。良いのかそんなことで? 言わないけどさ、お前の登録した年だと年齢は。はーぁ…………お前何処住み? てか就活やってる? 家何処? 北海道? 東北? 日本海沿い? 雪とかどうよ。雪かきとかさぁ……手伝わなくて良いの? 泣いてるよー親御さん……』

「隣寝さん! 心を強く!! MPがゴリゴリ削られていますよ!?」

「ボスまで煽って来るって聞いてないんですけど!?」


 本当に何なんだこのゲームは。道すがら倒した敵は、普通のモンスターだったのに。

 このボスは、人のIPアドレス割り出して心を抉ってくる。余計な個人情報を晒される前に、倒さなければならないだろう。


「注意して下さい! この《カントリードラゴン》は、故郷の両親というプレイヤーの心の隙を狙います!! プレイヤー自ら強制ログアウトしたくなるリアルデバフを散蒔くので上京者からは“二度と戦いたくない”と評判のボスです!!」


 注意されても対策のしようがない。こんなボスと戦っていたら、並の煽りプレイヤー相手では腹も立たなくなるだろう。煽り勢はここでチャットかボイチャバトルで煽り経験値を得るのだろうか……?


『はぁ~……正月からゴロゴロゴロゴロネトゲ三昧。お前、生きていて楽しいのか? その年でまだお年玉貰ったのか? 下の階でかーちゃん泣いてるぞ』

「待って下さいジルエットさん!! 自宅勢にも刺さりますこいつ!!」


 俺は泣きながら斬りかかるも、カントリードラゴンは痛くも痒くもない様子。鱗が数枚剥ぎ取れただけ。レベル15で倒せる硬さですかねぇこれ!?


「……隣寝さん。これから僕が援護し相手の防御力を下げます!! カントリードラゴンに隙が生まれたら、そこをお願いします!!」

「わ、解りました!!」


 穏やかで優しいジルエットがこのクソ煽りドラゴンと口でバトルだと!? 俺は一度後退し、カントリードラゴンから距離を取る。


『お前は魔道士か……お前は――……お前は』

「お久しぶりですカントリードラゴン。お忘れですか? 生憎ですが、僕に両親は居ませんよ。此方は暖かく、快適なお正月です。ふふふ、そう……こんな風にっ!」


 光る魔導書! ジルエットの手から竜へと真っ直ぐ放たれるは火炎魔法。防御力低下のデバフ付き? 道中使って来た技よりもかなり大がかりな技だ。


「今です隣音さん!」

「う、うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 フレンドリーファイアするかは知らないが、装備が燃えたら「裸見ましたよね」って責任取って結婚して貰おうと思います!! 頑張れ隣寝!! 女の武器使っていこう!!

 俺はカントリードラゴンに飛びかかり、長剣を振り下ろす!! 炎で焼かれた竜はこんにゃくレベルに柔らかい。これまでの憂さを晴らすため、俺は剣を振るい続けた。


「お前だってダンジョン警備員だろうがぁあああああああ!! ちゃんとかーちゃんに仕送りしてんのかてめぇええええええええええええ!!!!」

『グァアアアアアアアアアアアアアア!!』

「冒険者返り討ちにした金どうしたぁああああ!! ここか!? ここか!? ここかぁああ!! ここに隠したんだろ!! 金を溶かして鱗コーティングしたんだろ!!」

「あの、隣音さん……その辺で。ゲーム規約で死体蹴りとか全然オッケーではありますけど、ちょっと可哀想ですし、あんまりやると呪いデバフが発生しますよ」


 ジルエットに止められて、ようやく俺は正気に戻る。


「す、……すみません」

「いいえ。最初のボス戦で、テンション上がってしまったんですよね。ふふふ。……あ」


 鎧は無事だが、露出した肌には火傷が目立つ。ドラゴン討伐に夢中で熱さや痛みは感じなかった。しかしこうしてリアルな患部を目にすると、肌がヒリつくように感じた。


「ごめんなさい……怪我させてしまいましたね。今薬を使いますね」


 ジルエットの治療によって、肌の火傷と違和感はあっという間に消え失せた。そうか、薬を振りかけるだけで回復できてしまうのか。お色気作戦はものの見事に失敗だ。


「ダンジョンは共闘ということで別陣営でも組めるんですが、別陣営にはFFしちゃうのが困りものですよね」

「え!? ……ジルエットさんって、勇者側のプレイヤーだったんですか!?」

「え? ……ああ、すみません。勇者っぽくない見た目でしたか?」


 申し訳なさそうにジルエットが眉尻を下げる。彼はしばらく困ったように唸っていたが、ドラゴンの残骸へとパタパタ走り、何やら拾って帰って来た。


「それでは怪我をさせてしまったお詫びと、騙してしまったお詫びに――……これをどうぞ」

「……ゆ、指輪!?」

「1stダンジョンなので一番安い指輪ですけど、ドロップしてたみたいです。隣寝さん、結婚クエスト進行中なんですよね? 何かに使えるかもしれませんし、使えなくても売り払えばお金になります」


 一瞬……求婚されるのかと思った。この顔で何をと思うだろうが、思ってしまったものは仕方が無い。


「そ、それなら山分けを! 復活30回分くらいあるんでしょう!?」

「僕は今のところ魔術研究一本ですし、死に覚えゲーなボスもいますから。差し上げますよ。初心者さんからレアドロップを奪うのは、ゲームの先輩としてどうかと思いますし」


 か、格好いい。ネカマをするのはこれが人生初だけど、男相手になんだこのときめきは!! 嗚呼、くそぉ。本当なら俺がこういうことを言って女の子をキャーキャー言わせたいのに!!

 俺は返事もそこそこに、挙動不審にお辞儀をするのが精一杯。出口のゲートを潜れば……ダンジョンの入り口まで一気に戻る。来た道を帰る必要がなくて本当に良かった。恥ずかしくてとてもじゃないが会話が続きそうになかったから。


「き、今日はありがとうございました!!」

「あはははは! 隣寝さん、ここで会った時から変わりすぎですよ」

「婚活暴走特急でした……すみません。結婚できないと、リアル知人から黒歴史バラ蒔かれそうになっていまして」

「そんな事情が? ……でしたらこのダンジョンとか良いかもしれません。僕もまだ行ったことがないのですが」


 軽い口調で事情を説明しても、親身になってくれるジルエット。彼がマップ上にマーカーを置いた場所を見てみると、推奨レベル30……3rdダンジョン【呪いの古城(アルトブルグーフ)】の名があった。


「何だか怖そうな所ですね」

「お化け屋敷みたいで楽しいらしいですよー! ヒーラー多めの方が良いダンジョンと聞きますから、……えい!」


 ダンジョンの説明の後、ジルエットは魔導書に浮かぶ魔方陣に片手を添えた。CC(キャラチェンジ)か? 彼を包む光が消えた頃、そこに立っていたのは――……


「此方では初めまして、ですね。女キャラ名は《ジュリエット》、ヒーラーです。よろしく隣寝さん?」


 ジルエットがそのまま女性になったような根暗美少女! ジルエットの時でも眩しかった笑顔に、陰鬱かつ可愛気な声が乗るともはや女神か……? 彼女の手をこのまま握り返すことに耐えきれず、俺もその場で《ロリ未》にチェンジ!!


「ろ、ロリ未亡人略してロリです!! よろしくお願いします!!」

「うわあ! ロリ未さん、そ、そそそう装備が! ぬ、脱げてます!!」


 握手をしているために、ジュリエットは真っ赤になって目を瞑る。

 俺が装備していたのは男女共通装備ではなく、キャラチェンジで女専用装備が脱げていた。やってしまった……ここまで助けてくれた恩人女神に俺は、出会い頭に露出狂紛いのことを!!

 慌てて装備を身に付けるも、脱出前より気まずい空気になってしまった。俺はもう駄目だ。死んでしまいたい。


「あ、あはは。びっくりしました。CC前は共通衣装に着替えなきゃ危ないですよ」

「すみません……」

「初心者さんは割とやりがちなあれ……ですよね! そ、そう気を落とさずに!」


 ジュリエットは励ましてくれるが、俺の心の傷は深かった。



「よう兄上。昨晩は遅くまで頑張ってたみたいだな。どうだ調子の方は?」


 翌朝……昼近くに目覚め、茶の間へ向かうと炬燵で妹が雑煮を食っていた。夕べは朝方までやりこんで、気絶するよう寝落ちした。体は冷えていたし変な体勢で寝たため体もあちこち凝っている。


「1stダンジョンクリアしてきた。あとフレンド一人出来た」

「そうか。高校で一人もフレンドが出来なかったお前に友達が……」


 お椀で口元は見えないが、雑煮を啜る妹の……その目は笑っているようだった。


「そういうこと言うなよ」

「良いではないか。他人に勧めたくなっただろう? 私は“リアル知人”を利用しての、ゲーム内結婚も認めるぞ?」


 口裏を合わせたら即日クリアも間違いない。救済措置を与えられたように聞こえるが、其方の方が俺にとってはエンドコンテンツレベル。


「……そりゃ、まだ難易度高ぇわ」


 俺は炬燵で寝転んで、カントリードラゴンの言葉を……なんとはなしに思い出していた。窓の外は……津々と雪が降り積もる。もう一眠りしたら。その時雪が止んでいたら。少しくらい手伝ってもいいかもしれない。


今回は煽り成分少なく物足りなかったら申し訳ありません。と思いましたがよく考えたらそこそこ煽っていました。感覚が麻痺したので、この辺で。

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