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【第1話】最悪の誕生日

 出オチである。しかしそれ故真理である。

 『最強Birthday』とはその名の通りプレイヤーの設定誕生日のみ……一年に一度だけクソチート俺強ぇ!! が楽しめるクソMMOゲーである。


①ハーレム、チート等……ラノベあるあるがとことん楽しめますが、別の日はお前が攻略される側になるので覚悟しておいて下さい。

②ゲーム開始時のキャラクタークリエイト画面では、予め男女どちらのプレイヤーキャラクターも作って頂きます。

③半径三百メートル以内に入ると誕生日プレイヤーが望む性別に自動で性転換させられるのでご注意下さい。

④あなたの誕生日には全力で祝ってもらえますが、他プレイヤーの誕生日は全力でもてなしましょう!

⑤ラノベに憧れて実際にオンゲ始めたけど、課金しても強くなれないとお嘆きのあなたに。

⑥モテたと思ったらネカマに騙されて貢がされていたというあなたに。


「……なんだこのクソゲーは」


 その日は最悪の一日だった。妹から送られて来たギフトゲームを開封すると、実に香ばしいゲームがインストールされたので試しにログインしたところ……そこに地獄は存在していた。


「良かったな。女の子にモテモテじゃないか」


 事前に渡されたメモとPC画面を交互に眺める。数分そうしていると、満足そうな妹が俺に話しかけてきた。


「いや、嬉しくないよね。詐欺だろ! 性別女キャラでおっさんみたいなキャラとかBBA MODで作るんじゃねぇ!!」

「いや、それMODじゃなくて公式だから」

「公式が凶器!! っていうかなんで!? イケメンに近付いたら普通、女体化したら美少女になると思うじゃん!? なんでみんな女の方は妖怪みたいなキャラ作ってんの!? 嫌がらせなの!? もてなす気ないの!? 煽りゲーなの!? 何? 実況配信向きなのこれ!?」

「洗礼じゃよ。新規を釣るスクショの時だけみんな美少女キャラ使うんじゃ……」

「メビウスの輪ver憎しみ!! 俺の憎悪がインフィニティ!! そういう新参いじめすっからみんなクソ煽りプレイヤーに成長するんだろうが!!」

「ちなみに奥さん……この課金18禁パックでムフフな展開もありますよ」

「誰が奥さんだ!! しかもそれグロの方での18禁ですよね!? アンチスレ立ててくる!!」

「諦めろ。このゲーム、アンチスレが本スレなんだ。本スレないから荒らせないぞ」

「お前なんでこんなゲーム、兄ちゃんに送ってきたの……? 俺のこと嫌いなの?」

「何を仰るのですか兄上!! 私めは、誕生日に友達も彼女もいないお前様のために、こうして贈り物をしてやったと言うのに」


 芝居がかった口調の妹。俺をおちょくって愉しんでいる。こいつも絶対煽りプレイヤーなんだろうな。最近リアルでの煽り能力も格段と進歩している。このクソゲーの所為か。これは有害ゲームオブザイヤーだろう。


「っていうか、誕生日じゃないから。俺の誕生日昨日だから12月23日だから! クリスマスイブだから今日」


 リアル妹にまで忘れられるってどういうこと? 昔からそうだけどさ。誕生パーティとクリスマス一緒にまとめてケーキ食べさせされた思い出ばかり。


「お前に俺の気持ちがわかるかよ。偽りの誕生日を設定して、それでも祝って貰えると思ったら……こんな煽りカーニバルに送り込まれた兄の気持ちが……」

「ああ、悪い。素で忘れていた。今日はお前の命日だったな」

「くっそ!! だから煽りプレイヤー多いのか!? リアルを楽しめない連中が、今日の主人公達に憎しみをぶつけに来ているのか!?」

「いや、いつもこんな感じ。いつもの3倍くらいは酷いけど」

「これで3倍程度なの!? やっと可愛い女の子とフラグ立ったと思ったら、牛の糞プレゼントされたんだけど!? 彼女候補から貰ったアイテムさ、重要アイテム化されてインベントリから捨てられないし売れないんですけど!?」

「哀れな。ゲーム内でまで臭うとは……」

「おいこら、なんでそこで鼻つまんだんですかリアルであなたっ……!? おかしいよね!? どこがチートなの!? 全っ然楽しくないんだけど!? これバグ!? バグでしょ!? 基本無料ゲーだから許してるけどこれで月額有料ゲーなら本社に火付けるぞ俺は!!」

「そう怒るな。ほら、1800円(税込)の18禁パッチもギフトで送ってやるから」

「そのまま現金(税別)貰った方が1800倍嬉しいわ!!」


 妹からの心許りのギフトに俺は涙した。こいつの誕生日には、俺はまともな物をやってるはずなのにこの扱いの酷さは何故なのか。訴えたら勝てませんか? 勝てそうな司法の国に移住も辞さない。金はないから無理だけど。


「なんか他に……まともな機能ないのか?」


 割と本気ですすり泣きを始めた俺に、からかい過ぎたかと同情の視線を注ぐ妹。いや、元凶はあなたですからね?


「誕生日プレイヤーだけ、戦闘&フィールドマップ専用スキルで“王化”が出来るし無敵になる。人間側なら王に、魔族側なら魔王に。王はスキル経験値引き継ぎのまま転生できるし、魔王は不死状態で街を破壊しまくれる。全ての国を最短いくらで滅ぼせるかって、魔王RTAも人気」

「ちょっと良いかも……よし! 妖怪回収勇者はもう懲り懲りだ。次は魔王でプレイをするぜ!! キャラデリして誕生日設定し直しだ!! 12月24日っと。……今度は女キャラで女の子を攻略するんだ!! 百合を楽しむ!!」

「……ちっ、この短時間でそこに気付くとは。我が兄ながらやりおるわ」

「ははははは!! 綺麗なものだけ見たい者が、よもや妖怪PCで近付いて来るわけがない!! 気合い入れて俺も美少女キャラ作ってやる!! イケメン妖怪の逆法則で、美少女おっさんの法則だ! 俺を性転換させてイケメンとの絡みを期待した美少女プレイヤーを俺のおっさんが蹂躙してくれるわ!!」

「開始一時間で深淵まで染まりおって…………」


 俺の上がり下がり激しいテンションに、今度は冷ややかな視線を送られた。


「なんだよ。人のことだけ悪人みたいに言いやがって。大体お前はどうなんだ? ……お前は普段からあんな煽り有害プレイばかりしてるのか?」

「いや? その日の気分によってだな。丹精込めて育てた野菜がBirthday魔王によって為す術もなく蹂躙されていく農家のおっちゃんRPGとかサブ垢でやってる。“オラの大根がぁああああああ!!”的な台詞マクロも20種類程組んでおる」

「……楽しいんですかそれは」

「ほれ」

「うわ!?」


 妹の手によって、俺は視界を遮られる。頭部に何かを装着された? 混乱する内、視界が開けて行く。どうやら此方が本物の、誕生日プレゼントであるようだ。


「最新のVRゴーグルだ。没入感を楽しんで来い」



(はぁあああ!? す、すげぇ!!)


 これが最新技術? 俺が持っているゴーグルとは段違いだ。本当に、ゲームの中に入ったようじゃないか。街の窓に映る姿も、俺が設定した通りの美少女。

みんな大好き女騎士~敢えてのロリエルフ巨乳添え~いや、これはまずいな。正直自分でも股間に来る。一つ一つ確認する内、大事なことに気が付いた。


(あれ? おかしいな。設定した体型とちょっと違うような)


 胸はもっと盛ったはずだ。一番でかく設定したのに断崖絶壁だ。これはこれで可愛いが……


「お? そこの君可愛いね。俺今日誕生日なんだけど……」


 誕生日プレイヤー同士が出会ったらどうなるのだろう? 男の声に振り返ると、相手は一目散に逃げていった。


「ぎゃああああああああああああああ!! 妖怪ぃいいいいいいいいいいいい!!!!」

「誰が妖怪だよ、こんな美少女捕まえて――……ん?」


 男へ伸ばした腕が太い。腕毛と指毛が生えている。恐る恐る窓ガラスを見てみると、初期衣装だろうか? セクシーな鎧に身を包んだ…………おっさんがいた。あー――……これは通行人達、個人チャットでひそひそ噂してるんだろうな。だって変態だものこんなの。スクショ拡散やめてくださいと、エリアチャットで叫ぶことしか俺には出来ない。


(駄目だ…………こんな外見では、俺の夢に見た甘々百合プレイが!!)


 だって汚いもの。小汚いおっさんでクリエイトした男が、なんでか女キャラに設定されているんだもの。誰が寝るんだこんなキャラ。おっさんが太っているから胸があるように見え、本当に女キャラの胸なのに何故か嬉しくない。糞コラ並のセクシー衣装。多分上のビキニアーマー脱いだって、土俵で見慣れてますとしか感想もらえないよなぁ。

 ログアウトする気力すらなくし、呆然と佇む俺に個人チャットを送って来た者が居る。随分なイケメンだ。白銀の鎧に爽やかな笑顔……正統派美青年騎士。女キャラ版はくっ殺系美少女騎士であることを信じたい。


「ああ、それはバグだな」

「バグ!?」

「クリエイトした男女の性別が入れ替わる不具合。お前はおっさんみたいな女キャラと、美少女みたいな男キャラを登録した状態だ」

「嘘だろ!? 誕生日プレイヤーにそんなことするの!?」


 彼の言う通り、不具合はまだあった。三百メートル以内なのに、男のままだ。俺は、相手が男になる設定はしていないのに。


「いや、設定誕生日じゃないだろう? 日付を確認すると良い」

「……あ! もう25日かよ!?」


 そもそも誕生日プレイヤー同士では、エンカウント性転換は発生しないと良PCは言う。なるほど時計を確認すると、日をまたいでいた。馬鹿か俺は。キャラクリ中に日付が変わっていたのに気付かなかった。


「何なんだよちくしょう!! 俺の最高の誕生日が約束された世界だったんじゃないのかよぉおおお!! このバグなんだよ! アーリーアクセスにも程があんだろ!? くそっ!! もう一回登録し直しだ!!」

「……可愛い妹の、なけなしの小遣いを。1800円(税込)をドブに捨てる気か貴様ぁあああああ!!」


 良プレイヤーかと思えばお前かよ! 俺の胸ぐらを掴んだ騎士は妹だった。


「折角面白いことになったんだ。修正による修正で、レアなバグなんだ。希少だぞ? 動画化したら絶対伸びる!! 面白いからこのままプレイしろ。さもなくばお前の黒歴史をネットの海にばらまくぞ兄上? キャラデリ垢デリアンインストのいずれかで、貴様も社会的にデリートされる」

「鬼!! 悪魔!! お前が魔王だ!!」

「まぁ喜べ。来年の誕生日までに、男か女……どちらかのキャラで結婚までこぎ着けたら解放してやるさ」


 斯くして俺は……、美少女風少年か、中年モブおっさん風女としての生きることになったのだ。


他の連載が血祭りばかりで、息抜きでギャグを書きたくなりました。

需要がありそうだったら続き頑張ります。突発の思いつきなのであちこち誤字ってました。修正しますねありがとうございます!


【主人公の誕生日】12/23(妹には忘れられる)

→プレイ開始12/24(誕生日プレイしたいので24日で登録する)

→キャラデリ&再プレイ12/25(チートできるのはまた来年だねお兄ちゃん!)


ややこしくてすみません……。



作業用BGMにな。10年以上前のオンゲ題材作品曲聞いていた所為なんだよ。私は悪くないんだ。

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