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STORY2 ミキト・イツキ

 中学校屋上から開いた突然奇怪現象・巨大な闇の穴。

 タケキ・チクマとミキト・イツキの中学2年生両名は、異世界へと吸引されていった。いわゆる『召喚』という現象に巻き込まれてしまったのだ。


 ミキト・イツキは酷く頭部を地面に叩かれたのか、微妙に頭の脇がジンと傷んだ。


「患部は触れちゃいかん。この消毒に効く植物の葉を薬にして帯で巻きつけるから、しばし我慢するがいい」


 20、30代くらいのゴツい筋肉青年が注意しながら治癒してくれたのだ。命には別状ない。種族が原始時代の衣服イメージが強いのか、特撮映画の撮影とは違うと判断出来た。


「ここは、地球? 何か違うような?」

「セルゼイスの里だ。ここはアースの中でも不法滞在者の住処にもってこいの土地。お前、どうやらアウトレースという異空間人種だな。見ていれば判るものさ」

「異空間人種? じゃあ、ココは異世界というのか?」


 ミキトは余りの驚愕で周囲をくまなく探検したい衝動に駆られた。

 いわゆる好奇心旺盛というやつだ。

 アウトレースならばこの不法移民に相応しい土地の居住を許す代わりの身売り対象者を差し出せば見逃せてもらえるし、生活に困らぬ賃金も支給される。

 この少年を売れば金になると思い、イクスパーム適正会場に連行しだした青年。

 半ば強引に知らない施設に送られたと感じたミキトは、そこが身売り取引場とは知らないから涼しい顔をしていられる。


「ほうら、お前はここでこれからを過ごす。達者でな」

「えっ、俺……引き渡されたのか?」


 施設関係者の男が来ては、筋肉青年と取引が始まった。


「アウトレースだ。いくらで売れる?」

「いくらも何も、適正試験という戦闘行為でレベルが上がれば値が付く。それによって相場が変わるものさ」

少年(こいつ)は値が付くレアものと思える。間違いない」

「だといいがな。その審査は奥の係が決める。おいらではないんだ。判るか?」

「審査係の目が腐ってなければいいが」


 どうも胡散臭い取引行為だ。


 奥にいる係は原始時代を思わす衣装とは全く別の次元人種だ。まるで軍人だと匂わせる悪意の塊らしい組織的な存在だ。ミキトを見るなり、冷笑を浮かべた。


「威勢がよさそうな小童(こわっぱ)だな。試験し甲斐(がい)があるものよ」

「不法移民の男が連れたアウトレースとかいうそうですが」

「驚いた。アウトレース? これは、イクスパームの可能性がありそうだ」

「では、試験用ビーストを開放しましょうか?」

「開放したまえ。したなら、早速戦わせよ」

「かしこまりました。おい、そこ開放したら戦闘開始だ」


 会場の裏方が生返事するように応答しだした。


「開放〜‼ させました‼ ええと、戦闘を開始しろ〜」


 いかにやる気ないやり取りだった。


 鉄格子を思わす柵からそのどす黒い特撮映画でお馴染みの怪獣らしい生物が開放された。つまりはコイツと戦って勝てというやつか?

 間違いなくド素人が相手にしたら即座に()られてしまう。

 ミキトとビーストの対峙はお互いが生きるか死ぬかの環境に変わった。

 殺られる。

 体が震えて見動き出来ない。

 しかし、立ち止まれば食われる。

 なら、どうする?

 ミキトは考えるのはやめた。まずは、逃げる事が勝機に導くと思ったから。

 敵を引き連れるのは経験がないから、勘を宛てにして攻撃から回避する。

 逃げる間に考える。

 その時間はそんなに長くはない。闘技場らしい空間を格闘技のリングに例えれば相手戦法は確かに見出せる。

 ド素人ならではの勘だ。簡単に殺られるのはイヤだからだ。

 逃げていくたびにビーストの猛攻撃に弱点が見えた。

 大外から回り込んで撃つ。

 それの繰り返しだ。内角に間合い詰めて懐に飛び込むのは自殺行為に過ぎない。非武装なので懐に入れても袋小路だ。

 ミキトは考えに考え抜いた。

 袋小路なら、猛攻撃の威力を利用するしかないと。

 少年なりに思いついた作戦は、目標を自分の尾を噛み付いた蛇の応用だ。後は運任せに過ぎないだろう。

 間合い詰めは順調にいった。

 そして、ビーストの両前脚が少年に狙いを定めて来た。

 ビーストの胴体を飛び込み台にして、バネの力を信じて高く飛んだのだ。

 下手をすれば上空の先の顔面に届いて食われる事も考えていた。しかし、ビーストの即断能力はそこまで追いつかず、食われなく済んだ。

 そればかりか、両前脚の奇襲攻撃は自身の腸をえぐりだし、自傷行為で、自滅してしまったのだった。


 高くジャンプした時にかかった重力で地面に頭から直撃したが、幸いにも先程の頭部損傷箇所には接触なく、軽傷で済んだという。

 もちろん、ミキトの勝利である。そのレベルからして筋肉青年にたんまりとチップが支給されたのは言うまでもない。


 ミキト少年が次に目覚めたのは、会場施設内の医療室だった。

 見舞っていたのは審査係の男が一人で、再度就寝に入り次回に起床した際は、軍隊らしからぬ機関に身柄を移送させられていた。


「何だ⁉ コレってまさか、軍事施設か何かか?」

「さよう。あなた様はこれより、レベル・ブラドレイドに昇格いたしました。ブラドレイドとは、いわばご自身のパームモーターを所有出来る権限の階級でございます」

「レベルだとか権限とかって偉く出世したというのか? あんな恐ろしいバケモノを退治しただけで……か?」


 ミキト・イツキは友人タケキ・チクマと生き別れした記憶が抜け落ちていた。

 もう忘れてて何もかも地球の記憶なんて未練もないまま、アナザーアース軍の組織に馴染んでいったのだった。 


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