【一話】 踏み出す一歩
こんにちは澪ノ栞です。この作品は月1,2の更新ペースでいきたいと思います。
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辺りは真っ暗、けどどこかで呼ばれているような気もした。
なんて言っているのだろうか。うまく聞き取ることが出来ない。
「わた・・・た・・・けて・・・おねが・・・」
だんだん声が小さくなり、聞こえなくなりかけている。
(ねぇ!なんて言ってるの?ねぇ!教えてよ、うまく聞こえないよ。まっ・・・)
一体何と言いたかったのか今の僕には分からないがわかるような気もした。
突然、視界の真ん中から一筋の光が僕に襲い掛かってくる。
「・・・って・・・!!」
そう。気づいたら僕は木に寄り添って座っていた。なぜ自分がこんなところにいるのかは覚えていない。
だけど鮮明に覚えているのはこの風景、気持ちよさそうに飛翔してるドラゴン、空高くに浮かぶ謎の島、視界にはとらえきれないほどの大きなお城、水龍が元気に遊泳してる湖、振り向くと後ろには、今にも噴火しそうな大きな火山。
僕が個人で開発していたゲーム「ワンダーランドトライブクレスト」に何だか似ている気がした。
このいまの現状が理解できるわけもなく僕は混乱していたが、ふと我に返ると思考が動き出した。
「・・・っ!あっそうだ!」
(確か昨日はベータ版が完成して・・・!!)
いざ、思い出そうとすると頭が疼きだす。
それと同じタイミングで吐き気と胸苦しさが襲い掛かる。
「う、頭がぁ!・・・はぁ・・はぁ・・はぁ!!」
もう、どうすることもできないのかと諦めかけた。しばらくすると、痛みも引き、動けるまで回復した。刹那、空の上から白い軌跡が見えて、目の前に突如として現れた。そこには一人の少女がいた。NPCだろうか、否、彼女は僕のAIだ。
名前は、ナナ。僕が小さい頃、作成した人工知能。見た目は普通の女子高生だが裏の姿は忍者をしている。これは僕の趣味でもある。
ナナは、足を引きずりながらもこちらに歩いてくる。だけど、体に傷を負っているせいで僕の近くまで来る途中で力尽きたのか、倒れてしまった。
すぐ、僕は彼女の方に駆け寄ると彼女は微笑み僕に話しかける。
「マ、マスター。ウイルスの侵入を私は許してしまったみたいだ。す、すまない。だがこれだけは言わないといけないと思い、参上した。」
「なにも言うな・・・なにも・・言うなよ・・」
僕は一気にこみ上げてくる気持ちを抑えるので手一杯だった。
彼女も半分泣きながら言いたそうにしているのを見て僕は言った。
「時間がないんだろ?」
「えぇその通りでござるよ」
このゲームには自己修復プログラムを積んでいる、だからバグが起きても、しばらくすると正常に戻るのだ。だからAIでも長居はできないということか。と最初は思っていたのだが全然違った。
ナナの”体”が限界という意味だったのだ。
震える手でナナはポーチから巻物を取り出してこう言った。
「マスターは現実世界に帰るために、このゲームの最終目標の一つ、種族の頂点にならなければいけない。そして、五種族のなかで一番強くならないといけない。とのことだ」
僕も半分泣きながら聞いていたから、理解が出来なかった。
「ナナ、つまりこの世界で一番強くなればいいんだよな?」
「そうですね・・ゴホッゴホッ」
咳と同時に口から血が出てきた。危ない状況であるのは間違いない。ナナもだいぶ弱ってきているのが目に見るように分かる。
「おい、しっかりしろ。大丈夫か?!」
「心配ないでござるよ」
「この世界には五種族存在するのでござる。
一つは、人間。二つは、獣人。三つは、竜人。四つは、魔人。そして最後に神。
いま、マスターは人間が神に勝てるのか、とか思いましたね?。そのためのシステムじゃないですか。”人間は一人まで全種族の中から選べる”と。」
微笑みながら言っているナナとはうらはら、僕は泣きながらナナがした行為を悟った。
(そんなルールが追加されていると言うことはおそらく、ナナが”システム改変”を行ったのだろう。これならナナがボロボロになるのも分かる。)
最強のプレイヤーが決戦を行う地でもある浮遊島を僕は見上げた。
「そろそろ時間切れのようですね。マスター」
ナナの体が光りだして、光の粒子となり空に昇っていく。
「そんな・・・まだ聞きたいことがたくさんあるのに!」
「それでは失礼するでござるよ。マスター。お元気で・・・」
ナナは消える瞬間まで微笑み続けていた。
「ナナがいないなんて・・・一体僕はどうしたらいいんだろう。」
なんて、空を見上げていると、ひらひらと紙が落ちてくる。風で飛ばされこちらに飛んでくる。
巻物の端っこの切れ端だった。
「・・!!これはナナの!」
そこには、ナナの字でこう書かれていた。
「始まりを制する者は終わりを制するでござる」
この意味を理解するのに僕はあまり時間がかからなかった。ナナの言いたいことが頭に直接話しかけられてるみたいな感じだったから。
「そうか!”リデル”か!」
意味を理解した僕はこのゲーム最大の都市、始まりの都市”リデル”に向かうことにした。
運よく”リデル”に近い位置から冒険をできる距離だったため、とりあえずは、その道中にある”スリア”で一晩過ごすことに決めた。
そして、ここから僕の冒険が始まるのだった。
見て頂きありがとうございます。
直した方がいい点ありましたら、感想の方に書いていただけるとありがたいです。
それでは、次の更新までお待ちください。