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第1話 序章

 かつて、この世界には魔王と呼ばれる男がいた。時空を歪め、万象を破壊し、災厄をもたらすと噂された最強の男。そんな強大な力を宿す怪物を討ち滅ぼそうと何人もの強者が戦いを挑むが、力の差は歴然で誰もその魔王に敵う者などいなかった。

 やがて世界には魔物がはびこり、闇に閉ざされた地上で人々は世界の終焉を悟った。


 ところがある日異変が起きた。

 空を覆っていた曇天が晴れ、瘴気が消え失せ、あれだけ我が物顔で地上を闊歩かっぽしていた魔王の眷属たちが、その日を境に突然姿を消したのだ。

 いったいどういうことなのか、状況がつかめず動揺する人々であったが、誰かが「魔王が滅んだんだ!」と叫ぶとそれが市民の間に浸透し、人々は歓声を上げた。


 こうして長きに渡り魔王軍に怯えていた人間たちは、なんかよく分からないうちに平和を取り戻したのであった。


 それから三百年。人々はこれといった脅威に怯えることもなく、徐々に発展を遂げて安穏とした日々を過ごし、いつしか魔王は夢物語の存在として人間たちの記憶から忘れ去れていった。


 しかし魔王が行方をくらませたのと同時に、各地である奇妙な噂が流れ始める。

 人気のない山道や、暗い森、夜の墓場などで道に迷うと、その者の前に不気味な洋館が現れるのだという。それは道に迷った人にしか見えず、その館に興味本位で入ったが最後、その人物は二度と元の場所に帰れないのだと、まことしやかにささやかれていた。

 よくある都市伝説の類であろう。実際森や山に迷い込んで消息を絶つ者はいるが、大抵は土地勘のない旅人や身内のいない浮浪者であるため、噂の確証にはなり得ない。そもそも、その館を見た者は帰ってこれないのだから証言を訊くことさえできない。

 やはり噂の類であろう。

人々は半信半疑、面白半物で人から人へと語り聞かせていく。本気で信じる者など誰もいない。しかしそれが本当なら、もしその館が実在するとしたら――彼らはそれでも笑っていられるだろうか。


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