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最初の出会い

 森の中にいる事を自覚してからほんの少しすると、突然なんだか体が楽になったような感覚を覚え、もしかして、と思った私は、それまでじっとしていた体を試しに動かしてみる事にした。

 まずは両の手のひらを握っては開きを繰り返し、次に両腕を持ち上げたり下ろしたりしてみる。

 最後に両足を膝から曲げたり伸ばしたりして問題なく動く事を確認すると、私はゆっくりと上半身を起こした。


「さて、急いで人の住む村か街を見つけなきゃね。近いといいけど。……でもまずは。ステータス!」


 体が動く事の次に確認しておくべき事を確認しておくべく、私はその言葉を口にした。

 すると、目の前にあの透明の板が出現した。


「よし! さてさて?」


 ステータス出現の成功に大きく頷くと、好奇心に目を輝かせ、私はそれを隅々までまじまじと見つめた。


 名前 ツキハ・ホシカワ

 年齢 15

 職業 無職

 レベル 1

 体力  13

 魔力  14

 知力  14

 素早さ 13

 運   17

 属性  光、水

 特殊能力:常に富豪


「む、無職……。向こうでは学生というものがあっても、この世界では無職になるんだ……。なんか、ショック……」


 とりあえず村か街に着いたら速効で職に就こう!

 そう固く心に決めた私だった。

 けれど、それにしても。


「特殊能力の、常に富豪って何だろう?」


 これが、あの男性が言ってた、即役に立つ能力っていうものだろうか?

 でも、その内容がわからない……。


「富豪って事は、お金に関係があるんだよね……? でも私、この世界のお金なんて今はまだ持ってないしなぁ? って……ん?」


 首を傾げながら自分の体を見てみると、身に纏う服装がさっきまでと変わっていた。

 茶色のポンチョに白のチュニック、黒いズボンと茶色のブーツ。

 そして、腰にはベルトに通ったオレンジ色のポーチがあった。

 ポーチを開けると桃色の布の袋があって、その中には色の違う硬貨がたくさん入っている。

 ……もしかしてこれが、この世界のお金なんだろうか?

 でも、どれが幾らなんだか、全然額がわからない……。

 これも早急に知る必要があるなあ。

 そう思いながらポーチを閉め、立ち上がって辺りを見回す。

 すると、森の出口はすぐに見つかった。

 そちらへ向かって歩き出してしばらくすると、街道らしき道に出る。

 そして再び辺りを見回すと、遠くに塀らしきものが広がっているのが見えた。

 良かった、あそこに村か街がありそうだ。

 どうやらあの男性は、親切にも人の住む場所の近くに私を送り出してくれたらしい。

 とりあえずあそこでこの世界の常識について学び、レヴィを探しに旅立つ準備をしなくては。

 そう思って、今度は塀に向かって歩き出すと、ふいに後ろから動物の足音と車輪が回る音が聞こえてきた。

 その音が段々大きくなってくる事から、こちらに近づいてきているらしいと判断した私は、道の端へと移動する。

 振り向くと、予想通り馬車が近づいてきていた。

 側面に何かの紋章らしきものを刻んだその馬車はやがて私の横を通り過ぎ、少し進んだ所で何故か急に止まった。

 何事かと足を止め、ぼんやり見ていると御者らしき人が降りて、扉を開ける。


「っ!」


 次いで降りてきた人物を目にすると、私は目を見開いて息を飲んだ。

 灰色の髪に、その上に生えている同色の耳と、お尻に揺れるふさふさの尻尾の少年。

 まごうことなき、獣人である。

 その獣人の少年は地面に足をつけると馬車へと振り返り、手を差し出した。

 そして、その手に華奢な手が添えられると、今度はふわふわした綺麗な金の髪をした少女が降りてきた。

 馬車から降りた少女と少年はこちらを向き、数秒足を止める。

 けれどやがて、少女が少年に何事かを言ったように見えた次の瞬間、こちらに向かって歩いてきた。

 獣人の少年の手にその手を乗せたまま歩いてくる少女。

 物語の中によくある、貴婦人を従者がエスコートするようなその構図を直に目にした私は、動く事も忘れ、ぽーっとその光景に見惚れてしまっていた。

 しかし、その少女の顔が見える距離まで近づくと、私は再び驚きに息を飲んだ。

 金髪碧眼に、華奢な体型こそ違えど、その顔は、私がいつも鏡で見ていたそれと、全く同じだったのだ。

 私の数歩手前で立ち止まった少女と少年は、再び数秒こちらをじっと見つめる。

 やがて、ふいに少女が一歩、前へと進み出た。


「あの……初めてお会いする方に、不躾にこのような事を申し上げるのは失礼だとは思うのですが……けれど、それを承知の上で、言わせて戴きます。……お願いします、どうか、どうか……わたくしをお助け戴けないでしょうか……!!」


 そして少女は、見るからに悲壮な表情で、そう言った。

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