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今後の方針

 さて、ロライアン様の領地へ移り住んだ後どうするか、何をするか、やっぱり漠然とではなくきちんと決めておかないと。

 それには、直接ロライアン様の領地へ行って見て回れれば一番いいんだけれど、現状それは難しい。

 またレイディアさんの婚約者さんがここへ来て、数日お泊まりするからその間何処かへ行っててと言われれば叶うけど……そう都合良くはいかないだろうし。

 となれば、直接ロライアン様に聞いてみるしかない。


「あの、ロライアン様。ロライアン様の領地はどのような所なんですの? 何か、ビシャルゼの領地経営に参考になるような話はありますかしら? 是非お聞きしておきたいのですが」

「おや。我が領地の事に興味をもって戴けるとは、嬉しいですね。我が領地には3つの街と幾つかの村があり、北東は山に、南は海に囲まれています。故にその近隣は狩猟や漁で獲れた獲物が民の主な収入となっていますね。平野では農業や、山の狩猟で獲れた獲物の皮などを使った加工品を作る産業もあります。活気のある良い領地だと自負しておりますよ」

「住むには良いところだぜ、レイディア嬢。何の心配もいらねぇ。な、セレヴィン?」

「ああ、そうだな」

「まあ、そうですのね!」

「こらこら、二人とも。それは言い過ぎだよ。……残念ながら、"何の心配もいらない"わけではないんだ、レイディア嬢。どれだけ善政を敷いていても、天災や、病魔には、無力に等しい。備蓄や医師の確保に務めていても、領民全員に満足には行き渡らない。どうしたって取りこぼしは出て、涙を流す民を出してしまう……」

「ロライアン様……! それは、どこでだって一緒です! ロライアン様は精一杯やって下さっています! それは領民皆が認めてる!」

「シグルトの言う通りです。……実際、俺もシグルトも、ロライアン様に救われたんですから。ロライアン様が拾って下さらなければ、どこまで明るい日の下を歩けていたかわからないんですから」

「……明るい、日の下……?」

「……ああ。……俺もシグルトも、事情があって親がいないからな。そんな子供が真っ当な職に就くのは、結構難しいんだ」

「事情……」


 その言葉に、昔会ったレヴィの姿を思い出す。

 声を出す事ができない、痩せた男の子。

 あれはもしかして、そんな事情のせい、だった……?


「ありがとう、二人とも。だが……ね。……私が引き取るにも限界はあるし、領に来る、国の認定証を持たない奴隷商の取り締まりも……漏れなど出してはいけないのに、狡猾に潜り抜けられ、漏れてしまう……悔しくてならないよ」

「え? ……国の、認定証? 奴隷商に、ですか……??」

「……おや? ……言っていなかったかい? そういった職業も、必要悪として、認定証を出しているんだ。本来、ないほうがいい職業だが……綺麗事だけでは、政は回らないからね。せめて、比較的にでも良心的な者に与えているんだよ。貧しい者達への、最後の救済処置としてね」

「まあ……! そうなのですね……」

「……ロライアン様に拾われなければ、俺達も買われていたろうな」

「そうだな。……その場合俺はきっと、認定証を持たない非合法な商人に売られていただろう。そっちのほうが、対価に払われる金は多いと聞くから。……そうなっていたら、今、どんな生き方をしていたろうな」

「セレヴィンさん……」


 セレヴィンさんのその言葉を最後に、部屋の中はにわかに静まり返った。

 三人が三人とも、やりきれなさそうな複雑な表情を浮かべている。

 私も、昔のレヴィの姿を思えば、胸に何とも言えない気持ちが沸き上がってくる。

 …………奴隷商、かあ。

 認定証って……私でも貰えるのかな?

 どういう基準で貰えるものなんだろう。

 私なら、お金はいっぱいあるし、対価に渡す資金には困らない。

 まあ、そうして買った子供達をどこに売ったらいいのかなんてわからないし、万一ブラックな所に売ってしまったら怖いから、奴隷商やるなら自分で預かる感じ……??

 やっぱりお金はいっぱいあるから、それでも問題はないよね。

 十分全員養えるし。

 となると、住む家はかなりの大きさがいる。

 引き取った子供達が生活に不満を抱えないように考える必要もある。

 曲がりなりにも"買われる"という手段で引き取った子供達が、そういった事を口にできはしないだろうし、それでストレスを溜めちゃったら大変だし。

 う~ん、ここはレヴィさんに相談して、そのレヴィさんを通じてロライアン様にも協力をして貰わないと、かなあ?

 とにかく色々考えてみないと!

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