序章~始まり~
染井五郎は途方に暮れていた。
「どうしたらいいんだ」
思わず頭を抱えるしかない、こんな状況では。
周囲は木々に囲まれ、人の気配も全く感じられない。
「ここは何所なんだ?何でこんな場所に居るんだ」
そう自問しても時間が過ぎるだけだったが、今の状況では他に出来ることがなかった。
既に携帯は使えるか試したし、自分が持っていた使えそうな物は探したが殆ど無い状態だった。
今まで見たことも、味わった事もない現状にただ呆然とするしかない。
昨日までは自分がこんな事になるなんて思ってすらいなかったのだから。
「こんな現実味が無い状況に置かれて、どうしたらいいんだ」
「昨日は確かに会社から帰って、ネットで友人と遊んで寝たはずなんだが」
五郎はそう呟きながら昨日の事を思い返していた、要は現実逃避に近いものだった。
3月12日。
朝の目覚ましに誘われて、今日も一日が始まる。
「うーん、眠い」
まだ覚醒しきれてない頭をモーニングコーヒーで起こしつつ、スーツを着込む。
まだ時間に余裕があるとはいえ、通勤ラッシュに捕まってはたまらないので早めに出るのが日課だ。
朝が強い方ではないので若干の眠気を抱えながら朝早く出勤する、それがいつもの朝であった。
「よし、準備はできたし出勤致しますかぁ。面倒だけど」
俺の名前は染井五郎、もうすぐ28になるアラサー会社員だ、毎日会社に出勤して、定時に帰って日々 を過ごす普通の会社員。
友人曰く、精神年齢が既に老けてるだの、いっつも面倒だ面倒だと言ってる物臭らしい。
面倒な事なんて無い方が楽でいいじゃないかと常々言うのだが、友人にはそれがつまらないらしい。
まぁ彼は刺激を求めるタイプの人間だから俺という人間が不思議なんだろう、うん。
「さて、程々に頑張りますかね!」
ぐっと背伸びをして、家を出る。
朝日を浴びながらのんびり出勤タイムだ、これから一日会社で雑務に上司にと戦う為の気合を入れた。
出社してからはいつもの変わらない、仕事のノルマを適当に消化しながら定時まで細々と過ごす。
昼は社内食堂でやっすいラーメンを啜り、休憩の合間にネットサーフィンをする。
そして定時になってタイムカードを押して帰る。
「あぁ~!終わった!さぁ、帰ってゲームでもしよう」
早々に自宅に帰り、PCを点ける。
スーツを脱ぎ、クローゼットに押し込みながらPCを見ていると、ドーンと音が聞こえる。
どうやら友人からのチャットのようだ。
「よう、五郎、お疲れさん」
「おう、そっちもお疲れ~」
いつもの挨拶を交わしながら今日の話題に入っていく。
「今日はどうする?昨日の続きでもするか?」
「ん~、どうするかねぇ」
「暇ならやろうぜ、まだまだ序盤だろ?」
「そうなんだよなぁ、だけどがっつりやるのも疲れるんだよ」
俺も若くない、毎日ゲームは流石に体力が持たない。
そんな俺の気持ちを察してくれないのか、彼は続けてこう言った。
「おいおい、何を言ってるんだがっつりって言うのは徹夜くらいしないと駄目だろう」
「死ぬわ!」
「ぐへへ!お前も衰えたな!」
「同い年だろう!?何言ってんの!?」
退屈はしないが、偶に疲れるそんな彼だが不思議と長い交友関係が続いていた。
「まぁ続き、しようぜ米五郎左」
「その呼び名は止めなさい、間違ってないけど」
「まぁ好きだからって丹羽長秀の名前を使うお前が悪い。」
「それを言ったらお前はどうなんだ、柿崎君」
「いいだろ?柿崎景家」
「う、うーん。お前のイメージに合ってるけど、何故その選択をしたのか」
「ノリだよ、ノリ。いっつもお前が戦国武将の名前使うから俺も合わせただけだよ、このゲームも戦国が舞台だし」
そう、今二人でやってるのは戦国を舞台にしたネットゲームである。
戦乱の世を武将となって暴れまわる、単純なゲームだ。
難しい事も考えずに、ただ直感だけでも遊べるのでハマっているのである。
「まぁ、さっさとログインしようぜ」
「了解、んじゃ準備して入る」
「あいあい」
チャットを一度切って、コンビニで買ってきたおにぎりを頬張り、着替えてからPCの前に座り直す。
「さてと、頑張りますかね」
そう気合を入れて、ゲームの世界へと没頭して、気づいたら寝ていた。
そのはずだった。
3月15日。
「し、死ぬ」
突然だが死に掛けてます、誰か助けて。
飲まず食わずで森を彷徨い三日目になろうとしていた。
あれから何度も探索したものの、手入れがされている形跡が全く無い森の探索はハードだった。
僅かに差し込む日の光を頼りにあちこち彷徨った結果が。
「結局、何が原因か分からないし。此処がどこなのか調べることも出来ない」
そう独り言を呟きながら木に背中を預ける。
結局、一昨日現実逃避しながら思い返した記憶の中に不自然な要素など無かった。
それどころかいつも通り過ぎて、三日経とうとしてるのに未だに今の状況が現実なのか疑ってしまう。
何度思い返しても、友人と夜遅くまでゲームして、いつの間にか寝てしまっていた所で記憶も途切れて しまう。
夢であったら醒めて欲しい、そう切実に願ってしまうほどに。
「でも、このままだと夢だとしても飢え死にしてしまう」
空腹で重い足を引きずりながら、この大木まで歩いたものの。これからどうしたらいいのか、正直考 えが浮かばなかった。食料や、この森から出なくては。
そんな思いが浮かび上がってくるが、散々歩き回って疲れ果てた俺は、大木に背中を預けたままいつ の間にか眠ってしまっていた。これまでの疲労や空腹に身体は限界だった。
自分が考えた小説を初めて投稿するので、かなり雑だと思います。
不定期ですが完結させれればいいなと思います。
自分が楽しめる小説を書くつもりですが、読んで頂けた方にとっても少しでも面白ければ僥倖です。