留萌
古びた留萌の駅は、高倉健が出てくる映画の世界だった。
舗装もしていない駅の駐車場に車を止めた。
「此処で弟をお母さんに渡したの!」
「どっちの方向に見送ったの!」
亜紀が指を指した。
「一軒ずつ聞こう!」
「すみません!美奈子さんのお宅ではありませんか!金沢にお嫁に行っていた方ですが!
20軒ほど回った時、「その人なら、吉田さんのとこでないかなー、此処から5件目の家を右にまわって3件目ですよ!」
「ありがとうございます。」
「すみません!すみません!ごめんください!」
家の奥から老婆が出てきた。
「美奈子さんのお宅です!」
「美奈子は嫁に行ったが・・」
「美奈子さんは、石川の金沢にお嫁に行ったことありますか!」
「ああー」
「男の子が一人いますか!」
「ああー」
「その男子の住んでいるところ知りませんか!」
「私は年寄りで解らないが、札幌でないか!」
「では美奈子さんは何処にお嫁にいったのですか!」
「豊富というとこだ!」
「名前は!」
「吉田だ。」
「ありがとうございます。」
僕達は豊富に向かった。
豊富は留萌から稚内に向かって150K、サロベツ原野の中にある小さな温泉町だ。
「色んな事がわかったからもうダイジョブ亜紀!」
「そうね!」
「弟は札幌にいるんだよ!母親に住所を聞けば完璧だ!」
僕は少し興奮して言った。
亜紀も嬉しそうにうなずいた。
日本海に沿って真っ直ぐな道が走っている。
何も遮るものが無く、右は原野、左は日本海だ。
暫らく走ると利尻富士が、海に浮いて見えてきた。
「亜紀!綺麗だね!」
「うん!」
言葉も失ってその景色を堪能しながら走った。
豊富温泉に着いたのは夕方だった。
「亜紀!今日はここに泊まり明日探そう!」
「解った!」