札幌
函館に着いたのは21時だった。
ドキドキしながら、
「どこか泊まる!」
「いいよ!」
しかしモーテルは何処も満員だった。
明日の札幌のホテルに予約して、僕達は札幌へ向かって走った。
疲れきっていた僕らは、1時間交代で運転したが、時々眠くて車を路肩に止めながら札幌に着いたのは11時だった。
チックインには早かったが、ホテルに頼み込みシャワーをして、爆睡!
目が覚めると、もう外は暗くなっていた。
亜紀はまだ眠っている!
時計を見ると19時、お腹が空いたと思ってネオンのビル街を呆然と眺めていた。
「起きているの!」
「目が覚めた!」
「うん!」
その時ドキとした。亜紀は素肌で寝ていたのだ!
ツインベツトで分からなかった。
平常心を装って、
「亜紀!お腹空かない!」
「空いた!」
「何か食べに行こうか!」
「こっち!見ないで!」
「うん!」と言いながら、机の上の鏡に映る亜紀の思ったより肉好きのいい腰のあたりを見ていた。
白の下着を着ける亜紀を見て、着痩せするのだと思った。
ホテルの外に出ると、自然と亜紀は手を組んできた。
「この街に亜紀の弟がいるんだね!」
「逢いたいな!」
「きっと逢えるさ!とにかく腹が減っては戦はできぬだ!何食べる!」
「なんでもいいよ!」
「魚かなーやっぱり!」
「そうね!」
「あの地下に行こうか!何軒食べ物やありそうや!」
「ここへ入ろう!」
その店はカウンターだけの10名位座れる小さな店だった。
北海道らしい「北の海」と言う名の店のカウンターの中には、夫婦と思われる二人が入っていた。
「いらっしゃい!」奥さんと思われる女性の人は明るく行ったが、男の人は何も言わず、チラッとこちらを一度見ただけで、客もいないのに魚を捌いていた。
「亜紀!生でいい!」
「うん!」
「中二つください!」
「はい!」女性は明るく返事をした。
メニューを手に取り、
「刺身何か!美味いのありますか!」と男の人に尋ねると、女性の人が
「大間のマグロと同じところに取れた、マグロありますが!」
「それください!それとホッケ焼いてください!後はおまかせで!」
「札幌の人でないでしょう!どこから来たの!」
「金沢です。」
その時、主人の顔が少し変わった。
「そうですか!私達も実は金沢ですよ!」
初めて主人が声を出した。
「何でも喋るな!お客さんに失礼だ。」
「何が失礼よ!いいじゃない!ね!」
僕達は思わずうなずいた。
「それで、加賀のお酒置いてあるのですね!菊姫、加賀鳶など!」
「そうです!」主人は初めて僕に対して話してくれた。
「お酒は飲まれますか!」
「僕は大好きです。」
「じゃーおごりです。」
「ありがとう!」
亜紀に向かって、主人は
「お嬢さんも飲みますか!」
「はい!」
「これは菊姫大吟醸です。」
「えーこの酒高くなかった。」と亜紀は言った。
「そうだね、1万くらいじゃない!」
「一緒に飲みましょうよ!」
「私はもう飲んでます。」
女の人は明るく答え、そして色々なことを聞いてくる。
歳は!夫婦か!旅行!質問攻めにあう。
「お前喋りすぎだぞ!」
関係を聞かれた時に亜紀は「恋人ですと答えた。」僕は何故か嬉しかった。
僕達は素直に色々な話をした。
生き別れの弟の事を亜紀が話すと、女の人は涙を流して聞いてくれた。
「会えるといいね!」
それからお客が何人か入ってきたので、僕達は店を出た。
さー明日は留萌だ!