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運び屋


いらっしゃいませ。お待ちしておりました。何か夢のあるお仕事を探しに来たんですよね。えっ?なんで分かったかって?まぁまぁ、とりあえず席へどうぞ。


さて、先程も言いましたがあなたは夢のあるお仕事をお探しですよね。えぇ、顔を見れば分かります。とても夢がいっぱいだけど「現実的じゃない」とか、「夢は夢」だとか、夢について迷ってらっしゃいますね。ですが大丈夫です。ここに来たからには夢のあるお仕事を御提供させていただきます。


さて、どのようなお仕事がお望みでしょうかね?えっ?夢がありすぎて困ってる?ははぁ、お客さんいい夢をたくさんお持ちのようで。どんな職業があるか聞きたい?分かりました。それでは取り扱っている職業とその職に就いたお客様のお声を一緒に紹介していきますね。


職業・運び屋(12月25日限定)

25歳 男性

Q、今の職業に就いてどうですか?

A、とても満足


限りなく白に近い灰色をした雲が空を覆っている季節。空からは、ほろほろと白い季節の結晶が降っていた。町ではもみの木が綺麗に飾り付けされて立っていた。商店街のガラスケースにはたくさんの商品が並べられており、「プレゼント用包装承ります」と言う貼り紙がどこの店にも貼られていた。子供連れの家族や、玩具屋で品選びをしている老夫婦、若いカップル等で町は活気で溢れていた。そんな中、早歩きで通行人を避けて行く若い男が一人。

「むぅ、またダメだった。これで4回目じゃないか」

手に持った紙を見ながらため息交じりに呟く。どうやら仕事の面接で落ちたらしい。男は仕事を探していた。大学を卒業する時にはすでに内定が決まっていたのだが、卒業した直前にその会社が倒産、そして今に至っている。

「そろそろ決まらないと、母さんにも心配かけるしなぁ・・・」

二回目のため息をついて、とぼとぼと歩き出す。

「でも、どうせ働くなら夢みたいな仕事も悪くないなぁ・・・。まぁ、無理か」

自分の言った言葉に苦笑し、自宅へと急ぐ。


商店街を抜ける所で、男は一枚の広告が目に留まった。

「「あなたの夢、仕事にしませんか?」か・・・」

男は他の職業安定所の広告と変わり無いな、と思いながら歩き出そうとしたが、何故か広告が気になる。

「・・・。行ってみるか」



広告で示された場所はそこからさほど遠くなかった。普通の雑居ビルに店舗を構え、周りの雰囲気を崩すことなく納まっていた。

「こんなところにこんな店あったっけかな?」

自分の記憶を探りつつ、店に入っていく。その途中で店名を確認しようとしたが、看板が何かでぼやけていてはっきりとは読めなかった。

男が店に入ると、中は広さの割にはスッキリしていて、部屋をちょうど半分にした時に中心となる位置にテーブルが置いてあり、細目で、特徴的な銀髪のどこか楽しそうな雰囲気の店員が座っていた。

すると、店員はまたもや楽しそう雰囲気の声音で、

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。夢みたいなお仕事、探してますよね」

と言った。

「えっ!?」

男は驚いた。細目の店員は、まるで男の感情を読み取ったかのように的確にここに来た理由を告げた。

「まぁまぁ、とりあえず席の方へどうぞ」

にこにことした表情で席へと案内された。


男が座るなり細目の店員は、

「さてさて、どのようなお仕事がお望みでしょうかね?」

と顎の前で手を組み、男の様子を細々と観察するような恰好で言った。

「えーっと・・・」

いきなり聞かれた男はすぐには答えられなかった。すると細目の店員は頷きながらこう言った。

「そうですよね、夢がたくさんありますもんね。悩みますよね。でもですね、悩んじゃいけませんよ、たとえそれが・・・現実的では無いとしても」

男はその言葉に驚いて、体の力が抜けた。男は細目の店員に言われた通り、現実的では無い職業を一つ考えていた。

「ほらほら、言ってみたらどうですか?」

にこにこしながら男を見る。その雰囲気に負けて男はこう言った。

「運送業・・・、12月25日限定の運送業ってありますか?」

男は恥ずかしそうで、それでいて真面目な口調だった。

それを聞いた細目の店員は、よく言った、と言わんばかりに笑って、

「かしこまりました」

といった。


その次の日、男のもとに1本の電話が来た。

「おめでとうございます。あなたが望んだ就職先、見つかりました」

あの細目の店員だった。

「えっ、本当ですか?でも本当に・・・」

「えぇ、「死ぬまで使ってやる」だそうです。良かったですね」

「はい・・・、ありがとうございます!」

三日後、12月25日から男は運送会社に就職した。―――



―――あれから2年、彼は意気揚々と働いていた。



男はあの日、細目の店員に聞いたことが一つ。


「それって、町内会とかじゃないですよね?」


しかし、そんな男の心配も今ではもう無くなっている。男が就職してから2年目の冬。男は今、暗い夜空をトナカイが引くソリに乗り空を飛んでいる。夢と言う現実と共に。今年もまた、あの運び屋が鈴をならして空を駆け抜ける。



細目で特徴的な銀髪の男は歩いていた。何かに気付いたように白い季節の結晶が降る空を見上げ、駆け抜ける影を見て歌い始めた。


走れそりよ 風のように 雪の中を 

軽く早く笑い声を 

雪にまけば明るいひかりの 花になるよ

ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る

鈴のリズムに ひかりの輪が舞う

ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る

森に林に 響きながら走れそり

よ 丘の上は雪も白く 

風も白く歌う声は 飛んで行くよ

輝きはじめた 星の空へ

ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る

鈴のリズムに ひかりの輪が舞う

ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る

鈴のリズムに ひかりの輪が舞う


歌い終わって、細目の男は笑った。そして影に一言。

「今年も夢職人サンタクロースは夢を運ぶ」


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