白黒鉱山
山を抜けて開けた街には油と鋼鉄の臭いの漂う鉱山の町だった
鏡屋敷から1日山の中を歩き、道があったので進めば灰色の工場が幾つも建てられていた。
そして道行く人は男も女も良く日に焼けて逞しく生きている。
町に着けば、雪のせいか白く写るが黒い鉄鋼で出来た町並みのせいかモノクロ写真の様だった。
私は機械の音がけたたましい町の中を行けば浮浪者や浮浪児が路地裏でうずくまっているのが伺えた。
どうやら町が栄えた代わりに貧富の差が生まれ、町の問題になったのだろう。
そして宿に行けば痩せた女将さんが「まぁまぁ、家に来るなんて久しぶりだわ…どうぞゆっくりして下さいな」と言った。
暖炉に火は付いていなくて灰も埃もなかった、多分燃やす薪も買えないようだった。
奥からは「母ちゃん…腹減ったよ…」と声がする、私は女将さんに一泊分に少し多目の金を支払うと「良いのかい?こんなに…」と目を丸くした。
「良いよ、貴女も子供も居なくなればまた私が寄れなくなってしまうからね」
「有り難う…ささやかですが、おもてなしをします」
私のしたことは自己満足かもしれないが、きっと親子はそれを喜んだなら私は何も悔いはない、この母子の幸せが何かは知らないが私はそれが幸せだと思えるようでありたい。
今日はもう遅くなってしまったようだな、もう休もう…