白黒旅人
冬のすきま風に震えて目を冷ませば…私はこんな所に居た
目が覚めたら、木造のやたら古めかしい駅の構内に私は眠っていた。回りを見回せば、くすんだ窓ガラスに原色絵の具で活版されたレトロな貼り紙が釘で打たれている。
私は黒いロングワンピースに白い毛皮のコートと帽子と大きなトランクが持ち物で、唯一変わらないのが分厚くて大きな眼鏡だけだった。
腰まで延びた黒い髪を整わせて、ベンチから立ち上がると、一通の手紙が落ちてきた。手紙にはこう書かれている…(そちらの旅はどうですか?僕はまた発作でサナトリウムで入院していますが、元気に過ごせてます。また此方へ戻ってきたら何時ものように旅先の土産話を聞かせてください。Sより)
と書かれていた、しかも宛先や届け先を見る限り此処は日本ではないようだ…私は何時此処に来たのかは覚えていないが、私に手紙を宛てたSは何かを知っているらしい。
駅のホームに出れば、くすんだ白銀の髪に紫の大きな目をしたガタイの良い車掌が、懐中時計で何度も時刻表を見ている以外何もなさそうだ、そして朝焼けと靄のせいかピンク色の世界に紛れたような錯覚さえ覚える。
「あの…すみません」
「お?珍しいな、外国の女の旅人とは…何処まで行くんだね?」
「えーっと…」
ポケットを探れば、無期限の東の最果て行きと書かれた水色の大きな厚紙の切符があった。私はビクビクして車掌に出すと、車掌は当たり前のように「次の6時発車の汽車にお乗りのお客様が参りました、足下にご注意下さい」
と怒鳴り、私は汽車に乗ることが出来た、私は日本へ戻りSと書かれた人の所まで行く事になった。そしてトランクに入っていた真新しい日記帳にはこの旅の事を書いていくことにしよう…そして汽笛が大きく鳴ったと同時に私の旅も始まった