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(5)



とうもろこしの缶詰(缶切り使わないタイプのやつ)を開けていて…

中々開かないもんだから、思いっきり力を入れたら…



______ッダバァ!!





Yes!!モロコシパニック!!!



缶詰を開ける時は十二分に気をつけましょう( -ω-)


わしゃあ不器用じゃけぇ。


時代に取り残された不器用な漢、羽崎がお送りする第5話です(・∀・)






 さて、我が愚妹ぐまいに部屋を追い出され、一足先に一階に下りて朝食及び弁当(美咲は中学生なので給食が出るため、俺の分)の準備をしている訳ですが…。


「あの子…朝飯いるのかね……いるわな」


 未だに状況が理解できていないのだが、というか理解したくないのだが、あの子一人だけ朝食をあげないのもひどい気がする。

 自問自答後、朝食作りに取り掛かる。

 飯は昨日、部屋に上がる前に予約でセットしてあった。もう炊けている。

 ついでに味噌汁も作っておいた。

 干し椎茸を刻んで、だしの素を入れた熱湯で煮て戻して、椎茸の風味が強めの出汁に白味噌と合わせ味噌を3:1で溶かした、そこそこ自信のある味噌汁だ。

 これを温め、今日はえのきを入れた。椎茸とえのきのキノコ味噌汁である。

 冷蔵庫からウィンナーを取り出し、一袋丸々フライパンに流し入れる。

 ウィンナーがパチパチと音を立てるフライパンの横のコンロで、長方形のフライパンを熱する。

 卵を4つ程取り出し、ボウルの淵で割っていく。

 塩と旨味調味料を少々、砂糖を多めに入れる。感覚だけでやってるので、細かい量は把握していないが、そこは大目に見て欲しい。

 甘めに味付けした卵を、長方形のフライパンで焼いていく。

 薄く敷いて焼けたら巻いて。こんな地味な作業を繰り返す。

 横のフライパンで焼かれているウィンナー達が焦げない様、時々弄りながら卵を焼いていき、卵焼きが完成。

 キッチンペーパーを敷いたまな板に卵焼きとウィンナーを置き、油を取りながら切り分ける。

 三人分切り分けて、残りは弁当用によけておき粗熱を取る。

 弁当には、自然解凍の冷凍食品を入れてスタンバイ。

 味噌汁、卵焼き、ウィンナーと、中々に栄養の偏った朝食ではあるが、朝食で摂取するエネルギーは一日の活動源。多少は濃い位がちょうどいい……と思う。


「あ、テーブル拭いてねぇ」


 フライパンとボウルとまな板を洗い終えた所で、テーブルを拭いていない事に気づく。

 昨日もちゃんと拭いているが、夜から朝まで時間があれば当然ホコリは積もる。

 気にする程ではないのはわかっているが、なんか気持ち悪い。潔癖性と言われれば否定はし辛い所である。

 台拭きを濡らして絞り、テーブルへ向かう。

 いざテーブルを拭こうと手を付けた瞬間___。




「ヤーーーーーーーー!!!!」

「⁉」




 バタバタバタドンバタバタバタ!!と、慌ただしいにも程がある音と、何かにぶつかった音を立て、一寸のブレもないまっすぐな悲鳴をあげながら、二階でリアルきせかえごっこをしていたはずの残念な妹ちゃん、美咲が走って来る。

 一直線に俺の方へ走ってきた。両手を広げて『兄ちゃんの胸に飛び込んで来い!』とは言いにくい速度だったので、右手で受け止める事に。

 べちっ!と、右手と額がぶつかった。


「何してんだ?お前」

「お、お、お、お、おに、おにぃ、おにぃぃぃ」

「鬼?」


 一目で分かるパニックだな。

 目を潤ませて顔真っ赤にして。

 かわいいと思ったが妹だぞこれは。


「何があった?」

「く、くろ…きす…え?…ほっぺ…ちゅう、したが…え?」

「え?じゃねぇよ。わかったから座ってろ」


 当然わかっちゃいないが、なんか関わるのが面倒な気がした。

 くしゃくしゃと美咲の頭を撫で、椅子に座らせる。

 テーブルを拭いて台拭きを洗いにキッチンへ戻る。

 俯いて何かブツブツ言っていたが聞こえなかった。顔が茹でダコみたく真っ赤なのはわかるのだが。

 くろ……クロ?

 きす…キス。ちゅう…キス……同義か?

 ほっぺ…に、キス…クロ…あの子が?美咲に?

 したが…接続詞?下が?舌が?

 ………めんどくせっ!


「……美咲。ちと早ぇけど朝飯食うか?」

「にゅい」


 にゅい?肯定の返事と捉えていいんだろうか。

 色々とありまくったが、時刻は7時になろうかと言う所。

 いつもは7時半に朝食を食べ、8時過ぎに家を出る。

 俺が通う高校も、美咲が通う中学も、方向は真逆だが徒歩20分程で行ける距離にある。

 だから朝は比較的余裕があるのだ。

 我が家は学生にとってはかなり好条件な場所にある様です。


「美咲?美咲ー?」

「………」


 にゅい。の真意がわからなかったから訊きなおそうと思ったんだが…。

 返事を期待するだけムダな様だ。

 まぁ、今日はたまたま時間が早いだけだし、いつも通りでもいいだろう。

 俺も椅子に腰を掛け、テレビを点けた。

 ニュースとバラエティが混じった様な朝の情報番組が流れる。


「ってか美咲。あの子はどうしたんだ?」

「ッ!」

「?」


 あの子。と言った瞬間、ビクッと肩を強張らせた。

 ホントに何があったんだ?この短い間に。




「_____ミサキー?」

「ッ!!」




 トントントントン…。と、軽快に階段を下る音と、無邪気さを伺わせる可愛らしい声が聞こえる。

 当然の如く違和感は感じるが、悪くないと心の端に思う俺が居た。

 豆鉄砲をくらった鳩どころか、ショットガンをくらったヒヨコみたく過敏な反応を見せる妹は除いて。

 パタパタとリビングに現れた声の主は、純白のワンピースを着ただけなのに、アニメか何かのキャラクターかと思う程に可愛らしかった。


「あ、ユウトー!」

「ん?俺?」


 少女は、美咲と対照の位置に座る俺を認識すると、頭にある猫耳をピンと立てて俺の名前を呼ぶ。

 なぜ猫耳があるのか、なぜ動くのかは不明。

 名前は……さっき美咲と居たんだし、美咲から聞いたのだろう。


「いっ…」


 猫耳少女がパタパタと近づいて来ると、美咲が口から、『声』と言うよりは『音』を発し…。


「行って来まぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!」

「んにゃッ⁉」

「あ、オイ!美咲!」


 ゴキ○リ並の瞬発力で、椅子から立って走り去り、家を出てしまった。

 世界一の瞬発力を持つ生物はゴ○ブリらしいですぜ?

 背後から抱きつこうとする動きをしていた少女は、急に動くもんだから驚いていた。





 どこに行くつもりなんだろう。

 朝飯も食べず……パジャマのままで。




 ホントに何があったかは知らないが、我が妹の残念さに、今日も軽い頭痛を覚えた。



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