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判決 福島第一原発1500シーベルト作業 とする

作者: 福耳の犬

福島第一原発の復興へ私案です。

犯罪者は刑務所だけでなく、原発の処理を行います。

『 こんにちは、もしかして中村さんですか?』

お店に入りキョロキョロしている男の人に私は声を掛けた。

『はい、中村です。初めまして』

『初めまして、水野です。今日はわざわざありがとうございます。』

目の前にいる中村さんはとても真面目そうに見えた。

とても犯罪を犯した人には見えない。

『あまり時間もないので質問を始めませんか?』 

『分かりました。それでは色々教えて下さい。』

私は取材の為に中村さんに会った。この中村さんが法律改正後に

出所した人であり取材を引き受けてくれた。

『今回はどの様な判決を受けたのですか?』

『ハイ、詐欺罪で1500ミリシーベルト作業の判決をうけました。』

『具体的にどの様な事をするのですか?』

『基本的には何もしなくてもかまいません。一年で100ミリシーベルトずつ減って

いきますから。』

『どうしてですか?』私は意味が分からずに聞きかえした。

『ハイ、放射能汚染地域の米、野菜を食べますので!』

なるほど、たしかにそうだ。これなら被災地の復興にもなる。

『でも私は早く出所したかったので作業もしました。』

『どの様な作業を行ったのですか?』

『最初は瓦礫を除去する作業を行いました。しかしなかなか数字が減りません。』

『どうやって数字が分かるんですか?』

『ハイ、作業の前に線量計を付けて、作業後に確認します。』

『そこで私は原子炉近くの作業を志願しました。』

『どの様な作業なんですか?中村さんは何か技術を持っているのですか?』

『いえ、私は持っていません。私に与えられた作業は簡単な事でした。

ただ、バルブを閉めるだけです。』

『バルブを閉めるだけですか・・』私の表情を見て中村さんは話を続けた。

『私も最初は拍子抜けしました。でも甘かった。』

『その日、私は防護服に着替えました。ここまではきちんと着れているか

他の人がチェックします。チェックマンも勿論、私と同じ服役者ですから

キッチリ自分で確認します。』

『そうなんですか・・』

『基本、人は技術者以外はほとんど服役者ですね!』

『ここから先は一人きりです。』

『一人で場所とか分かるのですか?』

『シュミレーション施設にまったく同じレイアウトが再現してあって

行う作業の連絡をするんです。』

『そうなんですか・・』

『迷ったら何も作業を行わないで終ってしまうので、その時は数字も減りません。』

彼はコーヒーを一口飲み、話を続けた。

『話を戻すと、私は着替え終わると明るい廊下を歩きだしました。

施設は普通にある様な物ですが、何かが違う。そう、人の気配がまったくありません。

それがとても気持ちが悪いんです。

そしてシュミレーション通り目的地に近づくと目の前が暗く感じます。

頭も締め付けられる感触があり、頭の中をざわざわ何かが動き回ります。

何とかバルブを見つけ閉め様としますが、簡単な事なのになかなか出来ないんです。

その時の時間は物凄く長く感じました。』

中村さんは話し終わると・嫌な事を思いだしたのかとても静かになりました。

『最後に教えて下さい。今の作業で何シーベルトだったんですか?』

『時間は30秒で400シーベルトでした。』

中村さんは一言『あんな所には二度と行きたくない』と付け加え、コーヒーを飲みほすと

すくっと立ち上がり『帰ります。』と外に歩きだしました。

かろうじて『ありがとうございました。』と立ち上がりましたが

中村さんの姿はドアの外に消えてしまいました。







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