SNS
世の中はSNSで溢れている。
誰かが幸せを掴めばSNS。
可愛いものを見つけたらSNS。
かっこいいものを見つけたらSNS。
誰かが恥ずかしい思いをしたらSNS。
誰かが不幸になったらSNS。
興奮すればSNS。
SNSに染まった人間はすぐそれらをコンテンツにしたがる。
そんな世界で平凡な人間、16歳の海里がいた。
現代の16歳からすれば今のインターネット社会はおかしく思えなかった。
動画アプリを開けばどんな動画も流れてくる。
何もおかしくなかった、だれも疑わなかった。
海里もそうだ。
でもある日、それが恐ろしいことだと分かってしまった。
「ふぁ……」
学校の制服を着て眠そうに、あくびをしながらリュックを背負う。
スマホに通知が来た。
誰かが投稿した音。
「朝から元気だな……」
関係ないと思ってスマホをポケットに入れた。
いつも通り歩いて学校に向かう。
いつも通りのはずだった。
道端で若い女性の声が響き渡った。
黒いフードを被り、白いマスクをした男が女性のカバンを引っ張っていたのだ。
女性が鞄を取られないように必死に踏ん張っている。
海里は立ち止まって見ていた。
自分が助けるという選択肢なんてなかった。
どうせ周りが助けてくれるだろうと、海里の心の中で決まっていたから。
でも誰も助けに行かない。
いつまで経っても誰も助けない。
女性が「助けて!」と声をあげていても誰も動かない、皆スマホを構えている。
見て見ぬふりで通り過ぎる人も大勢。
海里は誰も助けに行かないのに気が付いて周りを見た。
みんなカメラを向けて、スマホの画面だけを見て現実を見ていない。
視聴回数に必死な人々。
女性は泣きそうになってる。
そんな様子を見た海里の心に密かに火が灯った。
(僕は……)
海里は勇気を出して一歩、また一歩進めていく。
(僕はッ……!)
——人一人救えない人間のままは嫌だ。
海里は走って男の腕を掴みに行った。
「その鞄からッ……手を離せッ……!」
男は海里に驚いたのか、意外にもすぐ逃げ去った。
(逃げて行った……?)
「あ、あのっ……だ、大丈夫ですか……?」
恐る恐る女性に声をかけた。
女性は顔をあげたかと思ったら、海里の目を見て。
「ありがとうございましたっ……!」
と、言い、海里に勢いよく頭を下げた。
海里は自分の胸の前に両手を開いて、慌てて女性に声をかける。
「か、顔をあげてください!僕はただ普通の事をしただけです……」
そういったが、周りを見た瞬間に海里は黙った。
周りの人は、まだスマホを掲げている。
少しずつ興味がなくなったのか、離れていく人もいる。
(なんだこれ……僕の知ってる普通じゃない……)
でも海里の心が引っかかった。
(普通ってなんだ……?)
もしかすると、このような状況が今の時代の「普通」なのかもしれない。




