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SNS

作者: 夜桜ヨゾラ
掲載日:2026/10/16

 世の中はSNSで溢れている。

 

 誰かが幸せを掴めばSNS。

 

 可愛いものを見つけたらSNS。


 かっこいいものを見つけたらSNS。


 誰かが恥ずかしい思いをしたらSNS。


 誰かが不幸になったらSNS。


 興奮すればSNS。


 SNSに染まった人間はすぐそれらをコンテンツにしたがる。


 そんな世界で平凡な人間、16歳の海里がいた。


 現代の16歳からすれば今のインターネット社会はおかしく思えなかった。


 動画アプリを開けばどんな動画も流れてくる。


 何もおかしくなかった、だれも疑わなかった。


 海里もそうだ。


 でもある日、それが恐ろしいことだと分かってしまった。


「ふぁ……」


 学校の制服を着て眠そうに、あくびをしながらリュックを背負う。


 スマホに通知が来た。


 誰かが投稿した音。


「朝から元気だな……」


 関係ないと思ってスマホをポケットに入れた。


 いつも通り歩いて学校に向かう。

 

 いつも通りのはずだった。


 道端で若い女性の声が響き渡った。


 黒いフードを被り、白いマスクをした男が女性のカバンを引っ張っていたのだ。

 

 女性が鞄を取られないように必死に踏ん張っている。


 海里は立ち止まって見ていた。


 自分が助けるという選択肢なんてなかった。


 どうせ周りが助けてくれるだろうと、海里の心の中で決まっていたから。


 でも誰も助けに行かない。


 いつまで経っても誰も助けない。


 女性が「助けて!」と声をあげていても誰も動かない、皆スマホを構えている。


 見て見ぬふりで通り過ぎる人も大勢。


 海里は誰も助けに行かないのに気が付いて周りを見た。


 みんなカメラを向けて、スマホの画面だけを見て現実を見ていない。


 視聴回数に必死な人々。


 女性は泣きそうになってる。


 そんな様子を見た海里の心に密かに火が灯った。


 (僕は……)


 海里は勇気を出して一歩、また一歩進めていく。


 (僕はッ……!)


 ——人一人救えない人間のままは嫌だ。


 海里は走って男の腕を掴みに行った。


 「その鞄からッ……手を離せッ……!」


 男は海里に驚いたのか、意外にもすぐ逃げ去った。


 (逃げて行った……?)


 「あ、あのっ……だ、大丈夫ですか……?」


 恐る恐る女性に声をかけた。


 女性は顔をあげたかと思ったら、海里の目を見て。


「ありがとうございましたっ……!」


 と、言い、海里に勢いよく頭を下げた。


 海里は自分の胸の前に両手を開いて、慌てて女性に声をかける。


 「か、顔をあげてください!僕はただ普通の事をしただけです……」


 そういったが、周りを見た瞬間に海里は黙った。


 周りの人は、まだスマホを掲げている。

 

 少しずつ興味がなくなったのか、離れていく人もいる。


(なんだこれ……僕の知ってる普通じゃない……)


 でも海里の心が引っかかった。


(普通ってなんだ……?)


 もしかすると、このような状況が今の時代の「普通」なのかもしれない。

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