幻想世界
ザシュッ!!
「いってーーー!!」
ぼくは、痛みで飛び起きた。
明かりを点けると、一匹の野良猫が窓から逃げるところだった。昨日、疲れてしまって、窓を開けっ放しで寝たのが悪かったのだ。
野良猫は、きっと机の上の食べ欠けのトーストを狙って開かれた窓から寝室へ侵入したのだろう。そして、齧り欠けのトーストを口に含んで、そのまま元来た窓から帰ろうとして、ぼくの額を引っ掛けたんだ。
「いつつっ……。それにしても、どんな夢だったっけ?」
とても幻想的な夢だったような。だが、今となっては、どんな雄大な幻想世界での一生に一度きりの記憶に残るような夢だったとしても、きっと朧気だろう。
ふと、素敵な夢にでてきたであろう。部屋に微かに残る女性の香水が鼻腔を霞める。
床には、銀色の砂粒が付いた足跡が残っていた。
不思議に思い。開け放たれた窓の外を覗いてみると。すると、街の景色が一変している。
ぼくは、いつまでも部屋に留まり香水の匂いを嗅いでいたい気持ちもあるが、居ても立っても居られないので、こんな夜更けだというのに、外へ出てみたくなった。
家の外には、窮屈な道路を漂う排気ガスの臭いも、工場地帯からの真っ黒いスモッグもなかった。迷路のように入り組んでいた道路は、けもの道と変わり、向いのパネル式の会社も消えてなくなり、代わりに苔むした大きな岩があった。
後ろを振り返ると、街外れにあるぼくが住む一軒家は、いつの間にかコテージになっている。




