第2話 恋愛感情とかけて、心拍数と解く2
『人を乗せている時は絶対に無謀な運転はするな』。
父の教えに従い、高速の左車線をゆっくりと走る。
通行量はそんなに多くない。右車線をカッ飛ばしていく車が、グレーのセダンを見て覆面と勘違いしたのか慎重に追い抜いていく場面が何度かあり、申し訳ないやら愉快やら。まあ特に気にはしない。免許取り立てだったらね、どことなく居心地が悪くなってただろうけどね。そもそも覆面パトにレクサスないし。早とちりさんめ。
運転開始から四十五分ほど。サービスエリアまであと二十五分ぐらいだろう。ほぼ制限速度で走っているからか、ナビの予想到着時間は午後二時四十五分。当初の予想時間との差異はコンビニ休憩で後ろにずれた五分だけだ。地味に凄くて感動する。
これまでの車内の様子はというと、基本は静かだけど、どちらからともなく会話がぽっと発生したりと、旅の始まりから一転して居心地の良い時間が過ぎていた。紗希さんはたまにスマホを取り出すぐらいで、基本的には大人しく座っていらっしゃって、景色を眺めているようだった。退屈してるようにも見えるけど、その割には良い感じに会話も発生していて、何というか……凄く自然?だった。ドライブに慣れてるのかな。
というか、そもそもドライブは好きなのだろうか。本当にそもそもすぎる。嫌いだったら初対面の異性に誘われてドライブになんか来てないはずなので、嫌いでは無いと思うのだけど。これまでにもよく恋人とドライブデートをされてたのかしらと思い、ふと先週の喫茶店で彼女が発した言葉を思いだし嫌な汗が出てきた。
『そうですね……周りには結構驚かれました。別に失恋とかじゃなかったんですけど』
髪型をロングからショートに変えた時のくだりで、俺は『そらこんだけ美人なら彼氏に困らんわな』と思った。つまりその時は短絡的に水上紗希=彼氏持ちと認識していたにも関わらず、その後そのことを完全に失念してドライブデートに誘っている。まじ? 自分に対してまじ?だし、紗希さんに彼氏がいたとしたらそれもまじ?である。いやいないかもしれないじゃん。……オアイズイット? それを確かめるため、リチャードと私は現地に向かいました。ここが現地や。
こういう時は火の玉ストレートに限る。
「紗希さんって、彼氏はいるんですか?」
「……え……」
アカン、アウトや。見てみ、紗希さんの不快そうな眉。表情と沈黙に胃がしぼられつつ、紗希さんの口が開かれる。
「……いたら、来てないですよ」
親父、すまねえ。ヤったわ。駄目な方向でやっちゃったわ。……いや、リカバリーリカバリー。落ち着いていこう。
「ああ、すいません。……そういえばどうなのかと思い」
「世にはそういう女性もいるでしょうけど、私個人としては恋人がいるのにドライブデートをするのはナシですね」
「奇遇ですね、私もです」
「じゃあ何で聞いたんですか?」
「返す言葉もございません……」
神妙に謝ると、その雰囲気が面白かったのか、紗希さんが小さく吹き出す。良かったあたし許された! 無罪! 無罪では無いですね。情状酌量といったところだろうか。
「……伊織さんが私のことをどう思っているかは分かりませんが……少なくとも私の周りの女の子で、彼氏がいるのに別の男と二人きりでドライブデートは、よっぽどのことがない限りないと思います」
「なるほど……いや、すいません。ドライブデートぐらいならオッケー村出身の方な可能性もあるのかな、ぐらいに思ってました」
「なら、はっきりして良かったです。NG村出身です。……ここまで言って、伊織さんが彼女持ちとかいうのはなしですよ?」
「あ、同じ村の出身なんでいないですよ」
「そうですか、良かったです。嘘つき村出身の可能性は考えないようにしておきます」
「そうして頂けると助かります」
グッドコミュニケーションでいいでしょうか? ノーマルコミュニケーションのような気もする。男立花、ここでもう一歩踏み込みたくなった。しかしドライブデートには一つのリスクが付きまとう。仮に雰囲気が終わっても、簡単に抜け出せないという地獄のリスクが。ゆっくり会話がしたかったから誘ったドライブデートではあるが、改めて諸刃の剣であることを意識する。けど……それでも、父さん、ごめん。俺は……いくよ。
「紗希さんは……経験――恋愛経験が豊富そうに見えるんですけど」
「それ、本当に言ってます?」
ガチめに失言をしかけた。というかした。人数の「に」ぐらいまで言いかけてた。一気に汗が噴き出す。やばいやばい。いや本当にやばい。キモすぎる。何で? ほぼ初対面の相手に経験人数聞くような人じゃなかったじゃん? 脳内の幼馴染も悲しんでいた。自分自身にげんなりしつつ、ちょっとガチめに反省する。いやほんとさぁ……。言い訳も何も出てこない。
「本当に言ってますけど……むしろ、何でそう言われるんですか?」
ちら、と横を伺う。彼女は無表情で車の進む先を見ていた。……可愛い。少し退屈そうな顔は、切れ長な垂れ目によるところが大きい気がする。多分だけど、実際は本当にニュートラルな表情な気がする。可愛いとか考えてる場合か?
「……私、愛想、なくないですか?」
「あるかないかで言ったら、ないとは思います」
「ですよね」
そして沈黙。
「え、それだけですか?」
「……そうですね。まあ、概ねそれだけだと思います」
「なるほど……」
それだけとか言わないの! 失礼でしょ。全く、こういうのはちゃんと脳内の段階で止めておいてよね。脳内チェック担当者を叱りつつ紗希さんの発言について考える。
「……なんていうか、俺が相手……っていうと語弊がありますけど……いやまあ。だからなのかな、とは思ってたんですけど」
「違いますね。割と、誰に対してもこんな感じですよ。……まあ、つまらない女なので」
これまで抱いていたイメージから、一転して陰の雰囲気を帯びた紗希さんに若干びびる。クールと陰キャは別やからね。ウグッ……。しかしこの陰の雰囲気は一体? これは過去に何かあったのか、元々自己評価が低い人なのか、どちらだ……?
「それって、何かあってそう仰ってるんですか? 一ミリたりともつまらない女性とは思わないのですが」
ちょっと狙い過ぎたキモい発言をしてしまったので、恐る恐る本日数億回行っている横チラをすると、紗希さんはまばたきの回数が増えているご様子だった。良いか悪いか分からないけど何か効いたっぽい。
「……伊織さんって、結構言ってくる人なんですね」
「あっ……不快にさせたらすいません……」
狙い過ぎた。思わず苦虫を噛み潰した声が出た。もうこれは実際噛み潰したね。苦い。
「いえ……嫌いじゃないですよ。何を考えてるのか分からない、表層だけの発言に比べたら、百倍マシだと思います」
おお、今の発言円香っぽい。感動していると、横から息を飲み込む音に続けて言葉が発せられる。
「あの……言い方を間違えました。百倍マシじゃなくて……その、良いと思います。そっちの方が、好きですよ」
おお……。何かうまく説明出来ないけど感動が生まれた。今の発言、後ろの部分だけ切り取って無限再生し――お止めなさい、尊厳を失いたくなくば。はい止めます。申し訳ございませんでした。
「……とはいえ、なるべく失言はしないようにします」
「ふふ、そうして下さい」
よし、うまく会話できたな! これはパーフェクトコミュニケーション。本当にうまく会話が出来たかのか、疑問が残る点も含めて原作再現である。信頼度が三つあがったのでこれで思い出アピLv.1が打てる。
「さっきの質問に答えると……――」
そう言うと、円香に似た女性は言葉を探すように口をつぐむ。
「――そうですね、あまり意識してはいなかったんですけど……何かあったのが、意識してないところに刺さってるのはあるかもしれません。……大した話じゃないですけど。とはいえ、それが無くても、こんな感じだったと思いますよ」
「なるほど……」
なるほど(?)。よし、戦果は得られた。これ以上の深入りは無用だ。撤収! こちらの方は脳内ベテラン隊長さん。
「……」
何となく、横から何か言いたげな様子を感じ取る。感じ取るのは得意だ。こちとら四半世紀、空気を読むことだけして世間を渡ってきたキャリア二十六年のベテランぞ? 本当に渡れてます? はい、あまり渡れていません。
「……個人的には、紗希さんめちゃくちゃコミュ力高いし、頭良いし、話してて面白いので……語弊を恐れずに言うと、まず見た目で気になって、その後性格で好きになる人は多いんだろうなって思ってました、友情、恋愛問わずで」
「……その人達の中に、伊織さんは含まれてるんですか?」
いや自分の発言キモくね?と思ってた中で放り込まれた紗希さんの発言に、脳内の住人達がびっくりして一斉に電気ショック受けたみたいな反応をした。え何その小悪魔ムーブ? 急に来たじゃん。え怖。妖艶。テクニック(?)。どういう感情で言ってんのこの人恥ずかしくないのか……いや恥ずかしいのはお前の発言だよと戦慄しつつ紗希さんの表情を伺うと、あくまで会話の流れの戯れにすぎませんことよ? とでも言わんばかりの無表情であった。何でこの人このムーブして恋愛経験豊富じゃないみたいなこと言ってるんですか? 含まれてるに決まってるだろ。
「……えー……あー、色々と言い訳は浮かんでくるんですけど、端的に言うと含まれてますね」
いや冷静に大丈夫かこの会話? と思っていると、例のふっ、が聞こえてきた。
「すいません、変なこと言って」
「いえ、こちらこそ」
ほぼオートマチックに返答しつつも脳内ではクエスチョンマークが浮かんでいる。いいねえ楽しくなってきたね。『なんだこの状況?』になってきてからが人付き合いよ。ほんまか? それ、あなたがキモいからそうなってるんじゃないですか? ……いや、それは多分にあると思いますけど。そこまで言わなくてもいいじゃないですか。脳内で拗ねていると、円香……じゃねえや、紗希さんが口を開く。今のはガチで失礼だし本当気を付けないと駄目ですからね立花さん。
「まあ、とはいえ普通ですよ。……恋愛経験は三人、経験人数は二人です」
声にならない悲鳴が心の底から聞こえてきた。口に出してないよ。大丈夫。ただ脳内で何人かが心肺停止しただけ。脳内に何人かいるの冷静に考えて怖すぎる。
「ご、ごめんなさい……。でも、確かに思ってたよりは何か、普通ですね」
「はい、普通の女です」
あら、笑っていらっしゃる。お美しい……。若干シニカルみのある笑いなのがポイント。
「何人ぐらいだと思ってたんですか? ……あの、恋愛経験」
ごめんなさい。
「二桁までは覚悟してました」
「ふっ、何の覚悟なんですか」
仄暗い感情が芽生えることに対しての覚悟です。
「伊織さんは?」
「付き合った人ですか?」
「はい」
経験人数を聞かれても困る。それを実際に聞いた馬鹿がいるらしいですね車内に……。
「ふ……つうですよ。三人です」
「普通ですね。私より恋愛経験豊富じゃないですか」
いえ、数は同じですよ紗希姉さん。何か勘違いしていらっしゃいませんか。
「実際、恋愛経験って人数じゃないですもんね。その点、俺は正直……ほぼほぼ、ままごとみたいなもんだったので、無いようなものですよ」
「……例えば?」
例えば?
「うーん……例えば、一緒に旅行に行ったことは一回だけ。クリスマスは呪われてて、高校の時は逢引き失敗。大学と社会人ではクリスマスになる前に別れる、とか。サンタに呪われてるんじゃないかと思ってます」
「あー……何か、微笑ましいですね。高校生の下りとか」
「はい、微笑ましい恋愛経験を送ってきています」
そうですか、と言うと、彼女は窓にもたれかかるようにして、窓から見える景色を見ていた。何となく、自分の過去を振り返っているのかなと思った。
わずかな風切り音にタイヤノイズ、時折右車線を車が追い抜いていく音。しばらくの無音の後、紗希さんが口を開く。
「あの……その」
「はい」
「聞き流してください」
「はい」
相槌もほどほどに、紗希さんの言葉に耳を傾ける。
「……私も、最初の人は学生の恋愛なんで、微笑ましい恋愛経験でした。円満に別れたとかではないですけど。大学で出会って、三年前まで付き合ってた人が二人目で。その人、凄い嫉妬心が強い人で。でも、凄い優しかった人で。……ふっ、優しいだけの人なら良かったんですけどね。良い思い出もたくさんありますし、それ以上に嫌な思い出もたくさんあります。……別れるまでが本当に最悪で。最後に言われたのが、『お前なんて、顔しか無いじゃん』でした。もちろん私だって酷い言葉も滅茶苦茶言いましたけど。何にせよ、その言葉、忘れたはずだったんですけど、残ってましたね」
「ヴッ……」
「……何の鳴き声ですか、それ?」
「いや……あの、……まあ白状しますか。多分その人俺です」
「違います」
それはそう。
「……続けて?」
水上紗希はクールに促す。
「いや……その、自分も二人目の子が一番長く付き合ってたんですけど。うまくいかなかった理由が、俺が……その、独占欲と嫉妬に塗れたクソ野郎だったからで……今の話を聞いて無駄に辛い気持ちになってました」
「……なるほど。嫉妬……しちゃうんですか?」
実家に実在する妄想ノートは黒歴史だけど、人に話せないことは無い。一方で、こっちの話は自分が人生で本当に最もクソ野郎で醜かった、文句なしの人生の汚点の話で、数年は引きずったし、今でもあまり話したくない。
「その当時は、本当ダメダメでしたね。別に今がダメじゃないってつもりじゃないんですけど……それでも、大分反省しました」
「それで?」
何かめっちゃ手厳しくない? 面接受けてる気分になってきた。なぜなぜを五回繰り返す……五回……。
「……長くない上にまとまってない話をされると不快になられる方ですか?」
「違うと思いますよ」
クールだねぇ……。
「というか、そんなに気にしないでください。そんなNGだらけの人間じゃないので。不快だったらそう言いますし。……不愛想なんで、分かりにくいとは思いますけど。ちゃんと言いますから」
すき。
「了解です。……んー、その、嫉妬するのはもう生まれつきみたいなもんだなと思ってます。空気吸うレベルで、どうしようも無い……ってことを理解したら、大分うまく対処出来るようになりました。客観的に見れるようになったというか。『ああ、こういうシチュだと立花伊織って嫉妬するんだな。うんうん、分かる分かる。じゃあ、うまく付き合っていこっか』、みたいな。……ちょっと曖昧な言い方ですけど、こんな感じで考えられるようになってからは、その感情に振り回されなくなったし、独占欲みたいなのも無くなった……わけではないですけど、……その感情に支配される感じは無くなりましたね。『ああ、独占したいのね。報告ありがと』みたいな感じで」
返答は無く、どうやら今の言葉を考え込んでいるようだった。俺の言葉を水上紗希が咀嚼しているな、と思って、そう思う俺ってキモいなって思った。多分もうこれ生まれ持ったものだししょうがないよ。うまく付き合っていこ。はい。
どんな返答が来るのか、怖くもあり、楽しみでもあった。ただ怖さの方がでかい。八対二ぐらいで恐怖心が勝つ。何なら返答が無いとか無いよね? それもう終わりよ?
「……それ……。……それで、伊織さんは……んー……」
めっちゃくちゃ咀嚼してくれてた。何なら咀嚼しきれてない。変なものをお出ししてしまった。
「何か、うまく伝えられないんですけど……それ、結局伊織さんはいいんですか?」
え駄目なん? と脊髄で思うが、今度はこっちが簡単に咀嚼出来ない返しだ。
嫉妬を対処出来るようになっちゃっていいんですか、ってことだよね。え、それって嫉妬があった方がいいんじゃないのってこと? そういうこと? 分からん。分からなくなった時は人に聞くといいですよ。社会人が一億回ぐらい言われる奴。
「それって、嫉妬がある方が良いんじゃないのか……って意味ですか?」
「何ていうか……ちょっとお花畑なことかもしれないんで、あんまり言いたくなくなってきたんですけど」
紗希さんでもお花畑とかいう表現使うんだ……。
「はい」
「……。その……嫉妬するのって、でも、好きであることの一つですよね? あの……別に私がそうだとかじゃないんですけど。それを、悪いものとするのに、何ていうか……」
「切ない?」
「……薄っぺらい表現をすると、そうですね」
切ないを薄っぺらい表現って言ったぞこの人。言葉に対する意識が高すぎる。俺達オタクがJ-POPで百万回ほど酷使されてるこの表現を一生揶揄してるのと違って、この人が言うとなんつうか切れ味があるな。ていうかもうこの人めっちゃ顔が良いただの陰の者じゃない? ってことを本人に言えば絶対あの「ふっ……」って笑いと共に「今更ですか?」って言われる未来が見えた。大分彼女を脳内シミュレート出来るようになってきた。やったね! やったか?
「自分は……違うと思うようになりました」
「そうなんですか?」
「んー……紗希さんって嫉妬ってします?」
「……多分、……いや、まああまりしない方だとは思います。聞いてる限り」
「そうですか。……あの、持論なんですけど、嫉妬ってそれ自体は尊ぶべき感情じゃないと思うんですよ。相手を大好きで、相手のことが大事だから嫉妬する、ってのは健全ですけど、ほとんどの嫉妬って『自分の支配下にあるものが別の支配を受けてて不快だ』ぐらいの感情だと思うんですよね。嫉妬は良いことだとされてる文化も海外にはあるみたいですが」
ソースは俺である。少しだけ悪意のある表現になってるのもソースが悪いよソースが。
「二次元のコンテンツで嫉妬する女の子可愛い! みたいなのありますけど、あれって『嫉妬してる自分に嫌気が差す』までセットで可愛いになってると思うんですよ。ただただ嫉妬してるだけなら魔女ですからね。何て言えばいいかな……嫉妬って感情自体は善悪では無いと思うんですけど、ただ、その度合いが強くなれば強くなるほど、それはただのエゴイズムの延長線上になってくるというか。……すいません、めっちゃ長文で」
俺はこういった人の感情のアレが大好きなアレなので、ついついオタク全開で語り過ぎてしまうのだ! テヘッ。まじで人にこういうの言うのやめときな。もうこれ、何回も繰り返して言ってるよね立花? うぐぐ……人は過ちを繰り返す。ついでにフォローの文章が浮かんできたので再び口を開く。
「……尊ぶべきは、純粋に相手を思いやる気持ちだと思うんです。それは……嫉妬に含まれてるかもしれないけど、でも嫉妬そのものでは無いというか。……紗希さんが言ってたことに対して、今ので多少なりとも回答になってませんか?」
「なってますよ。なるほどなって思いました。……伊織さん、急に饒舌になったんで、オタクだなって思いました」
ピキ――――ッ。今のはキレた音では無い。俺が氷になって砕けた音だ。
何で? 何で急に通り魔してきた? しかも紗希さん無表情が溶けてめっちゃ良い表情になってるし。若干シニカルフェースね。なんかこういうところが陽キャだわ。やっぱ陽キャやこの人。独身男性、拗ねる。
「……す、すいません」
独身男性、拗ね謝罪。
「いえ……良いと思いますよ。さっきも言いましたけど、私はそっちの方が好きです」
温度差で風邪引くわ。
「ど、どういたしまして」
「はい」
独身男性、適切な返答思いつかない。
そんなこんなで人間の心について熱く語っている内に、第一目的地のサービスエリアへと辿り着いた。




