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第3話 菩薩、浮く2

 合コンなんて学生時代全く縁の無かったオタクも、社会人になり二桁回数合コンを経験すると、大体の進行プロシージャーみたいなものは身に着くようになる。特にこの三人は回数こなしてるのもあって、何となくの回し方は勝手知ったるものだった。

 「三人はどういう繋がりなん?」

 というわけで会話初手は大体ここから始まる。司会は佐々木淳之介。回答者は森野春乃さん。

 「えっと、私と紗希が高校大学が一緒で、そんでもえは大学からの仲だから、もう結構長いよね?」

 「そうだね~。もう七年とかだね~」

 「へーすご! めっちゃ仲良いじゃん」

 「そうなんすわ~仲良いんだわ。なっ、紗希?」

 「…………」

 「おい」

 「亀裂走ってない?」

 「いや、これこそ仲の良さよ」

 「確かに?」

 思わずつっこむ男性陣。てかあれ、確か紗希さんって高校大学は……。

 「てことは三人とも大学は東京だったんですか?」

 「お、よくご存知で。あ、紗希情報?」

 「あ、そうです」

 好奇の目線が春乃さんともえさん、そして淳之介から向けられる。やばい……言うんじゃなかった。目線を紗希さんに向けると思いっきし逸らされた。ディスイズハリノムシーロ?

 「そっちのお三方はどういう繋がりなんですかー?」

 紗希さんとの関係を改めて深堀りされるのに身構えていると、もえさんが話を振ってくれる。あれ、むしろこれ腫れ物になってる感じ? 辛いよ?

 「俺たちは……」

 淳之介がこちらを見たので、思考をリセットして口を開く。

 「ビジネス上の関係?」

 「そう、それ」

 「ふっ、ちょっ、それ仲良くなくない?」

 「仲良くないね」

 「所詮ゲームと漫画とゴルフで繋がってて惰性で昼飯一緒に食ってたまに飲みに行く程度の関係だもんな俺ら」

 「それ仲良くない?」

 「一緒にはよくいるな」

 「それ、仲良くない?」

 といういつもの下りで女性陣との距離を詰めつつ、食事が次々と運ばれつつ、会話も食事しながら、楽しい時間をしばし過ごした。というか基本淳之介と春乃さんともえさんが一生喋りつつ、会話を振っていくって感じだった。


 とりあえず判明した情報。三人は都心の某私大出身。春乃さんと紗希さんはメーカー勤め、もえさんは市役所。春乃さんは高校テニス部、もえさんは吹奏楽部、紗希さんは陸上部だったらしい。春乃さんはテニスあるあるで淳之介と盛り上がっていた。あと、春乃さんのインスタの話とか、啓亮のギターがうますぎる話とかでも盛り上がってた。ついでに俺が高校美術部という話でも少しだけ盛り上がった……。永遠に付きまとわる黒歴史である。

 全員での会話も少し落ち着いた中で、紗希さんから声がかけられる。

 「ここ、おいしいですね」

 正面に座る紗希さんは相変わらず綺麗な箸遣いで、ちゃんと食べ終えてから話す。

 「初めて来られました?」

 「うん、初めてだと思います」

 「お口にあって良かったです」

 「はい」

 右手では、淳之介ともえさんが漫画について語っているようだった。この男は見た目に反して年間百冊漫画を読むタイプのオタクである。結構盛り上がってるみたい。こっちの盛り上がり方との対比がえぐい。嫌でもこの前のドライブのことを思いだしてしまう。辛いよぉ……。けどまあ少し冷静に考えると、俺が勝手に抱いている紗希さんとの信頼関係では、自然体で淡々と会話するこのスタイルがパフェコミュなので大丈夫なはず。大丈夫か?

 しかし紗希さん、前の時の印象と一切変わらず愛想を振りまく気がないようで、俺だから塩対応されたという訳ではないのが証明されたのはちょっと嬉しい。分からんけど。男性陣三人が駄目という可能性も全然あるけど。

 いずれにせよ愛想を振りまく必要が無いのは改めて強すぎる。どういう学生時代を送ってたのかすっげー気になる。幸いここには高校時代の彼女を知っている春乃さんがいるのだが、残念ながら俺にはそれを聞くだけの度胸が無かった。悲しいね。

 「紗希さん、俺だから塩対応、みたいな話しましたけど、本当にこんな感じなんですね」

 「そうですよ。陰キャですから」

 「陰キャってより強キャラって感じしますが……」

 「受け取り方次第だと思いますが、それって結局陰キャじゃないですか?」

 なるほど……?

 「……陸上部だったのって、あんまチームプレイが無いからだったり?」

 「あ、はい、そうです。……中学はバスケ部だったんですけど、人間関係が面倒くさくなって」

 「あー……なるほど。凄い偏見ですけど、紗希さんって勝手に敵が増えていってそう。……って失礼ですね、すいません」

 「ふっ、いや、合ってますよ。高校も春乃がいなかったら結構アレだったかもしれないです」

 「呼んだ?」

 すぐに春乃さんが反応する。地獄耳か?

 「……何でもない」

 「春乃さんがいたおかげで紗希さんの高校生活が快適になったって話をしてました」

 このパス完璧なのでは? 紗希さんか嫌そうな顔するのも含みで勝ちである。本当か? 好感度下がってっぞ? あと紗希さんツンデレか?

 「快適? どういうこと?」

 「その……敵が減った、みたいな?」

 「あーーーね、あ、そういやミコ結婚したで紗希」

 「いや、本当にどうでもいい」

 「あっはは、そりゃそうだ」

 ……今の流れだと、ミコさんとやらとひと悶着あったのかしら……? 内輪ネタぶち込み力よ。と思ってたら、わざわざ春乃さんが分かるように解説してくれる。良かった、会話に俺も入ってたらしい。

 「いや、めっちゃはしょって説明すると自分の仲良い好きな相手が紗希のこと好きになっちゃったみたいな? それでこじれたみたいな漫画みたいな話。あの時は面倒くさかったわ本当! ていうかそうだわ、紗希ちょくちょく面倒くさい話あったよねー」

 「本当良い迷惑だった」

 「確かに、ウケることに紗希まじで何もしてないんだよねー。あれは今考えても笑っちゃう」

 なるほど……強者ゆえの苦しみ的なアレか? 有名人税的な。

 「それが、春乃さんのおかげで大分軽減したんですか」

 「あー確かにそれあるな。紗希さま、そこんとこどうなんですか?」

 「……何? 感謝してるけど?」

 「何で喧嘩腰なん? ツンデレすぎる」

 この二人も大概不思議な関係だな……。女子女子した感じのない仲の良さみたいな印象だ。


 一時間半、主に春乃さんと淳之介が喋り倒し、楽しい時間を過ごすことが出来た。こう……新しく知り合った友達同士的な。ここの場で恋愛に進展する組はいるのか、今後の展開に期待。俺? 俺は視聴者だよ。

 三人だと席替えみたいなものも無く、多分啓亮と紗希さんはほとんど話していない気がする。ただ、啓亮はなんだかんだで春乃さんやもえさんと話をしていたみたいだった。淳之介は気を遣ってくれたのかあまり紗希さんに絡みもしてなかったし、とすれば紗希さんの合コンは脈の無い男とぼちぼち喋っただけという、割と具合の悪いものになるが、そこはまあ深く考えない方向で……。考えてもどうせ傷を深める結果にしかならん。

 終点間際で恒例の連れションタイム&支払いどうするか会議が行われ、淳之介の「まあ払うか」に啓亮も俺も合意し、さっさと払って店を後にした。戻ってから女性陣にその旨伝えると、じゃあ二次会は私達が払うわ!ということになり二次会へ。照明は暗いけど人は結構入ってる店に適当に入り、そこから更に一時間ほど歓談して九時になり、そろそろ解散しますか、ということになった。ちなみに席順は淳之介と啓亮が入れ替わり、俺は再び紗希さんの前になった。紗希さんのことを考えると何か悪い気がしてしまうが、でも先にこっちが座ったのであてぃし悪くない。というか紗希さん、三人とも微妙だった感じかなぁ……。


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