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【BL】明かさないこと  作者: 七賀ごふん
矢千深月

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10/19

#10



夜は自分達の世界も眠りにつく。

仕事を終え、特に何をするでもない。矢千は高科と過ごすこの時間が好きだった。

退屈で、それでいて鈍い輝きを放っている。この夜もこっそり宝石箱に入れてしまいたい。だが高科はそれを許さない。


今日のことも明日には忘れるように言う。でも彼は明日の夜にまた同じことを言うだろう。それを一晩で忘れろ、というのは無理がある。


大体忘れた先に何があるというのか。忘れることなら散々してきた。本当はこれ以上忘れたいことなんてない。何も失くしたくない。


本来誰もが持っている大切な媒体を、自分は持っていないのだ。


彼に頭を撫でられるとどうしようもなく安心する。


(どうして……。)


考えても分からない。思考は泡のように弾け、液体となって足元に落ちる。


変な人だ。理解はできない。

彼もまた、自分を理解してほしいとは思ってないのだろう。だから尚さら虚しい……寂しい人間だと思った。俺と同じだ。

「今度こそ……、……から」

睡魔に襲われて瞼を伏せる。その間、ずっと高科の声が聞こえていた。


「深月……」


あぁ……。

まただ。


どうして彼は……眠る前には、自分を名前で呼ぶのだろう。





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