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第26話 選手紹介パート1


『全校生徒の皆さん‼ お待たせしました‼ 間もなく試合開始の時間が迫っております‼ 実況は放送部――』


 体育館に女性放送部員の声が響き渡る。

 その声に体育館内が湧く間、俺と冷は静かに睨み合っていた。


「こんなに早く再戦できるなんてな」

「悪いけど。今回は僕が勝たせてもらうよ」

「それは無理だ。今日、勝つのウチだからな」


 互いに挨拶代わりの醜い罵り合い。

 けれどふと、俺の視線が冷の足を捉える。


「今日はちゃんとシュートするんだろ?」

「練習試合とはいえ、相手はあの海桜だからね。姉さんの了承もちゃんともらったよ」

「白状しやがったな。このムカつくスカし野郎‼ あの時は本気じゃなかったわけだ」

「本気だったさ。本気で君を抑える自信があった。それ自体は嘘じゃない」

「ハッ。それなのにあの結果かよ。人を舐めるからあんなことに――」

「ああ。だからもう君を舐めたりしない」


 冷の黄色い瞳が俺を静かに見ていた。

 その瞳の中に炎が燃えるのを見た気がする。

 それぐらい冷の体から強い気配を感じた。


「精々、40分間コートに立つことだけを目標にすることだ」

「バーカ、俺はお前を倒すために試合に出てるんだ。勝利の二文字以外興味なんてない」


 俺と冷がバチバチと言葉でやり合う中、会場はそれぞれの選手紹介に以降していた。

 まず紹介されたのはそれぞれのセンター。


『噂に違わぬその迫力はやはりキャプテンとしての貫禄か‼ 永玲大学附属高校3年、大樹比呂選手‼』

「ウホッ‼」

「「「ウホッ‼」」」


 会場のアナウンスに合わせて、ゴリラが雄叫びを上げる。

 それに続くように永玲の下級生たちも叫んでいた。


「もしかしてアレを毎試合やっているのかい?」


 自分が将来入部する部活のことなのに、何も知らなかったという表情で冷が聞いてきた。すると答えたのは俺じゃなくて、すぐ近くにいた巨人だ。


「少なくても俺が中1の頃はやってたな」

「……僕もやらないとダメなのかな?」

「俺なら死んでもごめんだね。背が20センチ伸びるって言われても拒否する」


 ゴリラの雄叫び風景を眺めながら世間話をしていると――


『続いて、我が校のゴール下の大黒柱。キャプテンの盾島海斗の陰に隠れて存在感は薄いが、その身長は190センチ‼ 海桜高校3年、東田湊ひがしだかなで‼』

「ふん‼」


 鼻息を荒くして登場した無口な男。

 背は高いのに、纏った空気がやる気満々だと告げていた。

 夏休みの時も思ったけど、雰囲気あるんだよな、この人。


『以上が各校のセンターとなります。続いて各校を指揮するポイントガードの紹介です。正ポイントガードが高熱のため突如出場辞退。いきなりスタメンで大丈夫なのか‼ 海桜高校付属中学3年、神宮寺司‼』

「なんだ、この人を舐め切った放送は。不愉快極まりない」


 眼鏡を怪しく光らせて、中等部の元キャプテン様が怒りを露わにしてた。

 あいつ地味にプライド高いのに、ウチの高等部の放送部は命知らずにも程がある。

 俺は絶対に助けないからな。


『そんなルーキに対して、永玲はバチバチのレギュラー‼ 2年、水川水連みずかわすいれん‼』

「相手は中学生か。よし、まずは一緒にバスケを楽しもうじゃないか」


 さっきベンチにいた170センチ台の選手。

 そいつが爽やかに笑みを浮かべていた。

 それを見て、俺、司、冷の中学生トリオの声が揃う。


「「「なんか生理的に無理」」」

「ハハハ。……キミたち、それはどういう意味かな?」

『続いてシューティングガードの紹介です。永玲大学付属高校2年、村街作むらまちつくる‼』

「「「………」」」


 体育館がシーンとしていた。

 紹介されたのに誰も何も言わない。

 それどころか、永玲の女監督が頭を抱えている。


「どうしたんですか、比呂さんのところのシューティングガード」


 巨人にしては珍しく敬語を使っていた。

 相手は永玲のキャプテンで、1学年上のゴリラ。

 どうやら巨人なりにゴリラを尊敬しているらしい。

 それにしても本当、なんでこの場面でいな――


「すまん‼ 急に大便に行きたくなってのう‼ ガハハハッ‼」


 体育館の入口からもう明らかに2メートル近い身長の男が入ってきた。

 それも大口を開けて笑う縦にも横にも大きい男が。


「もしかしてゴリラ。アレが――」

「バカ者‼ いつもトイレなら、試合が始まる30分前に行けと言ってるだろ‼」


 永玲側のベンチで女監督が静かに拳を握り締めていた。

 どうやらこれも毎度のことらしい。

 やっぱり永玲は永玲で癖が強いな。

 でも今の大男がシューティングガード?

 俺はてっきりもう一人がシューティングガードかと……。


『えーなんと言いますか……また気を取り直して、選手紹介を行っていきましょう。続いては海桜側のシューティングガ―ドです』


 でもあの男が会場の雰囲気を一瞬で変えた。

 それに関しては純全たる事実だ。

 警戒しておく必要は少なからず――。


「言っておくが夏陽。ウチのムードメーカーは俺でも冷でもない」


 親切心なのか、挑発なのかゴリラが俺に声を掛けてくる。

 けれど俺は気にすることなく、その場で軽いストレッチを始めた。


「それがわからないお前じゃないだろ。誰を止めるべきかお前なら――」

「悪いけど、今日はそういう戦略は全部、相棒に丸投げすることにしてるんだ。お前は巨人に負けて、冷は俺に負ける。それが俺の考える最高のシナリオだ。余裕かましてると、第1クオーターで取り返しのつかない事態になるぞ」

「……心底、あのポイントガードを信頼しているらしいな」

「当然だ。あいつと本格的にチームを組んで2年間、俺は1度もあいつのパスを疑ったことはない」

「なるほどな。そういうことなら、俺も水連を疑ったことは一度もねぇよ。全国最強のポイントガードは間違いなくあいつだ」

「ゴリラにしては随分と、仲間に甘い評価をするもんだな」

「純然たる事実だ。試合が始まれば嫌でも格の違いがわかる。それよりも次はお前が紹介――」

『――海桜高校3年、風辻風馬かぜつじふうま‼』


 会場内に告げられたシューティングガードの名前。

 それを聞いた瞬間、バスケ関係者の表情がやや曇ったのを感じた。

 平静なのは海桜選手とベンチ。そして一日マネージャーのフユだけ。

 それ以外の全員が放送部のコールに驚愕していた。

 なぜなら普通に考えればそこには――


「悪いな。もう外からのシュートだけじゃ、物足りなくなっちまったんだ」

 俺はゴリラに向けて、ニタリと悪い笑みを浮かべてみせた。



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