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閻魔と狐――閻魔を継ぐ娘と美人の妖狐――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第二章 人形は私の家。体はまだない。
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10.足は治るのか

 そのまま玄関に座らされ、人に囲まれる。花蓮や麗乃、桔梗は動かない右足をじっと見つめられていた。桔梗が早速右足に手を近づけて、なにかしらの呪文を唱えている。


 お祓いだろうか。なにかの呪いでそうなっているのであれば、早優も人一倍安心しただろう。恐らく、それで動くことはない。

「本当に動かせないんですか?」

 と、花蓮から聞かれる。

「動かない」


「怪我しているようには見えません。なにをされたんですか?」

「すごい勢いで引っかかれた。そしたら、右足が全く動かなくなって」

 麗乃が花蓮の肩を叩いて、二人でリビングの方に向かう。


 紫苑が背後から声を発した。

「あやつらは言わへんと思うさかい、うちが話すなぁ」

 後ろにちらっと視線を向けるが、桔梗が気になる。紫苑のことを見えているのだろうか。そのことを問うてみた。


 すると、視線をちらっと上げるだけで元に戻す。呪文を唱えることをやめ、視線が交わった。

「妖怪や神の存在は、私には見えません。精々悪霊です。ですが、理解はできるので、話していても大丈夫ですよ」

 優しく微笑んでくれる。言葉に甘えて、話を続けた。


「いいよ。続けて」

 紫苑にそう声を掛ける。

「お前さんのその足、あの霊に奪われとる。あやつらがどんな結論を出すか知らへんけど、封印は意味あらへんなぁ。あやつを倒して、しっかり取り替えさんと」


「そんなこと出来るの?」

「あやつから血が噴き出てたのは覚えとるやろ?」

「うん」

「霊がまだ存在しとる時には、その血は出ていた。浄霊すると血が出なくなっとる。その魂が存在しとる限り、あやつの物にはならへん言うことなんやろうけど、問題はお前さんが死んでへん言うこと。わかるかぁ?」


 思い出す。腕を取られた彼らは、自殺と事故ということになっている。早優は足を取られ、一切の力が入れられなくなって崩れ落ちてしまった。


 話によれば、駅の飛び降りについてはスマホを落とした拍子でということだったが、恐らくスマホを持っていた手が奪われたことによって、線路に落ちてしまったということだろう。慌てて取りに行った時に、手が動かなくなった戸惑いと電車が迫ってくる焦りで混乱し、そのまま轢かれてしまった。


 父親の方はどのように亡くなったは分からないが、きっとこの手のことでなにかしらの事故を起こしてとんでもないことになったに違いない。


 一方、早優は生還した状態。これから、どうなるかは誰にも予測ができない。だからこそ、より一層様々な不安が頭をよぎる。このまま死ぬのか、あるいは壊死をするのか。


「まぁ、ある程度は覚悟するんやな」

 そう冷たく突き放して、黒い靄となって早優と同化した。こんな時に心配してくれるような性格ではないと思っていたが、いざこうして突き放されると、寂しさや不安が更に精神を蝕んでいった。誰かに温かく支えてもらいたい。そんな温もりが欲しくなってくる。


 麗乃が視界に現れる。顔はこちらには向いておらず、桔梗に向いていた。

「どう?」

 それに一切答えず、未だお祓いを続けていた。そう頑張ってくれているだけありがたい気持ちと同時に、手を打てないという苦しさもある。


「ありがとう、桔梗さん」

「怪我人は静かにしてなさい!」

 こんなに強く怒られたのは、いつ以来だろうか。学生時代に花蓮から言われたのが最後な気がしている。しかし、頑張っても現実は変わらない。


「桔梗」

 と、麗乃が言った。桔梗は無視をしている。

「足はあいつに取られてる」

 唱えている声色に変化があった。動揺や悲しみ、様々な感情を感じ取れる。麗乃がその後を紡ぐことなく、じっと桔梗を見つめていた。


「紫苑さんが言ってたんだけど、戻ってくるかもしれないって」

 そんなに信じていないが、それを口にしてみた。桔梗が口を止め、麗乃にも視線を向けられる。花蓮が早優の両肩を持って、必死な顔をして口を開けた。


「ほんとですか?」

「でも、あいつを完全に倒さないといけないって」

 それに反応があったのは、麗乃だった。

「それくらいの霊だし、後一歩で倒せそうではあるけど、退魔刀を使えるのはこの中にいないよ。完全に息を止めるのは難しい」

 未来が暗くなっていく。今でさえ、過去の出来事が走馬灯のように思い出されていきそうだ。一つが二つ、楽しい思い出が呼び起こされた。嘉成家にいた頃記憶ではなくて嬉しかったのだが、その出来事も仮初だったかもしれない。これが本来、自身に似合う末路なのだろう、と。


 麗乃はため息を吐いた。

「花蓮さん、許可してくれませんか?」

「どうしても無理ですか?」

 言葉を絞り出している。どういうことだろうか。

「どのみち、会には報告しないといけません。協力を要請しないと」

 そういうことか。花蓮が常日頃から早優を遠ざけたかった如月の会に、どう足掻いても関わりを持ってしまう。


「早優さんのことは話さず、なんとか出来ませんか?」

「逆に聞きたいんですけど、どうしてそこまで?」

 早優は目を下に背けてしまう。激しい心臓の鼓動を落ち着かせることが出来ない。

「距離を置きたいんです。たとえ、世俗とは相容れなかったとしても」


 どのように答えるか。無言の空気感というのは、時として緊張させる。

「わかりました。なんとか考えてみますけど、難しかったらその時は覚悟してください」

 花蓮は頷く。現状はこれで解散となった。深夜を回っているので、麗乃と桔梗は早優の家に泊まることになり、花蓮と桔梗に協力してもらって早優の部屋に誘導してもらう。

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