表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

8話. 成長

 とにかく早く帰りたい。こんな地獄の森から。


 陸は頼まれた買い物を済ませ、帰路の森を駆けていた。

帰路では陸はただただ帰りたい衝動に駆られ、出てくる魔物には魔法をぶつけひるませ、走って無視した。


 行き道では魔物しか気にならなかったからわからなかったが、なかなか道も足場が悪く、突っ走るには少々神経を使う。

凸凹すぎて、馬車は通れそうにない。

これもエムリーさんが考えてここを走るように指示したのだろうか。


明らかに他の魔物よりも体力の有りそうな大きなオークが現れた。


 「風刃!」


いつも通り風刃を放ったが、オークはひるまなかった。


 「お前タフだな、どいてくれよ」


 「ガァァァァ!!」


 オークは手に持っている棍棒を陸に向かって振り下ろした。

陸は躱したが、棍棒が地面とぶつかった途端、大きな衝撃が地面を揺らした。


 「おー、まじか。行きのオオカミより強いんじゃね」


 陸は態勢を立て直し、オークへ向けて腕を構える。

普通の魔法じゃ、このオークには効かない。

だがこのオークは、パワーとスタミナはありそうだが、動きが遅い。

走りながら、オークとの距離を縮めていく。


 「螺旋風!!」


今度は蒼炎なしの、螺旋風本来の火力。

オークの目の前で放った螺旋風は、陸の手元を中心に荒い風を巻き起こし、オークの体を切り刻む。


 「ガアアアアア!!」


 「っ!? しまった!」


オークが抵抗し、棍棒と腕を振り回した。

近距離で螺旋風を放ったため、避けきれない。


 「ぐぁっ!」


 とっさにカバーした左腕にモロに食らってしまった。

棍棒についている棘が陸の腕に突き刺さる。

左腕に激痛が走る。


痛い、めちゃくちゃ痛い。

この世界に来てから味わった痛みの中で、ダントツで痛い。


 オークは切り刻まれた体で、痛みに耐えながら再び棍棒を高く掲げて構える。

怯んでばかりじゃ、負ける。


 「負けてたまるかよ!!」


もう一度陸はオークに向かって右手で拳を作り、構える。


 「螺旋風!!!」


 「ルァァァァァ!!!」


先程とは違い、風を右手に纏わせ、拳を思いっきり振りかざした。

それと同時に、オークが振り下ろした棍棒を弾き飛ばし、攻撃を防ぐことにも成功した。


 「オラァ!!」


オークの顔面に強く固めた拳をぶつけた。

オークは耐えきれず、その巨体は地面に倒れ込んだ。


オークは動かなくなった。

と同時に、徐々に紫色の煙を出しながら消えていった。


オークが倒れていた場所には、儀式で教えてもらったあの魔晶石が落ちていた。


 「魔晶石だ......! 儀式以外でも使い道はあるのかな。エムリーさんに見せよう」


今度こそ、落ち着いて村へ帰ろう。

疲労困憊で腕は上がらず、足も走る気力が残っていない。


 「ゴァァァァァァ!!!!」


 「嘘、だろ......?」


村までもう少しのところで、再び魔物が現れる。

行き道で吹っ飛ばしたようなボスを持つ群れ。


 「ふざけんじゃねぇよ」


陸にはもう、動く気力はない。

ならば


 「高火力な技で、邪魔なこいつらを、ぶっ飛ばす!」


深い傷を負っている左手は使わず、もうほとんど上がらない右手を必死に上げて、構える。


 『殺せ』


得体の知れない声と同時に、また脳裏に蒼炎がよぎる。

もう何も考えてられない。


 「どけ......蒼炎・螺旋風っ!!」


魔物の群れは、蒼炎の嵐を前に、為すすべ無く燃やし尽くされた。

生きる者への憎悪さえ感じるこの無慈悲な蒼炎に、陸は悲しさを憶えた。


 「いってぇ......」


陸の右手は、荒れ狂う自分の魔法に耐えきれず、傷だらけになっている。

あの時聞こえた声は、何だったのだろう。

もう何も、考える気力すら残っていなかった。


 「帰、らなきゃ......」


エムリーさん、皆......


後ろから、魔物が来る音がする。

もうダメか、と陸は倒れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ