5話. 戒めの炎
エムリーさんは続けた。
「まず、お前が使える属性は、炎だけじゃなかった。風も使えたのだ」
だから、最初は風が吹き荒れていたのか。
「そして、2つ目に現れたその炎は、"戒めの蒼い炎"だ。その炎は、この代々受け継がれているこの村の村民で、数十年に一度の人間にだけ現れるんだ。その炎を使う人間は、魔法を使うたび、命を燃やす。つまり寿命が少しずつ短くなっていくのだ」
「え......じゃあ、俺はすぐ死ぬんですか?」
「すぐ、とは言わないが、普通の者よりは短くなるだろう」
俺、早く死ぬのか。嫌だ、そんなの。
こわ、にげたい、普通に。
ていうか、おかしくないか?俺は村民じゃない、部外者なのに。
「村長、おかしくないですか?俺は元々村民ではないのに」
「さっき誓いの儀式をしただろう」
「あ......」
あれでもう完全に村民扱いされたのか。
「この戒めの炎を使うものは、大体が発現した途端に、炎の強さ故に命が燃やされ、耐えることができずに死んでしまう。強い意志を持ち、その炎に負けない器の大きさがあれば発現した瞬間は耐え抜くことができる」
「俺はその条件を満たしたってことですか?」
「そういうことだ。お前は幸運なのか不幸なのか......まだ魔法の使い方はわかっていないだろうからその炎を使うことはないだろうが、くれぐれも使うことのないように」
「はい。エムリーさん、風はどうすれば......」
「そうだな......風魔法について扱った書物があったはずだ。それをあげよう」
「ありがとうございます」
皆目の前でおきた衝撃の出来事に、言葉を失っていた。
恐れるような顔をする者もいれば、俺のことを心配してくれているような顔をする者もいる。
「ひ、ひとまず皆のもの、晩飯は皆で食うと決めただろう。落ち着いて、取り敢えず今は食事を楽しもう」
村民は皆、少し落ち着きを取り戻し、全員で食事の支度を始めた。
力のある者たちはテーブルや椅子を運び、子どもや残りの者たちは持参した松明に火をつけたり、楽しそうに装飾を始めた。
村にたった一つの食堂のシェフたちは、全員分の料理を作り始めた。
さっきまでとは打って変わって、賑わってきた。
できるなら、こんな力とっとと捨ててこの世界から逃げ出したい。
でもそんなことできない、王妃の願いを聞いて、それを叶えないと。
なんか、まだまだ遠いな......
「なに突っ立ってんだ、お前も手伝え、リク」
「は、はい」
村長が大人二人で運ぶような大きい机を担ぎながら言った。
一旦今は、先のことは考えないでおこう。
その夜は賑やかだった。村の皆と食事をして、いろんなことを教えてもらった。
まず、村の話。
この村は、陽炎村と呼ばれていることを教えてもらった。
数百年前、当時炎魔法の頂点に立っていた偉大な魔法使いが、ここに陽炎村を作り、数人で移り住んだらしい。
そして、この戒めの炎についても教えてもらった。
この炎は昔、その偉大な魔法使いが、強大な魔物から村を守った時、その魔物にかけられた呪いなのだという。
この村の人々に一生かかり続ける呪いだと。
その魔物は、未だ倒されておらず、寿命で死んだと考えられており、なんとその魔物は蒼い炎を使っていたらしい。
色んな人と話して、楽しくご飯を食べて、幸せだった。
この平穏が長く続けばいいのにと思った。
でも、ここに長くいるわけにはいかない。これから強くなって、城へ行って王妃に会わなければ。
少しも気を休める暇はない。
「では皆、楽しかった、ありがとう。これにて解散とする!」
村長の声で、皆片付けを始めた。
俺も手伝い、片付けを終わらせ村長の家に帰った。
「リク、明日からお前を鍛え上げるからな! 覚悟しておけよ」
「はい!!」
もうすっかり日は落ちて、真っ暗だった。
帰路の草原では暗すぎたので、村長が炎で明かりをつけてくれた。
「......?」
目を凝らすと、人影のようなものが森の方に見えた。
暗すぎてよく見えない。こちらが見ていることを悟ったのか、たちまち姿を消した。
誰だったのだろうか。まあ勘違いかもしれない。
気になるけど、今は一旦帰ろう。体を休めて、明日からの修行に備えるんだ。
陸は知らなかった。
後になって、この勘違いを勘違いとせずにいたならば、と後悔することを。
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