4話. 儀式
儀式って......なんかワクワクするなぁ。俺はどんな力を得られるんだろう。
儀式を受けるため、村長の後ろを歩いていた。
村長は村のさらに奥、草原に出て、山の方へ向かう。
外は薄暗く、日も落ちかけ、真っ赤な夕焼けだった。
他の村人たちも続々と山へ向かう。
「そういえばエムリーさん、なんでこの草原で戦いが?」
草原の火が消えているのを見て、思い出した。俺が心を決めたキッカケ。
「あぁ、それはな、ここで強い魔物の群れが現れたんだ。普通魔物は強ければ強いほど単独で行動するはずなんだが、なぜかそのときは群れていたんだ」
「そうなんですね。エムリーさんは戦ったんですか?」
「勿論。放っておけば村が危ないからな。木属性の魔法を使う魔物だったから、思ったより苦戦はしなかったがな」
属性にも相性があるのか。恐らく草原のツタが蠢いていたのはその魔物による魔法だろう。
思い出すだけでも怖い。ツタに拘束され炎に熱されるあの時の恐怖。
大丈夫、今はなにもない。頼もしい村長が傍にいる。
「今からやる儀式は、目覚めの儀式だ。お前の中に眠る魔力を呼び起こす。そこで使える属性も確定する。俺は炎だと思うがな」
「お兄ちゃん炎だったらユアといっしょ!」
「そうだね〜」
そんなこんなしていると、山の麓に着いた。
麓には、屋根のない木で造られた広いステージのようなものがあった。
真ん中には2つの座布団と小さな器が向かい合うように置かれてあり、四隅には松明が高く建てられている。
村長に連れられ、村長と俺はその座布団に座った。
周りの村民も、ステージの周りに続々と座っていく。
村人の一人が、村長の前に置かれてある小さな器に酒を入れた。
「お前は未成年だから、ただの水だ」
あ、そこは配慮してくれるんだ。
村長は、これは誓いの魔法だ、と言って短剣で手のひらを切った。
その傷口からは炎が燃え出した。
俺も誓いのため、そして後の目覚めの儀式のため、渡された短剣で手のひらを切ることになった。
切った傷口からは、炎が燃えだした。
ん......たまに、蒼く燃える?まぁ、いいか。
村長が器を高く掲げた。
「ここに、イズミリクを、村民として認めることを、誓う」
俺と村長は器を交わし、飲んだ。
村民が皆拍手をしてくれた。
「よし、では魔力を呼び起こすとしよう」
そう言って村民が持ってきた小さな石を、二人の真ん中においた。
「これは魔晶石。魔物を倒すと、稀に落とすことがある。魔力が眠るものはこれに触れることで、呼び起こすことができる」
魔晶石は、薄く光り、青くなったり赤くなったり、様々であった。
これに触れることで、力が手に入る。
すごくワクワクした。
「では、触れてくれ」
「はい」
魔晶石に手が触れたその時、俺の周りを激しく風が包んだ。
風で松明の炎が消えてしまった。
魔晶石は緑色に輝いている。
体の奥底から力が湧いてくる。
これが、魔法!!
風がだんだん収まってきて前を見ると、村長が怪訝な顔をしている。
「待て、おかしい。なんで魔晶石が赤く光らない?まさか、"炎"じゃない!?」
「いや、村長!また魔晶石に魔力がこもり始めました!」
「まさか、ぐっ」
また魔晶石が光った。今度は青く。
今度は風じゃなく、蒼い、炎。
激しく炎が俺の体を包む。
力が湧いてくるが、それ以上に湧いてくる違和感。
この力は、俺の力じゃない。
なにか忌々しい力を感じる。
この力が、俺の体を蝕んでいくような感覚。怖い。
蒼炎が落ち着いた。
周りは騒然としていた。
顔を向けると、恐怖を感じているような顔をしている者もいる。
「エムリーさん、どうなってるんですか、俺は......」
「これは、予想外だ......」
エムリーさんも冷や汗をかいているようだ。
エムリーさんは続けた。