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3話. ユメ

 この大きな背中は、何を背負っているのだろう。

エムリーさんは何を経験したんだろう。村長の顔色一つでここまで考えることになるとは思わなかった。


 そんな暗いことはまた今度にしよう。今はただひたすらにしんどい、休みたい、寝たい。


 「お前の部屋はどこにしようかな。そうだ、2階に空き部屋があったな」


村長はそう言って俺を2階の部屋へと案内した。

 部屋に着くやいなや、俺は部屋の隅にあるベッドに吸い込まれるように飛び込んだ。

 とても広い訳では無いが、程よい広さで心地が良い。ベッドも程よい硬さ、程よい高さ。窓からは程よい暖かさ、程よい日差し。なんか全部程よい部屋だ。


 「ここで暫く過ごせそうか?」


 「はい、十分です。ありがとうございます、こんなに良くしていただいて」


 「良いんだ。これから伸びそうなやつを鍛え上げて修行相手にするのが楽しみなだけだ」


 「は、はは...(こぉぉわ)」


 「直ぐ側にに川があるから、そこで体を洗うと良い。ボロボロだからな。洗ったら寝てくれて構わないが、用事があるから、夜には起きてもらうよ。じゃあ、ゆっくりな、リク」


 「ありがとうございます!」


 俺は速攻で川に向かい、水で体を洗い流した。

思ったより擦り傷が多くて染みたが、痛みは無視して無心に体の汚れを洗い流した。

 家のお風呂が恋しい。温かい湯船に浸かって疲れを癒やしたい。でも贅沢は言ってられない。ここじゃ元の世界とは生活様式がまるで違うんだ。


 洗い終わって、村長が渡してくれた寝巻きを着て部屋に戻った。寝巻きはどこか、浴衣に似ている。

部屋に入って、改めてしっかりベッドにダイブした。


 今日はひたすらに疲れた。朝から森に入って走り回って、抜けた先は燃える草原で、命からがら逃げたら優しい村長のいる村に着いて。

 恵まれている。周りには感謝しかない。


 そんな事を考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。


_______________________________


目を、開けた。

そこには真っ白な、果ての見えない世界が見えた。


ザクッ、と嫌な音がした。それと同時に、怒号が聞こえた。


 『死ね!!死ね!!お前のせいで!!お前の!!せいで!!!!』


誰、だ?

誰かが、折れた竹刀を持って、俺の腹を突き刺した。


 何度も、何度も、ただ残酷に。

白い世界が、俺の血で赤く染まっていく。


痛みを感じない。何度も刺されているはずなのに、何も感じない。

声を出そうとしても、口を開けても、声が出ない。


 ただあるのは恐怖、誰なのかもわからない人間から、ただひたすらに向けられる俺への憎悪。

そして、何故か俺の瞼から溢れ出る涙。

なぜ泣いているのか、自分でもわからない。

 怖い、この場を離れたい、なんで俺がこんな目に。


......逃げたい。


白かった世界は、赤く、黒く染まっていた。

もう何も、見えない。


 『......お前の、せいで!!!!!!』


一際大きな嫌な音と共に、意識が、途切れた。

_______________________________


 「......い、おい!!大丈夫か!!!」


目が覚めた。

目の前には、不安げな表情のエムリーさんとユアがいた。


 「お兄ちゃん、大丈夫?......うなされてたよ?」


なにか物凄く恐ろしい夢を見た気がする。

気付けば、大量の汗をかいていた。


 「...ハァ、ハァ...すみません......ありがとう、ございます。大丈夫、です」


 「本当か?ひどいうなされ様だったぞ。しんどいなら、用事はまた明日でも」


 「本当に、大丈夫です。怖い夢を見ただけなんです。それに、用事っていうのがどんなことが、すごく気になるし...!」


精一杯、笑顔を作った。少しは安心してくれたかな。

夢の内容を思い出せない。思い出したくもない。

今は、目の前のことにだけ集中していたい。

顔をパン、と叩いて気力を上げる。


 「用事って、何なんですか?」


 「そうだな、用事というのは、お前の魔力を引き出す"儀式"のことなんだ」


 「"儀式"......」


どんな事が起きるんだろう。楽しみだが、それと同時に怖さもある。

でも、俺は心に決めたんだ。ここで強くなるって。


その"儀式"を受けるために、ベッドから体を起こした。

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