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2話. 家族

 村長に連れられて、村の奥の方へ歩いていく。


 周りの人から視線が集まる。

それもそうか、すすだらけで、服もボロボロで足引きずりながら歩いてるんだから。

 家は大体一軒家が多く、レンガ造りだ。村の人口は見たところそんなに多くなさそうだ。

お昼時だからか、食堂らしきお店も盛んで、皆仲が良さそうに会話している。


 「村長!今日ここで飲まねぇか?」


中年の村人がお昼時にも関わらず酒を飲みながら言った。


 「また今度にさせてもらうよ!この子が来てちょっと忙しいからね」

村長は俺の背中をバンバンと叩いた。


 「誰だそのボロボロのガキは?」

ガキって...もう高校三年だぞ。


 「東洋人っぽいんだがなぁ。さっきの魔物刈りに巻き込まれたみてぇだ」


 「何だそういうことか。しかしどうした?村長さんが自ら連れ歩くたぁ」


 「こいつを"視る"とどうやら炎の才能がありそうなんだ。しかもやる気満々でな」


 「そりゃあいいこった!!みっちり鍛えてやれよ!ガハハハハ」


声が大きいな。まぁでも愉快な人だった。

村長は手を振りながら中年村人をあとにした。


 「エムリーさん、炎がどうのって、そんなに関係あるんですか?」


 「まぁな。この村の大体の人間が炎魔法を使うんだ。向いている魔法は基本遺伝で決まるからな」


 「俺も遺伝ですか?」


 「お前みたいなのは例外だろ。転移なんてのはよくわからないしな」


それもそうか。

そんなこんなしている間に村長の家らしき一際大きい家に着いた。


 「おとおさん、おかえり!!」


 「おお!ただいま!ユア!」


 可愛らしい村長の娘らしい子どもが飛び出してきた。

赤と黒の長い髪を後ろにくくってポニーテールにしている。


 ん、赤髪......?村長は黒いのに、なぜ......?

二人の様子を見てると、とてもそんなことは聞けない。また機会があったら聞くことにしよう。


 「娘さん、ですか?」


 「娘のユアだ。来年から中等学園に通うんだ。お前は基礎が何もついてないから学園に行くとかいう段階じゃねぇな」


ハハハ、と笑いながら言った。

中等学園...。中学校みたいな感じか?


 「お父さん、この人だぁれ?」


 「この人はリクっていうんだ。道に迷ってたからここに泊めてあげるんだよ、暫くの間ね」


 「おお〜、じゃぁお兄ちゃんみたいな感じだね!」


 ユアがそう言った途端、村長の顔が曇った。

なにか、あったのか...?何だこの村長の悲しげな顔は。


 話題を、変えないと。


 「が、学校ってどこにあるんですか?」


 「あ、あぁそうだな、学校は街にあってな、ここからだとだいたい6キロってとこか」


よし、村長の顔も元通り......


 「6キロですか。へぇ、6キロ...へぇぇ。6キロ......?」


 え遠くない?歩いて一時間以上かかるでしょそれ。あと距離の単位一緒なんだへぇぇ。

ま、まぁでもこの世界だと馬車とかあるのかな。ロマン溢れるなぁそりゃ。


 「馬車とかで行くんですか?」


 「?...徒歩だが?」

 「ユア歩いていくよ!!」 


 「へ、へぇぇぇ」

バケモンじゃねぇかこの子。

あと村長はなんでそれがさも当然かのように言ってるんだ。可愛い子には旅をさせすぎだろ。


 あれ皆それが当たり前なのか?

だとしたら俺ほんとにここで生きていけるのか???

ダメだ、諦め思考に入ってる。

 ポジティブに捉えよう!俺はこんな凄い人のもとで修行ができるんだ!ラッキーじゃないか!


 「そうだ!!お父さんが言ってた技、ユアできたよ!!」


 「そうかできたか!見せてくれるか?」


うん!と活発に答えて近くの木に近づいていく。

ん〜〜〜なぁんか嫌な予感がするなぁ。


 ユアが拳を構えて木に打ち付けた。


 「ふん!!!!」


 拳と木がぶつかり合う瞬間、拳が炎を纏い、衝撃とともに木に着火した。

炎がどんどん燃え盛っていく.....。


 「諦めたい...今すぐ......」

最早苦笑いしか顔に浮かばない。


 「不安そうな顔してんなぁ、リク。安心しろ、お前才能あるから多分大丈夫だ」


 「ありがとう、ございます」


 そうだ、村長も才能があるって励ましてくれてんだ。こんな小さい子にできて俺にできないわけがない。

ていうかそろそろ疲労溜まりすぎて限界なんですけど。微笑ましいけど。


 「そろそろ家入ろうか、疲れただろう」


 「はい...あ木は燃えたままなんですね」


 「水ぶっかけりゃ戻る!家入るぞー」


そんなノリでいいのか。まぁ、いいか。早く休みたい。


娘を肩に乗せて家に入っていく村長の後について行った。

村長の背中は、なにか悲しい過去を背負っているように感じた。

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