表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

9話. 拳士

気がついたら、見慣れた天井があった。


 「ここは、エムリーさんの家……?」


ボスみたいなオークを倒して、その後倒れたはず……


 (エムリーさんが見つけてくれたのか?)


 「お、目を覚ましたかリク」


 「エムリーさん!なんで俺はここに?」


 「言っただろう。お前の安否を図る術はあると。お前が倒れたことくらい俺の目でわかる」


 (すごい……どうやって見つけたんだろう)


 「本当に、ありがとうございます」


 「良いんだ。無理矢理こんな厳しい修行をさせた俺にも非がある、すまない」


 「いいんです。俺はあの道を通って成長出来ました」


風刃、螺旋風、それから蒼炎の使い方……

色んなことが実践を通してわかった。


 「うむ。そのようだな。今から見せてくれないか?裏庭で」


 「もちろんです!」


 「だがまぁ、そんなボロボロのままじゃしんどいだろう。治癒士を呼ぼう。ちょっとまっててくれ」


そう言ってエムリーさんは外へ行った。


 (治癒士……? 回復させてくれる人かな?)


程なくして、エムリーさんは一人の女性を連れて部屋へ戻ってきた。

治癒師という役職が似合いそうな温和な表情の女性だった。


 「あなたが噂の"蒼炎"ね。私の名前は、ベル。この町でしばらく生きてきたけど、戒めの炎は治癒したことがないから、確実に治るとは言い切れないわ」


 「いえ、ぜんぜん大丈夫です。ありがとうございます」


ベルは早速陸の治療に取り掛かった。

普通の人間にも治癒できるらしいが、炎魔法を使える者に対してはより効果のある治療ができるらしい。


ベルは陸の治療を進めていくうちに、どんどん顔をしかめていった。

陸の体の傷自体は順調に回復していっている。


腕に負った火傷痕を除いて。


 「蒼炎はやっぱり、呪いなのね。あなたが敵から受けた傷の治癒は完了したわ。ただ、蒼炎を使って負った傷に関しては私には治せない。蒼炎を使うことは自傷行為、多用することは禁止。これだけは肝に銘じておいて」


 「はい......わかりました」


最後、オークに対してつい魔力を込めすぎてしまったからか、腕には火傷痕が残っている。

強い代わりに代償も大きい。寿命も縮まる。

蒼炎(これ)は危険な魔法なんだ。


 「ベル、治癒は完了したか? 戦いたくてたまらないんだ」


 「疲弊してるリクを戦わせるのはどうかと思いますよ? 村長」


 「いいんです、ベルさん。俺もエムリーさんに技を見せたい」


ベルは不満そうな顔をしていたが、渋々了承した。


村長は嬉しそうにリクを裏庭に連れて行った。

裏庭のステージに二人は上がり、構えた。


 「よし、今のお前の技を見せてくれ!」


 「はい! 行きます!」


陸はまず、風刃を放った。

村長は炎で迎え撃つ。


 「ぬるいぬるい! もっと本気で来い!」


 「風刃!」


陸は村長の周りをぐるぐる回りながら、風刃を連発した。

当然のように炎が風をかき消す。


 「まだまだ......!?」


巻き上がった煙に混じって陸が村長の懐に飛び込む。


 (エムリーさんは拳士とは言ってなかった! ここは俺の領域!)


剣道で培った、相手との間合いの測り方。

距離をぐんと縮め、村長の腹に向かって手のひらを突き出す。


 「螺旋風!!」


掌底と螺旋風を村長の腹に同時にぶつける。


 「うおっ! やるな!」


村長は嬉しそうに拳を高く構えた。


 「えっ......」


 「そんなぬるい攻撃なら、耐えられるんだよ」


陸はすぐに手を離し、守りの姿勢に入る。


 「火炎・重圧拳!」


構えた村長の拳炎を纏ってが振り下ろされる。

陸は間一髪でもろに喰らわないように避けられた。


 「ぐっ......いってぇ」


 「よく急所を避けたな。だが次で終わりだ」


村長は深く腰を下ろして構え、拳を握りしめた。


 (このままだと何も出来ずに終わる。そうだ!)


陸は先程の村長の構えを真似て、拳を高く掲げた。

足を素早く動かし、距離を詰める。


動く時の速さと遠心力を使って、拳を振り下ろす。


 「 迅 風 拳 !!!!」


 「なっ........!?」


拳に激しく荒い風が吹き荒れ、纏わりつき、村長の顔に直撃する。

手応えはたしかにあった。


だが村長は一切ひるまなかった。


 「いい"拳"だ」


村長が構えた拳に熱い炎が纏わりつく。


 「終わりだ」


陸はその瞬間、意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ