当たり
「かしこまりました」
ミミリは一瞬、心配そうな顔をしましたが、すぐに表情を戻し頷きました。
……さて。
王太子妃殿下は、どんな方なのでしょうか。
数日後には私が正式にお披露目される夜会が予定されているのに、わざわざ会いに来られるなんて。
いい方に考えれば、私と仲良くしてくださるつもりがある、ということですね。
悪い方に考えれば、ジュリアン殿下の妻たる私に何か言いたい事があるということ。
どちらにせよ、楽しい1日の始まりになることには、違いありません。
私はうっとりと微笑みながら、王太子妃殿下の来訪を待ちます。
「リーネ殿下、王太子妃殿下がお見えです」
控えめにミミリがノックしてくれたので、立ち上がり、お迎えします。
「お初にお目にかかります、王太子妃殿下。マロト国より参りました、リーネと申します」
一礼して、王太子妃殿下を見つめます。
王太子妃殿下はというと……。
「初めてご挨拶いたします、リーネ殿下。アスノと申します。私のことは、どうかアスノとお呼びください。同じこの国を支えるものとしてとして、よろしくお願いいたしますね」
ゆったりと微笑まれたのは、さすがは王太子妃殿下の貫禄といったところでしょうか。
しかしこれだけだと、ジュリアン殿下が本当に懸想している相手が、アスノ殿下なのかわかりませんね。
「アスノ殿下、こちらこそよろしくお願いいたします」
ひとまず、アスノ殿下をソファまでご案内しました。
ミミリが紅茶を淹れてくれる間、アスノ殿下をこっそり観察いたします。
愛らしい桃色の瞳に、柔らかそうな金の髪。
美しいというよりは、可愛らしいという形容が似合うお顔立ちですね。
ミミリが、紅茶をそれぞれに給仕してくれました。
「……リーネ殿下」
アスノ殿下が口を開きます。
「突然ですが、私がここに来たのは、 他でもないーージュリアンのことです」
あらまぁ。
躊躇いもなく、呼び捨てにされた私の旦那様の名前に思わず、笑ってしまいそうになります。
けれど、それを表に出すのはあまりに愚策なので、驚いた顔をして頷きます。
「ジュリアン殿下が、なにか?」
私が尋ねるとアスノ殿下は、ぎゅっと、手を握り締めました。
その姿は小動物のようで、庇護欲を誘いますが……。
「ジュリアンは、昔から女性に対する扱いが雑で……どうか、誤解しないであげてほしいのです」
……なーるほど。
これは、もしかしなくても、ジュリアン殿下のお相手は、アスノ殿下で当たりですね。
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