朝食
朝の支度を整えて、食事の間へと向かいます。
食事の間は、国王夫妻と王太子夫妻のものとは分かれているので、とっても気楽です。
さあて、ジュリアン殿下はいらっしゃるでしょうか。
わくわくしながら扉を開けると、ジュリアン殿下はいらっしゃいませんでした。
「……そうですか」
夜を共にしないのは、愛する方への操のため、というので理解はできます。
しかし、食事も一緒にとるつもりがないとは。
仮にも結婚した夫婦として、一緒にやっていくつもりがないのでしょうか。
いえ、まだ決めつけるのは早いですね。
もしかしたら、ジュリアン殿下がお寝坊さんの可能性もございますし。
私が席に着くと申し訳なさそうに、ジュリアン殿下の侍従が話しかけてきました。
「リーネ殿下」
「はい」
なんとなく気まずそうな顔から察しはつきますが、あえてにっこりと微笑みます。
「……その、大変申し上げにくいのですが、ジュリアン殿下は今朝は朝食をお部屋で食べられるそうです」
初夜に何もなかったこと。
そして、仲良くやっていく気がないこと。
……の証明のように思えますが。
初夜に何もなかったことは、すぐに知れ渡ることになるとはいえ。
妻を迎えた王子としてどうなのでしょうね。
「勝手にしろ」と言われたことを思い出します。
言質はとりましたし、私は私で勝手にするといたしましょう。
もしかしたら、ジュリアン殿下は、私に愛されるのが怖いのかもしれません。……そう思えると、可愛らしく思うようになってきました。
「……そうですか」
私はしおらしく頷き、微笑みました。
「ジュリアン殿下は忙しいお方ですから、仕方ありませんね。どうか、お気になさらずと伝えてくださる?」
「かしこまりました」
侍従が気の毒そうな顔で頷いたのを見て、私は内心でにっこりと笑います。
侍従も味方につけられればそれが一番手っ取り早いです。
侍従から私の様子を話してもらって、ジュリアン殿下には、私という存在を意識してもらいましょう。
侍従が去っていったのを確認して、ベルを鳴らします。
朝食のスタートです。
◇◇◇
朝食はとっても美味しくいただきました。
給仕たちにちゃんとお礼を言ってから、食事の間を後にします。
お礼を言うのをはしたないと言う方もいらっしゃるでしょう。
でも、私はそうは思いません。
身分差を明確にすることは大事ですが、いい仕事をしてもらったときは、お礼を言うようにしています。
それにお礼を言われて嫌な気持ちになる人はいませんから。
食事の間から自室に戻り、寛いでいると、ミミリが顔をしかめました。
「……どうしたの?」
「王太子妃殿下がお見えですが、お会いになりますか?」
王太子妃殿下。
ミミリ調べによると、ジュリアン殿下が一番懸想している可能性の高いお相手。
まさか、そんな相手から私に会いにきてくださるなんて。
今日はいい1日になりそうです。
「もちろん、お通ししてちょうだい」
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