翌朝
「……は?」
私の言葉がよほど予想外だったのか、ジュリアン殿下は、ぱちぱちと瞬きをされました。
「ええ。ですから、私があなたをーー」
「聞こえている。そうではなくて……」
もちろん、聞こえていたのもわかっていますとも。
ジュリアン殿下は、気まずそうに私を見つめた。
「本気か?」
「ええ、もちろん」
少なくとも今の私は本気でジュリアン殿下のことを愛しているわけではありません。
ただ、あまりにも。
……そう、あまりにも腹が立ったので、私にどっぷり惚れ込まれそれに溺れたところで振る、なんて古今東西やり尽くされた復讐方法をとろうとしているだけで。
「勝手にしろ」
ジュリアン殿下は、少し早口でそういうと、寝室から出て行きました。
既婚者の恋人だか、恋人未満だか知りませんが、その方の元へは流石にいけないでしょうね。
だって、今夜は初夜。
本来なら、夫婦で過ごす大事な夜のはずです。
「……ふ」
私は、ジュリアン殿下が完全に去ったのを確認して、ベッドに寝転がりました。
「……ふふ」
思わず、笑みがこぼれます。
私に愛せない宣言をするとは、よほど、自分に自信があると見えますね。そうでもしないと、哀れに私が愛を乞うとでも思っていたのでしょうか。
親愛ならともかく、情愛なんて。
初対面でなかなか抱くものでもないでしょうに。
ふふ、でも残念です。
哀れに愛を乞うようになるのは、ジュリアン殿下、あなたですよ。
あなたが私を愛さないというのなら、溺れるほど愛して差し上げます。
あなたが私を愛するようになるまで、という期限付きで。
「明日から、楽しい日々になりそうですね」
この予感は絶対に、外れることはないでしょう。
私は一人には広すぎるベッドを堪能しながら、目を閉じました。
◇◇◇
ーー翌朝。
「……おようございます。リーネ殿下」
「おはよう、ミミリ」
ミミリは私の侍女です。ミミリは、乱れていないベッドを見て、全てを察したようでした。
「ーー戻られますか?」
私の祖国に、ということでしょう。
父母は、優しいですからただ出戻っても許してくれるでしょう。
でも。
ただ泣き帰るなんて、そんなの私が許しません。
「いいえ、戻らないわ」
私が首を振ると、ミミリは微笑みました。
「御意のままに」
さぁ、今日から私の復讐のスタートです。
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