侍女
――翌朝。
「おはようございます、リーネ殿下」
ベッドの上で、伸びをしているとミミリがやってきました。
……ミミリの顔が険しいような?
「おはよう、ミミリ?」
ミミリは私を見ると、表情を和らげました。
「よかった。……昨夜はよく眠れたようですね」
たしかにミミリの言うとおり、昨夜はぐっすり眠れました。
「夜会で心無い言葉を言われていないか心配だったのです」
ミミリの心配は、半分当たっています。
装飾された心無い言葉をぶつけられもしました。ですが、そこで泣寝入る私ではありませんもの。きっちりやり返させていただきました。
「ありがとう、ミミリ。でも、相手が泣きそうだったから大丈夫よ」
若干、ジュリアン殿下も引いていた気もしますが。まぁ、いいでしょう。
「ふふ、さすがはリーネ殿下ですね」
ミミリは笑うと、私の朝の支度を手伝ってくれます。
「なにかいいことでもありましたか?」
ミミリに尋ねられ、首を傾げます。
「私、そんなに機嫌がよさそうかしら」
「はい、とっても」
ミミリからはそう見えるのですね。
「昨日ね――」
私は、昨日の夜会のことを詳細に話しました。
「……なるほど」
ミミリは頷くと、心配そうな顔をしました。
「リーネ殿下」
ミミリの私よりも深い緑の瞳は、私だけを映しています。
「どうしたの?」
「ジュリアン殿下は、初夜に愛することはない、なんて宣言するような男です」
……なるほど。
なんとなく、ミミリの言いたいことがわかります。
「私はリーネ殿下の侍女としてどうしてもその言葉が許せません。だから……、でも――」
ミミリの瞳は、不安げに揺れていました。
その先の言葉を言うのを恐れているようでもありました。
「ミミリ、安心して。私は絶対ジュリアン殿下を泣かすわ」
みっともなく縋り付かせて愛を乞わせると決めたんです。
「だから、大丈夫。――心配してくれてありがとう」
「……はい」
頷いたミミリの手を握ります。
「ミミリ、私があなたとの約束を違えたことがあったかしら?」
「――いいえ」
ミミリは首を横に振りました。
その瞳は、もう揺れていません。
「リーネ殿下の御心のままに」
◇◇◇
その後、また一人きりの朝食を終えて自室で寛いでいると、クロード――ジュリアン殿下の侍従です――が交換日記をとりに来ました。
ミミリに交換日記を渡してもらいクロードに帰ってもらうのと入れ替わりで来客がありました。
「……ミミリ」
取次をしてくれたミミリの嫌そうな顔でなんとなく誰か予想がつきながらも、尋ねます。
「どなた?」
「アスノ殿下の侍女です」
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