素敵な人
ジュリアン殿下、満面の笑みですが……わかりやすすぎではないでしょうか。
しかも、アスノ殿下の隣にはアスノ殿下の夫たるメイナード王太子殿下もいらっしゃるというのに。
……メイナード殿下は顔は笑っていますが、視線で人が射殺せそうな鋭い眼光をしています。
美形がする分、余計威力が高いーー!
どうしてその視線に気づかず、アスノ殿下とにこやかに会話をできるのか気になります。
「……ジュリアン」
アスノ殿下との話に花を咲かせていたジュリアン殿下は、メイナード殿下の静かな呼びかけてに姿勢をただしました。
「はい、兄上」
……?
一瞬、メイナード殿下を見るジュリアン殿下の顔に影が差したような――。
「妻を迎えてこそ、一人前だ。妻一人大事にできない男に国を守れるはずもない」
ジュリアン殿下は、メイナード殿下の言葉に何かを言いかけ、頷きました。
「リーネ殿」
あら、私ですか。
「弟をよろしく頼みます」
「もちろんです」
私は微笑み、隣のジュリアン殿下に寄り添いました。
妻としての役割は、果たします。
「あなたたちはきっと良い夫婦になる」
……なぜ、アスノ殿下は表情を曇らせたのでしょうか。妻一人を大事に――、なんていう当のメイナード殿下が、妻たるアスノ殿下を大切にできていない、なんてことはないはずだと思いますが。
「リーネ殿下」
アスノ殿下が私を呼ばれました。
表情は、先ほどまでとは違い、愛らしい笑顔です。
「ジュリアンは、繊細で、融通が利かなくて、頑固で――」
「義姉上!」
慌てて止めに入ったジュリアン殿下ですが……。アスノ殿下は微笑み、続けました。
「とても可愛い私たちの――弟です」
ジュリアン殿下は少しだけショックを受けてそうな顔でした。まあ、当然ですね。
立場上、そうだとはわかっているものの、恋した相手にわざわざ弟と言われて嬉しい男性はいないでしょうし。
「どうか、よろしくお願いします」
「はい。ジュリアン殿下は、真面目で、りんごとニンジンがお好きで、エスコートが丁寧で、優しくて……」
そこで、言葉を切り、ジュリアン殿下を見つめます。
「私がジュリアン殿下について、知っていることはそう多くはありませんが、それでも」
まぁ、いつかは泣かせますけど。
「とても――とても素敵な方だと思っております」
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