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初夜



「私がーー君を愛することはない」


 ……あらまぁ。


 今日は、記念すべき私たち夫婦が婚姻しはじめて迎える夜。

 つまり、初夜です。


 そんな初夜にはおよそ似合わない言葉を、私の旦那様ーー第二王子のジュリアン殿下は、吐き出しました。


 私も小国とはいえ、一国の王女。

 つまり、この結婚は政略的な意味合いも含みます。……が、まずは、お互い恋などないかもしれないが、これから仲良くやっていこうという親愛を築く努力をすべきなのではないでしょうか。


 実際、私の父や母もそうやって、親愛を育み、家族になったと聞いています。


 正直に言ってかなりむかつきますが、理由は尋ねましょう。


「ジュリアン殿下には、他に愛する方がいらっしゃるのですか?」


 愛人の有無を明確にしておくのも、円満な夫婦の第一歩。


「……そうだ」


 なるほど。

 そういうパターンですか。


「では、その方を正式に第二妃に迎えられるのはいかがでしょうか」

 この国では、王族に限り、妻を二人まで迎えることが認められています。


「……それができたら苦労はしない」

 つまり、そうできないお相手だと。

 ざっと考えられるのはーー。


「身分差、既婚者、性別……などが原因ですか?」

 

 あの言い方だと死別は、なさそうですものね。


「そのようなものだ」


 ジュリアン殿下は、横を向いて頷きました。

 しかし、既婚者、のときにぴくりと肩を揺らしたのを見逃すほど愚かではありません。


 なるほど、既婚者。


 それは確かに第二妃には迎えられませんね。


「他に愛する方がいて、私のことを愛せないとのこと承知いたしました」


 私はにっこりと微笑みながら、一礼しました。


「ですが、それはジュリアン殿下のご都合ーーですね?」


 ……そう。

 愛する人の存在を隠されるのと愛さない宣言のどちらがましかと言われれば、悩ましいところではありますが。


「……金か?」


 あらあらまあまぁ。

 金、ですか。


 お金は大事ですよね。

 お金がないと生きていけないですもの。


 でも、私の言葉にすぐさまその言葉を吐かれるのは、ものすごく腹が立ちました。


 王女なのですよ。

 お金には困っておりません。


「いいえ」


 しかし、そのむかつきを顔に出さないのも王女として培った力。


「では、何が望みだ?」


 ジュリアン殿下は、怪訝そうな瞳で私を見つめます。


「私がジュリアン殿下に望むことはーーただひとつ」


 私は微笑みながら、ジュリアン殿下を見つめかえしました。


「私があなたを愛することを、許して欲しいのです」


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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