第一幕 「シュレディンガーの猫」
薄暗いベッドで今日も私と彼は身体を重ねる。
ただ、お互い正式な恋人ではない。
彼はきっと私とするのが好きなのだろう。
いつも始まると息遣いを荒くし、普段大人しい彼もこの時ばかりは男らしい表情をする。
服の中に手を入れ、慣れた手つきでブラを外しその手はどんどん下の方へ。
何度も身体を重ね、恥ずかしいところを全て見られているのに未だにドキドキ、そして恥ずかしくて頬を赤く染めてしまう。
でも彼の目はいつも私の身体だけ。
彼のためにわざわざ用意した下着に施されている薔薇の刺繍にも、この匂い好きと言われて以降ずっと使い続けているヘアオイルの匂いにもきっと気づきはしないのだろう。
あぁ、今日も私の大好きな時間が始まる。
---------------第1幕「シュレディンガーの猫」---------------
私天童花蓮は昔からよくモテた。
目は二重でぱっちりとしており、鼻や口の形も綺麗でパーツの配置も整っている。そしてもちろん自分磨きも徹底していた。
特に自慢できるのはこの艶やかな真っ黒のロングヘア。
髪の毛のケアはとても慎重におこなっており、傷んでいる髪は1本も見当たらない。
これも全ては幼なじみの佐藤翔太郎の為だ。
翔太郎は昔からなよなよしていて、いつも私の裏に隠れているような子であった。でも、小さい頃家出をして迷子になっていた私を真っ先にみつけ助けに来てくれた時からずっと想いを寄せている。
どうでも良い男からの告白は増え続けるのに、肝心の翔太朗は私にほとんど無関心。
家に帰ればずっとゲームしてるし、私がメッセージを送っても返信が来るのは翌日の朝だ。
ただそんな私たちの関係がガラリと変わったのが中学校3年生の時。
突然翔太朗が鬱になってしまったのだ。
それからというもの、学校が終わっては翔太朗の部屋で毎日尋ねるようになった。
しかし、彼は誰とも話せる状態ではなく、気づけば3年生の夏でいよいよ志望校を決める時期になってしまった。夏休みに入っても私は勉強をしつつ翔太朗の家には毎日通っていた。
そんなある日。翔太朗の両親が二日間、用事で愛知に行くことになり翔太朗と二人きりになった。
その時、彼が3か月間顔を合わせてくれなかったのに扉を開いてくれたのだ。
「…花蓮ちゃん。ごめん。少し話を聞いてくれない?」
口を開いた彼から出てきた言葉はとても辛いものだった。
中学校で数少ない友人と喧嘩してしまったこと、それにより軽いいじめを受け学校に行けなくなってしまったこと。休み期間が増えるほど焦る受験の事。泣きながら話する彼を心から守りたいと思った。
気づけば彼を抱きしめ私も涙を流しながら話を聞いていた。
大丈夫だよ、今からでも間に合うよ、辛かったね。
彼をずっと抱きしめ続け…そして…
一夜を共に過ごしてしまっていた。
鬱状態の彼を押し倒してしまった私は、朝を迎えた時とてつもなく罪悪感にかられ彼が起きるのを待っていた。
弱っている彼を襲ってしまった私は、これから彼とどんな顔をして向き合えば良いのか、
でも目を覚ました彼から出てきた言葉は感謝の言葉だった。私は酷いことをしたのに。
これがきっかけで彼は受験勉強を始め、私もひとつ高校のランクを落として一緒の学校に入学することを決めた。
それから毎晩彼の部屋で一緒に勉強をし、ともに過ごす時間が増えていった。
10月になるころには勉強も追いつき、登校できるようになり、友達とも無事に仲直りして普段の翔太朗の生活に戻った。
ただひとつ変わったことがある。それは勉強という名目で彼の部屋にお邪魔し、定期的に身体を重ねていたこと。
正式に告白もしていなければ、付き合うことになったわけでもない。不純な関係だ。
でも、彼と身体を重ねることは私にとってかけがえのない時間となり、それは高校入学しても変わらなかった。
このままの関係で良いのだろうか、彼は私の事を好きでいてくれるのだろうか。でもこの話を切り出す勇気は私にはない。
そんなある日。見てしまったのだ。彼がデパートで女の子と一緒に歩いている姿を…
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「ようこそお悩み相談室へ。あなたの悩み解決します」
松井先生がそういうと、彼女は少しオドオドし僕の正面の席に座る。
「お悩み相談部という張り紙をみてきました。私の悩み聞いていただけませんか?」
そこから彼女はぽつりぽつりと悩んでいることを口に出した。
「私と…2組の佐藤翔太路と幼馴染です。そして…中学3年の夏から付き合ってはいないけど恋人のような関係を続けていました」
それから5分ほど彼女は悩みを打ち明けた。
松井先生と僕と初対面なのもあって、所々濁して説明する彼女の話をまとめるとこうだ。
2組の佐藤君と去年の夏辺りから付き合ってはいないけど恋人のようなことをするようになった。そしてその関係は今でも続いている。でも天童さんはこのままの関係でいても良いのか不安だった。しかし関係を変えるほどの勇気はない。ところが先日、佐藤君が女の子と二人で出かけているところを目撃してしまった。周りの人間に言えるようなことでもないので相談部に来てみた。こういうことだ
「私はどうしたら良いのでしょうか。彼と変に関係を崩したくありません。どうか助けてください」
そう、頭を下げる天童さん。それまで真剣な表情をしてきいていた松井先生口を開いた。
「天童さんはシュレディンガーの猫って知ってますか?」
「いえ、名前は聞いたことありますけど詳しくは」
「これはあくまで量子力学のたとえ話として説明されたものですが、こんなものです」
シュレディンガーの猫。箱の中に一匹の猫がいる。その箱には毒ガスが設置しており、2分の1の確立で毒ガスが箱の中にまかれる。しかし箱の中を外から観察することは出来ないので中身を確認するまではその箱の猫が生きているのか死んでいるのかわからないというものだ。
「なるほど…で、それがどうかしましたか??」
「つまりですね天童さん。彼と一緒にいた女性は本当に恋愛的な意味な意味合いを持っていたのでしょうか?もしかしたら妹かもしれないし、友達かもしれない。」
「妹…ではないです。彼は一人っ子なので。友達の可能性も低いかと。彼あまり友好関係広くないですし」
「まあ幼馴染なので…そのくらいは知っていますよね。でも彼らが何を目的に歩いていたのか、私たちは知るすべがありません」
「まあ…そうですよね」
「なので天童さん。確認しに行きましょう!」
おっとまた松井先生が突拍子もないことを考え出したみたいだ。
ここまで読んでくださった方。本当にありがとうございます。一応1幕の終わりまで執筆完了しましたので勇気を振り絞って投稿させていただきました。
さて、田中くんと不思議先生いかがでしょうか?
ここまで読んでくださったということは少しでも興味を持ってくれた(と信じたい)ということなのでしょう。
私自信小説は完全にトーシロで、所々読み辛い点あったと思います。別な表現の仕方や、言い回しなど御指摘いただけると今後より良い作品が出来るように参考にさせていただきます。
また、感想や評価のほういただけると今後の励みになります。
続きが気になる、完結して欲しい!など少しでも思っていただけるようでしたらブックマークの方もよろしくお願いします。
さて、私は今回の小説を2つのお題で書こうと思っております。
1つ目のお題は「理想の教師」です。
私が学生時代(一応今も学生ですが)こんな先生がいたら良かったなという先生を書きたいと、そう考えてます。
不思議先生こと松井先生は生徒に対しても敬語で少しお茶目な所もある特徴的な登場人物です、彼がこれから田中君と共にどのように問題と向き合い成長していくのか。
田中君はもちろんですが、松井先生にも目を向けて見ていただけると幸いです。
あとがき、長くなってしまいすみません。
ちなみにもうひとつのお題はとてもしょうもないものなので夏休み編に入る辺りでちょろっと話しようと思います。
もしかしたら、読者の皆様が良く思わない展開など多々あるかもしれません。
私も松井先生、田中君と共に成長出来るように精進いたします。それでもよろしければ今後も読んでいただけると嬉しいです。名無しの権兵衛でした