惚れ薬
事の発端は遡る事5年前。当時王都では女性の間でとある痩せ薬が流行していた。曰く、それを飲むとふくよかだった女性が数日でスリムになった、いくら食べても太らなくなる、肌のハリツヤも良くなる等など。
謳い文句もそうだが、ここまで流行したのには訳がある。薬学の権威である王立薬学研究所からも成分に問題無しとのお墨付きを頂いたのだ。それならば、と貴族女性達までもが服用し始めた。
だが、痩せ薬が流行した一年後、原因不明の発疹が女性達を襲う事となる。その被害人数があまりにも多かった為に国をあげて調べたのだが、それでも原因や治療法を特定するには至らなかった。
一つだけ分かった事と言えば謎の発疹を発症していた女性の共通点は痩せ薬を服用していたという事である。
すぐに王立薬学研究所に痩せ薬の再調査を依頼をしたのだが、結果は変わらず問題無しの回答。
他に手掛かりになる様なものはなく、捜査は難航し、ただただ時間だけが過ぎていった。そして半年が過ぎる頃には死亡者も出始めていた。
人々が疫病だ、祟りだ、呪いだ等と戦々恐々としていた頃、国王陛下の元にカーバンクル男爵とその嫡男がお目通りにやってきた。
陛下の執務室に通された二人はその場に膝まづいて頭を下げ、臣下の礼を取る。
「面を上げよ。してカーバンクルよ、お主らが来たということは今回の件について進展があったのだな?」
「左様でございます」
「では申してみよ」
「かしこまりました。ただその話の前にまずは陛下にご覧頂きたい物がございます。この場でアイテムボックスを使用する許可を頂きたい」
「よかろう、許可する」
許可をもらったカーバンクル男爵は呪文を唱えアイテムボックスを開くと、中から氷漬けにされた一枚の葉っぱを取り出した。
「これが今回の原因となった毒草でございます。例の痩せ薬にも使用されていると王立薬学研究所にて確認しました」
「なんと…では王立薬学研究所が無害だと申しておったのは偽りだったのか?」
「いえ、実はこの毒草はとある島国の一部の地域でしか自生しておらず、我が国内には無いものとなります。その為に王立薬学研究所ではこの毒草の存在を知らなかったようです」
「」
「所でアリエッタ嬢、アレクサンダー殿下とは今後どうしたい?」
「そうですね、私として謝罪さえして貰えれば今回の事は不問にしても良いと考えますね」