親と子③
「ずぅえりやあああ!!!」
突っ込んでくる男の攻撃を腕と手でかろうじて受け止める。
受け止めている手がミシミシと音を立てている様に感じるほどの威力だ。
「仕方ねぇから寝坊助の先輩に俺たちの闘い方を教えてやんよ」
そう言うと兄弟と名乗る男は先程と同じ様にこちらに腕を振りかざしてくる。
それを腕で防ごうとするが、防いだはずの腕の皮膚が、筋肉が削げ落ちた。
身体に走る激痛を脳内物質でかき消す。
「ばーかっ、それを多様すると痛い目見るぜ?」
男の攻撃を今度は交わそうとするが足が動かず、肩や胸に攻撃を受けた。
自分の血肉が辺りに飛び散っていく。
「脳内物質で痛みを全部かき消しても攻撃を受けた事実までは消せねぇのよ。 さっき俺がアンタの膝をぶっ壊したの気づかなかったろ?」
自分の怪我の様子を確認する間もなく、只野の腹部を兄弟を名乗る男の腕によって貫かれた。
男は荒々しく腕を引き抜くと血がとどめなく地面に流れ落ちた。
「そしてこれだ」
兄弟を名乗る男は自分の指を只野に見せつけてくる。
「虎拳、抜き手、まぁ指を扱う攻撃だ。 普通の武術家ならおいそれと手を出せない闘い方を俺たちは軽々とできる。 俺たちはその丈夫さから、再生能力から自滅の危険性のある闘い方が軽々と出来ちまうんだよ」
只野は息を必死で整えようとしているがそれを目の前の男が許そうとしなかった。
「もういいや、死ねよ」
その場で膝を突き立ち上がることが出来ない。
そんな只野に向かって兄弟を名乗る男はゆっくりと腕を振り上げる。
しかしそれは一発の銃声によってかき消された。
その銃声を鳴らした人物を自分はよく知っていた。
「む、息子から離れろっ……!!!」
自分の親が、父さんが銃の引き金を引いたのだ。
「テメェ、この距離で当てられねぇ癖になに調子乗ってんだよ? 先に死にたいならお望み通り殺してやるよ?」
「……させるかっ!!!」
父の助けによって稼がれたわずかな時間、それは只野を救うには十分な時間だった。
下から飛び上がる様に右腕を男の顔目掛けてかち上げる。
しかしその手の形は先ほどの様に拳を握りしめる様な形ではなく、指を突き立てる様に手を開いた形だった。
突きたげた右腕の親指が兄弟を名乗る男の目に突き刺さる。
その勢いのまま振り回して投げ飛ばした。
そのまま兄弟を名乗る男は塀に激突する。
「テメェッ……!!!」
「教えてくれてありがとうよ。 さぁ、続きやろうぜ」