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・砂漠に肥沃な耕作地を作ろう - エッチ…… -

 耕作地を築くならば、当然ながら水と、砂ではない土の大地が必要だ。

 土壌に関してはあの新緑の種もみを使えば、砂を土に変えることも出来るが、製造には大地の結晶と植物系モンスター素材が必要になってくる。


 断言しよう、非効率だ。

 10年単位のビジョンで見るならば、未来への先行投資ともなるが、現状ではマンパワーと貴重素材を消費し過ぎてしまう。


 ならばどうすれば最低限のコストで、最高の結果を得られるのか。

 その晩の俺は暖炉の前であぐらをかいて、思っていたより厄介な宿題に頭を悩ませていた。


「ジョン(・ ・)」

「俺はユリウスだ……」


 そこにニーアx2がとてとてとやってきた。


「ゴ命令ノ、品ヲ、ゴ用意、シマシタ。ゴ確認ヲ」

「ああ、もう集めてきてくれたのか。お前らはマジで働き者だな……」


 ニーアにサボテンの種の収集を依頼した。

 シャンバラの広大な砂漠全てを緑化するのは、俺の一生を捧げても無理だ。


 そこで錬金術の力で、砂漠への順応性をさらに高めたサボテン強化種を作れないものかと、ニーアに回収を依頼していた。


「ん……小分けになっているのか?」

「ソッチハ、アロエベラ、デス。竜舌蘭モ、回収、シテオキマシタ(・v・)」


「ゴーレムとは思えない自発性だな……」

「ロボ、デスカラ(・_・)」


 小さいけど超地道。それがニーアの凄いところだ。

 3種類の種がぎっしりと小袋に詰められていた。


 アロエはポーションの材料、竜舌蘭は確か……酒になるとも聞いたことがある。

 どちらももっと増やしたいところだ。


「助かった。ニーアのおかげで新種のサボテンを作れそうだ」

「テヘ……コレカラモ、ガンバリマス(= =)」


 そうしていると、てっきり寝たと思っていたやつが2階から降りてきた。

 寝間着姿のシェラハだ。胸の谷間やふとももの露出するその格好は、見ているだけでこう、ついつい思考が停止してしまう刺激だった。


 そんな俺の視線を受けて、シェラハはライトボールの魔法を消して、暖炉の暗い光の中に美しい姿を隠してしまった。


「もぅ……そんなに見ちゃいやよ……」

「す、すまん……つい……」

「ニヤニヤ、ナノデスヨ(=_=)」


「あら、そこにいるのはニーア? お帰りなさい。最近見なかったけれど、どこかに行っていたの?」

「ジョン、カラ、極秘任務ヲ、少々(・ ・)」


 この件はまだ伏せていた。

 エルフたちは本当に緑が好きなようで、そんな彼らをぬか喜びさせたくなかった。


「秘密だ。じきに打ち明ける」

「もう、夫が妻に隠し事するの……?」


「必要ならな。それよりそっちこそどうした?」

「あなたの様子を見に来たの。都市長の依頼のことで、今日はずっと考え込んでいたでしょ……?」


「ああ、まだ答えが出ていない。耕作地には水と土が必要だが、両方を揃えるとなるとなかなかな……」

「あの種もみでは、お金がかかり過ぎるって言ってたわよね……。あ、そうだわ、ニーアに聞いてみたらどうかしら?」


 ニーアに……? そういう発想はなかった。

 俺とシェラハは、暖炉の前に座り込んだ変な自称ロボを見つめた。

 余談だが女の子座りでシェラハが腰掛けると、ついついその脚に目を奪われてしまう。


「ユリウス、どこ見てるのよ……」

「すまん……」


 一方のニーアの方は何やら考え込んでいた。

 どこから来たのかわからん奇妙な存在だからこそ、俺たちにはない発想を出してくれるかもしれない。


「……土管。土管ヲ、敷設、シテミテハ、ドウデショウ(ー_ー)」

「なんだそれは」

「爆発しそうな名前ね……」


「違イマス。粘土ヲ使ッテ作ッタ、筒デス(・_・)」

「ああ……それならツワイクで見たことがあるな。確かその筒と筒が繋がるようになっていて、その中に水を流すんだったか」

「つまりどういうこと……? ぅぅ……顔を見なさいよっ、エ、エッチ……ッ」


 また怒られてしまった。

 そうやってモジモジとされると、カマカマ野郎の言葉が蘇ってくる。

 結婚したのだから、シェラハも期待していると。


「すまん……」

「い、いいわよ……。わざと、この格好で来たんだもの……。あなたが喜ぶと思って……」


「え」

「じょ、冗談よ……っ」

「オオ……コレガ、砂糖大盛リ……(=_=) アテッ……(・へ・)」


 ニーアの硬い頭を小突いて、俺はニーアの話を噛み砕いた。

 土管。砂漠。耕作地。川。なるほどな……。


「つまり、あのコンクルを用いて土管を作り、その土管と土管を繋いで、砂漠の下に地下水路を敷設しろってことか?」

「ハイ。アトハソレヲ、川ニ繋イデ、耕作ニ、適シタ土地ニ、運ベバ……」

「あっ、それで土と水が揃うのねっ! いいじゃないっ、それってユリウスの錬金術と噛み合っていると思うわ!」


 全部言われてしまった、というやつだ。

 俺たちはニーアに感謝して、地下を通して水を運ぶという発想に胸を高鳴らせた。


 シェラハと目と目が重なると、さらにドキドキが膨れ上がって、またもや視線を外せなくなった。


「デハ、オ邪魔ロボハ、引ッ込ミマス。オ幸セニ……(ー_ー)」

「ゴーレムのくせに気を使うな……」


「男ハ、度胸、デスヨ、ジョン(・へ・)」

「だから、俺はユリウスだ……」


 ニーアは器用に全身を使って階段を上ってゆき、俺たちに見守られながら上の階に消えていった。

 俺たちは暖炉の前に取り残されて、恐る恐ると視線を重ねる。


「シェラハ」

「は、はいっ……!」


「今夜は、どうも少し変だ……。もしお前が嫌でなかったら、これから、お前の唇を奪ってもいいか」


 暖炉の明かりにブロンドをキラキラと輝かせながら、美しいエルフの美姫がコクリを首を縦に振った。

 背中を抱くと、サラサラの長い髪が腕にからみ付いた。


 俺たちはぎこちなく唇と唇を重ね合って、そのまましばらく抱き締め合うと――――


「じゃ、じゃあ……あたし、行くね……。おやすみ、ユリウス……」

「おやすみ、シェラハ。こんなかわいい嫁さんと一緒にいられて、俺は幸せ者だ」


 自分たちがそれ以上の行為を行う勇気のないヘタレ同士だと、残念な事実に気づくことになった。


「ふふ……っ。あたし、ユリウスとキスしちゃった……っ」


 シェラハが幸せそうに唇を押さえて、はしゃぐ子供のように軽やかな足取りで独り言と共に2階に消えてゆくと、やはり惜しいことをしたような気がしたが、今さら手遅れだった。


「はぁっ、姉さんかわいいね……」

「ナッ……ンナァァッッ?!」


 ちなみに、寝ていたとばかり思っていたメープルに、一部始終を見られていた件については、蛇足なのでこれ以降は省くものとする……。


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