・おっぱいの大きい人型ホムンクルスを作れと言われても…… 2/2
「……あ、おっさん」
「え、師匠? って二人ともなんなんですか、その格好っ!?」
足音に気づいて後ろを振り返ると、全身ボロボロに傷ついた師匠とおっさんがいた……。
おまけにふらふらと疲労困憊としており、いったい何があったのだと疑わずにはいられない光景だ。
「て、手に入れてきたぜ……こ、これで、俺たちの理想が……」
「ザマァ見ろ、バカ弟子が……。これで、造らざるを得ねぇなぁ、カカカ……!」
二人はそれぞれ赤と青の果実をこちらに差し出して、ついにレア素材を手に入れてきたと半笑いで誇った。
「二人とも何があったんですか……」
「へっ、別に大したことじゃねぇ……3パーティ、迷宮攻略をハシゴしただけだ……」
「おっぱいちゃんのためだろ……。同じスケベオヤジとして、こういうのは成し遂げるしかねぇだろ……っ!」
どちらも図鑑通りの本物だ。
俺は二人のスケベ心と激運に賞賛を覚えると同時に、男ってバカだなと海よりも深く実感した。
しかし材料が集まってしまった以上は、着手するしかない。
「男同士で、おっぱい、作るの……?」
「なんてお前はそういう語弊のある言い方をするんだ……」
「いいか、メープル。俺たちはよ、おっぱいの大きなホムンクルスを作って貰うんだよ!」
「おお……。それは、なんて素晴らしい……」
「いや、普通ひくだろ……」
しょうがないのでボロボロの師匠に肩を貸して、すぐそこの工房まで連れて行った。
それから約束は約束と、夕飯までにちゃっちゃとやっちゃおうと、男のずぼら料理感覚で材料を次々と釜に投げ入れていった。
「煮えてなくない……?」
「夕飯の方が大事だろ」
「確かに……」
「バカ言え、おっぱいの方が大事だろ」
「人んちでおっぱいおっぱい言わないで下さいよ……もう……」
普通なら沸騰するまで待つが、待たずにどんどんと材料と入れてゆく。
赤と青の果実を入れると、水と油のように二つが釜の中でまだら色を作り、やがてゆっくりと混ざり合っていった。
ようやく綺麗に混ざった。最後の仕上げだ。
「後はイメージする女性の髪か何かを……」
「髪は、手に入らなかった……。っていうよりよ、理想の女性って言われても、んなのわかんねぇ……」
「だが安心しろ相棒っ、俺たちにはこれがあるっ!!」
そう言っておっさんが俺の前に突きだしたのは、髪の毛ではなく、絵だった……。
美人のお姉さんが描かれた絵だ。やたらに胸がでかい。あり得ないくらいにでかい。
こんな女性が現実にいるのか……?
「よし、入れよう……。これは、いいものですね……」
「なんでお前まで乗り気なんだよ……」
メープルはおっさんからセンシティブな絵を受け取って、全く迷うことなく釜へとぶち込んだ。
「二人とも晩ご飯よーっ!!」
「あっ、大変……ユリウス、姉さんが呼んでる。早く行かなきゃ……」
夕飯ができたと言うのだから仕方がない。
さっと反応させて、師匠待望の人型ホムンクルスを完成させた。
蒸気が視界を覆い、それがゆっくりと薄れてゆくと、ようやく釜の中に何かのシルエットが見つかった。
しかし煙が晴れると、それが衝撃的な物体であることに俺たちは気づいた。
ぷるぷると揺れている。
しかし人型とは言い難い。どちらかというとそれは、おっぱい型の危険なフォルムで、言ってしまえば薄水色のスライムが二匹だった。
「バ、バカナァァァーッッ?!!」
「バカは師匠です……。これってつまり、女性本体には興味はなくて、胸のことしか考えてなかったせいなんじゃないですか……?」
「やべ、否定できねぇぞ、俺……」
メープルが釜の中のおっぱいスライム2匹を持ち上げた。
見れば見るほどに、人様にはお見せできないフォルムだ……。
「意外とかわいい……。あと、これは……揉み心地が、マジクリソツ……」
「ま、マジでか!? 俺にも触らせろ、メープル!」
「お、おおっ……こ、これは……これはなかなか悪くねぇな……!?」
「あ……逃げちゃった……」
おっさんたちにベタベタと触られて、おっぱいスライムさんたちは不快だったのか、棚の影に隠れてしまった。
「怖くないよ……ほーら、おいでおいで……チチチ……」
「野生動物か何かかよ」
メープルはスライムの保護に成功した。
気のせいか、メープルに懐きかかっているようにも見えなくもない。
「もうっ、二人とも何やってるのよっ! あら……?」
そこにシェラハは怒り混じりにやってきた。
最初は来客に驚いているのかと思ったが、どうも違う。
彼女の視線を追えば、そこに服の下におっぱいスライムを胸に装着したメープルが立っていた。
「……アリだな」
「いやぁ……俺はナシだわ。だが、他のお姉さんが胸に付けるなら、俺的にはアリだ」
服の下から胸に付ける。その発想はなかった。
「ユリウス……これ、大発明……。最高だ……ふふん……」
メープルは巨乳(偽)になっていた。スライムはメープルの褐色の肌色に擬態していた。
しかしその十数秒後、ずるりとスライムが服からたれてクリアカラーに戻ってしまった。
「な、なんなのよそのスライムッ!? メ、メープルが一瞬だけ巨乳に……」
「気に入った……。この子は、私が引き取るね……」
「じゃ、じゃあよ。たまに触らせてくれよ、そいつ……」
うちの師匠は何を言っているんだ……。
こっちは尊敬しているんだから、せめて人前では言葉を選んで欲しい……。
「いや、これスライムですよ……?」
「わかるわ……。おっぱいに見えれば、おっぱいに見える何かを触れれば、俺はもうなんでもいい気がしてきたぜ……」
この日から、ときどきメープルが巨乳になって、胸ごともげる光景が日常化した。




